医療マンガ「コウノドリ」の魅力は?ストーリーや登場人物を解説

医療マンガ「コウノドリ」の魅力は?ストーリーや登場人物を解説

テレビドラマもヒットした人気医療マンガ、『コウノドリ』。産婦人科を舞台に、医師側と妊婦側両方の気持ちが丁寧かつリアルに描写されています。登場人物や序盤のストーリーを紹介しながら、コウノドリの魅力をお伝えしていきます。

  • コウノドリ(1)

    少年・青年マンガ
    4.7
    690

    「コウノドリ」はどんなマンガ?

    コウノドリは、"医療マンガ"というジャンルにくくられますが、その中でも出産に焦点を当てています。作者の情報やあらすじ、またドラマ版の情報と併せて紹介していきます。

    基本情報

    コウノドリは、出産をテーマに扱った医療マンガです。講談社の週刊雑誌『モーニング』で連載されていました。 全32巻で完結しており、妊婦や夫、家族らが出産に望む様子を産婦人科医の目線で描いています。 作者は鈴ノ木ユウさんで、1973年生まれ、山梨県出身のマンガ家です。大学を出たあと、ロックスターを目指していましたが、2007年に『ちばてつや賞』に準入選し、マンガ家として活躍することになったのです。

    あらすじ

    主人公の鴻鳥サクラは、産婦人科に勤める医者です。鴻鳥のところには色々な妊婦がやってくるのですが、母子の命を助けるため、懸命に仕事をこなします。 一方で彼は、正体不明のピアニストとしても活動しており、それは秘密にされたまま産婦人科医・ピアニストという二つの顔を持ち続けているという変わった設定をしています。

    テレビドラマも放送

    コウノドリは、TBSの金曜ドラマ枠でテレビドラマも制作されています。主人公の鴻鳥を演じたのは綾野剛さんです。ほかにも星野源さん、吉田羊さん、松岡茉優さん、坂口健太郎さんなど、豪華な俳優陣が出演していました。 ドラマは第一シーズン、そして続編となる第二シーズンまで制作されていました。主題歌を歌っていたのはmiwaで、楽曲は『あなたがここにいて抱きしめることができるなら』です。 第二シーズンには歌手のUruさんが、『奇蹟』という楽曲を歌いドラマの世界を彩っていました。

    「コウノドリ」の魅力は?

    産婦人科の臨場感あふれる描写、リアルに描かれているからこそ学べる出産についての知識など、コウノドリには多くの魅力があります。モデルとなった人物なども踏まえて、それらを解説していきましょう。

    リアルな産婦人科の臨場感

    産婦人科は、母子の命を預かっているため、人の生き死にと密に関わります。また、時には死産に立ち会わないといけなかったり、非情な決断を迫られたりする場面も多いです。 そういった緊迫感、命の重さがリアルに描かれているのが、最大の魅力でしょう。出産がいかに大変か、きれいごとだけではない医療現場の現実など、読み進めるたびにそれらが重く心に響きます。 また、出産する妊婦だけではなく夫や親、周辺の人物も描かれていることが多いため、"身の回りで出産する人がいるとはどういうことか"を考えさせてくれます。命の尊さに家族が触れる描写は、感動を抑えることができません。

    実在の人物がモデル

    主人公の鴻鳥は、実在する荻田和秀さんという方がモデルです。荻田さんはりんくう総合医療センターの産婦人科部長を務めているほか、泉州広域母子医療センターのセンター長も兼任しています。 作者である鈴ノ木さんの妻が出産の際、担当したのがこの荻田さんだったことがきっかけとなり、2人は出会い、後にコウノドリという作品が生まれました。 作中で鴻鳥は医者でありピアニストでもありますが、モデルとなった荻田さんも実は同じように、医者であると同時にジャズピアニストでもあるようです。

    出産について詳しく知ることができる

    コウノドリを読んでいると、中絶や流産、また出産にまつわるトラブルのシーンが多く出てきます。 出産の主役は女性であるため、男性はそういった話に触れることが少ないかもしれません。しかし男性でももこの作品を通して、出産に関するリスクやトラブルについて学べます。 出産を考えている人や予定している女性だけでなく、周りにいる人々にもぜひ読んでほしい作品です。

    「コウノドリ」の主な登場人物

    コウノドリには個性豊かなキャラクターたちが登場します。主人公の鴻鳥を中心として、その周辺の人物たちも併せて紹介していきます。

    鴻鳥 サクラ(こうのとり サクラ)

    本作の主人公である産婦人科医であり、正体を隠して"ベイビー"の名で活躍するピアニストでもあります。 穏やかな物腰で、患者や周囲の仲間とも良好な関係を築いています。母は鴻鳥を生んですぐに亡くなり、そんな生い立ちもあってか小さい頃から医者と、好きだったピアノの両方を仕事にすると決めていたのです。 ボリュームのある癖っ毛が特徴的ですが、ピアニストとして活動するときはさらっとした長髪のウィッグを着けています。

    下屋 カエ(しもや カエ)

    鴻鳥と同じ産婦人科医で、女医として活躍しています。若い医師ゆえ精神的に未熟な面もありますが、仕事に対する熱意は確かです。 作中には妊婦が女医を希望するというシチュエーションも出てきます。そのため、緊急時に呼び出しがかかることも少なくないようです。 鴻鳥に対しては、尊敬の気持ちを持って接していることが伝わります。

    小松 ルミ子(こまつ るみこ)

    医院で助産師を務める女性です。小さい頃は親に反抗的でしたが、お産に立ち会ったことで更正し、助産師を目指すことになりました。 鴻鳥が研修医だった頃からの知り合いで、それゆえ距離感も近く、時にはお姉さんのような立ち位置で接することもあります。 また、鴻鳥がベイビーというピアニストとして活動していることを知っている数少ない人物です。

    四宮ハルキ(しのみや はるき)

    鴻鳥と同期の産婦人科医です。ぶっきらぼうで冷たい雰囲気をしており、患者からも親しみにくい医師として見られることがあります。 しかし実は昔からそうだったわけではなく、かつて自分が担当していた妊婦の命を救うことができなかった過去から、あまり笑顔を見せなくなったのです。 厳しい物言いもしますが、決して命を粗末に扱うことはしません。むしろ命を優先するために厳しい態度を取ることもあるほどです。

    1巻のコウノドリの内容

    1巻では、妊婦検診を受けていない未受診妊婦の受け入れ拒否問題、切迫流産などを主に扱っています。それらの問題に直面したときの妊婦や夫、医師側の気持ちが生々しく描写されていて、読み応えのある内容です。

    未受診妊婦の受け入れ拒否

    妊婦は、定期的に"妊婦検診"を受ける必要があります。それにより、母子の状態を医師側が把握でき出産の際に情報を役立てられるためです。 しかし現実にはさまざまな事情で、検診を受けていない"未受診妊婦"が存在します。そういった妊婦は受け入れる病院側のリスクが高いため、受け入れ拒否されるケースもあるのです。 そんな未受診妊婦を受け入れることにした鴻鳥は、妊婦の事情を聞き、その上で「赤ちゃんには関係ないこと」と妊婦を諭します。病院側の事情も話した上で、それでも命を助けたいという鴻鳥の話に妊婦は涙を流すのでした。

    切迫流産

    流産になりかけている状態を"切迫流産"と呼びますが、その切迫流産となった妊婦のお話です。 赤ちゃんの命が助かるかどうかも怪しく、もし生まれてきたとしても障害を持って生まれる恐れもある。そう話す鴻鳥は、妊婦とその夫に「赤ちゃんを助けるか助けないか」という決断を投げかけます。 悩んだ末に出産を決意する夫婦ですが、想定外の早産となり母子ともにリスクのある帝王切開をするかどうか、下屋は悩みます。「どちらの命も助けたい」と答えを出した下屋と夫婦は、帝王切開の手術に。生まれた赤ちゃんは人工呼吸器をつけたままでしたが、小さな手を握った夫婦は「産んでよかった」と下屋に笑顔で告げるのでした。

    産婦人科におけるヒューマンドラマ

    コウノドリは、産婦人科を舞台にしてそこで働く医師や助産師、訪れる妊婦やその家族たちの心模様が描かれています。 重めの題材で、中には暗いエピソードもあるため、気楽に読める話ばかりではありません。しかしだからこそ、リアルな医療マンガとして価値のある作品なのです。出産についての知識を深めたい方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

  • コウノドリ(32)

    少年・青年マンガ
    4.7
    690

    すべての母子に贈る産科医漫画、ついに完結!ベテラン助産師・小松に人生の岐路が訪れる。そして、ペルソナを訪れた妊婦に、サクラはどこか母の面影を感じて…。辛い選択を迫ることになったサクラが自らに問いかける「出産は誰のものだ?」という問いに、答えは出るのか。2度のドラマ化も話題になった7年半の長期連載、ペルソナメンバーが未来へと歩き出す!