宇宙と吸血鬼という異なる二つの題材を扱ったマンガ『月とライカと吸血姫』をご存じでしょうか?2021年10月からアニメが放送され注目度が高い本作について、登場人物や見どころを紹介します。作中の用語解説もしていますので、ぜひご覧ください。
『月とライカと吸血姫』の概要
本作がどのような作品か、また原作情報やアニメの情報などについても解説していきます。
原作は牧野圭祐氏のライトノベル
宇宙開発をテーマに、若者たちの青春や努力を描く作品です。原作は小学館『ガガガ文庫』から出ているライトノベルで、原作者は牧野圭祐です。 コミカライズにあたり、掃除朋具(そうじほうぐ)が作画を担当しています。マンガ版は『モーニングKC』にて現在も連載中であり、単行本は2022年1月時点で1巻が発売されています。 2018年の『このライトノベルがすごい!』文庫部門4位を獲得しており、注目度の高い作品であるといえるでしょう。ライトノベルは2022年1月時点で7巻が発売しています。
2021年10月にアニメ放送
原作人気を受けてアニメ化も決定され、アルボアニメーションの制作で、2021年10月より放送が開始されました。メインキャラクターであるイリナとレフの声優は、林原めぐみと内山昂輝です。 原作者である牧野圭祐書き下ろしによる、特典音声ドラマ付きデジタルセル配信も決定しています。 主題歌を務めるのはALI PROJECTとChimaで、それぞれオープニング、エンディングテーマを担当しています。
『月とライカと吸血姫』の見所
本作の見どころについて、舞台設定やストーリー展開などの観点から解説していきましょう。
東西の国が宇宙開発戦争
世界を二分する巨大戦争があり、東と西にそれぞれ分かれた大国が誰の領土でもない宇宙を狙うというストーリーです。 東に位置するツィルニトラ共和国連邦側から物語が始まり、やがて話は西のアーナック連合王国へと移っていきます。対立する二国それぞれの観点からストーリーを見ることができるため、どちらの方にも感情移入して読み進められる点が魅力です。 また、ただの戦争ではなく宇宙開発を競い合う争いであるため、互いの技術競争が行われているのも見どころです。
吸血鬼の少女が宇宙飛行で月へ向かう
有人宇宙船の打ち上げ計画として、動物ではなく極めて人間に近い存在を実験体として宇宙に打ち出す必要がありました。吸血鬼の少女・イリナが、その対象に選ばれたのです。 宇宙飛行を滞りなく行うため、イリナは訓練を開始します。身体構造が普通の人間と殆ど変わらないイリナにとって、それは過酷なものでした。 また、吸血鬼であるイリナにとっては人間の文化が新鮮に映ることもあり、実験体であることを読者も忘れてしまいそうになるほど、イリナの反応が時に可愛らしく描かれています。吸血鬼が持つイメージとイリナのギャップもまた、見どころの一つです。
落ちこぼれの候補生と吸血鬼の交流
宇宙飛行士候補生の1人であるレフは、訓練中に上官へ暴行を働いたことによる降格処分で、候補生補欠になってしまいました。20名近い候補生がいる中で、補欠のレフにまで順番が回ってくる可能性は限りなく低く、実質的に夢を絶たれてしまったのです。 そんなレフに与えられた任務が、吸血鬼・イリナの監視や訓練の付き添いでした。多くを語らないイリナに対し、レフは最初接し方に戸惑います。 しかし、徐々にイリナの性格が分かってくると交流を図れるようになり、お互いに年相応の少年少女として接していくようになります。 宇宙飛行訓練の中で少年と吸血鬼が仲を深める、というシチュエーションは特殊にも思えますが、根底にあるのは青春模様であるため、世界観に入り込みやすくなっている点が魅力です。
『月とライカと吸血姫』の登場人物
アニメ化に向けて、どのようなキャラクターが本作に登場するのかチェックしておきましょう。物語序盤の舞台となる、ツィルニトラ共和国連邦の人物を紹介します。
イリナ・ルミネスク
有人宇宙船打ち上げの実験体として選ばれた、吸血鬼の少女です。初めのうちは無口だったり、人間を下に見る、嫌うなどの反応を見せていたりしましたが、レフと接する時間が増えていくにつれ心を開くようになっていきます。 外見は尖った耳と赤い瞳以外、人間と大差ありません。優れた容姿を持っており、通行人の目を引くほどです。 一見クールで無愛想に見えますが、負けず嫌いな面があったり、恥ずかしい時は顔を赤らめる時もあったりと、歳相応に可愛らしい部分もあります。
レフ・レプス
ツィルニトラ共和国連邦で宇宙飛行士候補生として活動する青年です。明るく前向きで、相手が吸血鬼でも差別などをせず、分け隔て無く接することができます。 上官への暴行により候補生補欠へと降格していますが、その行動には彼なりの事情があるようです。 イリナに対しては訓練のサポート役として、優しくかつ真面目に指導を行っており、共に過ごす時間が増える過程で仲を深めていきます。指導時は先輩として大人らしい振る舞いをしていますが、時にはいたずらをしたりからかったりと、子どもっぽい面もあります。
アーニャ・シモニャン
空軍医学研究所所属の研究員で、吸血鬼の生態研究を専門としている女性です。18歳と若い年齢でありながら、その優秀さが認められノスフェラトゥ計画に参加することになりました。 レフが訓練の指導・付き添いを行う一方で、アーニャは医学的な視点でデータ採取・数値チェックなどを担当します。 イリナのことをイリニャンと呼ぶなど、朗らかで明るい性格の持ち主です。仕事に対しては真面目に取り組んでいますが、イリナの精密検査を行った際はべたべた体に触って反応を楽しむなど、お茶目な部分も見せました。
ローザ・プレヴィツカヤ
ツィルニトラ共和国連邦で宇宙飛行士候補生として活動している中の1人で、紅一点です。 美しい容姿をしており、"サングラードの白バラ"という異名がつけられるほど仲間うちで高い人気を誇っています。 クールな性格で、時には遠慮なく厳しい言葉を投げかけることもあります。特にイリナと初対面の際は、「実験体」「正体不明の化け物」など辛らつな呼び方をしていました。
『月とライカと吸血姫』の用語解説
本作には、独自の用語がいくつか登場します。特に重要な、国の名前やストーリーに関わるプロジェクトについて解説しますので、しっかり覚えましょう。
ツィルニトラ共和国連邦
10年前に行われた巨大戦争により、二分された国の片方です。東側に位置しており、アーナック連合王国と宇宙開発競争を行っています。 これまで人工衛星や犬、月探査機などの打ち上げに成功しており、アーナック連合王国よりも宇宙開発は一歩進んでいる状態です。 アーナック連合王国より先に人類を宇宙に到達させることを目的としており、20人の候補生を選抜し、宇宙飛行士を育てる訓練を行っています。 "ライカ44"という閉鎖都市を秘密裏に造り、情報が漏洩しないよう計画を進行させているようです。
アーナック連合王国
二分された国のもう片方で、西側に位置している国です。優秀な科学者を抱えながらも、爆発事故が起きるなど、宇宙開発の成果をなかなか上げられていません。 物語が始まる3年前の1957年には、衛星打ち上げ用のロケット発射事件を生中継しており、世界中の注目を集めました。しかしロケットが爆発し失敗したことで、宇宙開発史上最大の失敗とツィルニトラ共和国連邦からは評されています。 情報統制や規則などが厳しいツィルニトラ共和国連邦と比べ、自由に重きを置いているようです。
ノスフェラトゥ計画
ツィルニトラ共和国連邦が立案した、吸血鬼を使い宇宙飛行実験を行う計画のことです。 犬や猿よりも極めて人間に近い生態である吸血鬼を利用することで、成功しても記録には残らず、失敗しても実験動物が死んだだけで済むという冷徹な内容であり、イリナはその実験体として選ばれました。 もし人間を乗せてしまうと、宇宙滞在時、または帰還時に万が一があった際に各所から非難を浴びてしまいます。それを避ける手段として練られた計画であり、レフは命令によりこの計画に参加することとなるのです。
吸血鬼と宇宙が織りなす独特の世界感に注目
宇宙飛行という科学分野と、ファンタジー世界ではよく見かける存在・吸血鬼という二つの題材が合わさった『月とライカと吸血姫』は、宇宙開発競争の中で若者たちが成長していく様子を描いています。 宇宙というテーマが好きな人、異種族間の交流が好きな人におすすめできる作品です。まだ読んでいない人は、この機会にぜひ手にとってみてください。