物語に現実味を与える、些細なリアリティの積み重ね
東京から長らく離れていた故郷へ戻ってきて図書館勤めをしている岩谷ヨリ。恋愛ごとからは距離を置き、プチ老後のつもりで暮らしている。
ひょんなことからの中学生の同級生との再会、そして妹との同居。それまで単調だった故郷での暮らしが変わりだす。
色白で太っていた事から仇名がホワイトポーク=ホワイトとか、若い頃には座りもしなかった階段途中のベンチに腰掛け、そこから見える景色を味わったり、おろしたばかりの靴のヒールが走り回ったせいでボロボロになってしまったり、こうした細部を構成している細やかなリアリティの積み重ねが、一見淡々としたこの物語に色とリズムを与え、現実味を与えている。
40歳手前の主人公と同年代の読者には、不思議と共感してさっくりじっくり読める物語と思う。