漫画として非常に素晴らしい作品です、が・・・
長文失礼します。
漫画家さんの力量が凄く、漫画としての完成度がとても高いです。美麗な作画と秀逸なコマ割り、豊かで繊細な表情の登場人物たちにどんどん引き込まれ、先が気になってついつい読み進んでしまいます。
が、如何せん王太子の性格が酷過ぎるのが何とも・・・。拗らせヤンデレと紹介文に有りますが全くその通りで、彼のヒロインに対する言動の殆どはモラハラ以外の何物でもない。
この王太子は、ヒロインが生きる希望を無くすほど精神的に追い詰めておきながら、彼女の自分への恋慕は変わらぬものと信じ、婚姻を拒否されると今度は解除不能な魔法で彼女を自分に縛り付ける。卑怯な手と自覚していながらそれを行うという異常者です。顔は良いのに勿体ないw
2人の長年の関係を思うと、王太子はそれほどまでに彼女を他人に渡したくないんだ、ヒロインもそれほどまでに彼に思われるなんて素敵~・・・と単純には思えず。
彼らの関係がモラルハラッサーとその被害者であると気付いてしまうと、王太子の言動がたとえ無意識だとしても、逐一ヒロインを支配しようとしていること、彼女も立場上仕方ない場合があるにしても、それを甘んじて受け入れてしまうということに、どうにもモヤってしまいます。
特に3巻の終わり辺り、王太子がヒロインを信用してきちんと状況を説明していれば、彼女も彼を信用し自重したのではないでしょうか。仮に彼女が勝手に行動したとしても、常時護衛という名の監視が付いている訳ですから、先んじて彼女を止めることが出来るでしょうし。
にも拘わらず、王太子は状況を説明しなかったことを「お前が私を信用していない」からだとヒロインの所為にして、彼女自身は彼を信用しない自分が悪いんだと恥じ入ってしまうという。嗚呼ヒロインすっかり洗脳されちゃってますね。貴女は悪くないと思うよ。
ともかくヒロインのアニエスがとても魅力的なのにどうにも可哀想で、相思相愛なんだからハッピーエンド、とは一概に言い難い何とも複雑な読後感があるので、物語の評価としては星1つマイナスで。好きな作品であることは間違いありませんが。