台詞が濃い
普段私達が病院でお世話になっていると感じているのは主に臨床医。その裏方にいる病理医の存在に気付いている人は少ないだろう。
医療もチームプレイで、頑張っているのは担当医と看護婦だけというわけではない。
そして、それぞれが患者の健康や命への責任を負って働いている。
この1巻の中で
「病理診断専門医の認定って、6割点取れば合格なんですよ」
「4割間違えていいんです⁈」
ーーー 略 ーーー
「8割取りました」
「2割誤診したって胸張られても」
という台詞のやり取りがある。
仮に10,000人という分母があれば、2,000人が誤診になる。1%であっても100人だ。
これを少ないと感じられるだろうか?深刻なケースであるほど誤診は許されない。
診断する側にとっては大勢のうちの1人でも、診断された当人や周囲にとっては大きな問題になる。
医療というのはそういった重く、ヒリヒリとした現実に携わる場なのだと、少し怖くなった。
そして主人公(たぶん)の岸京一郎は、そうした重みにきちんと責任を負う覚悟を持って仕事をしている人なのだろう。
組織として動くならそこには力関係、駆け引きがある。自分の成果に拘る人もたぶん多い。
医者という職業に就く人には無駄にプライドに高い人が多そうと想像出来、大きな病院という職場は面倒くさそうとも想像出来る。
患者には病院で見せる顔以外の生活があって、実はそれが診断や治療方針へ繋がる事もある。けれどそれを丁寧に追い掛ける医師ばかりではないだろう。
そうした私達にはなかなか見えないバックグラウンドを、適度にマスキングしつつ病理医の現場を描いている。
そして、岸京一郎という人物をもっと知りたくなる。
マスクがどう外されていくのかが楽しみ。
そんな作品。