「ピース オブ ケイク」や「ダンス・ダンス・ダンスール」など多彩なマンガを描くジョージ朝倉先生による「溺れるナイフ」は、菅田将暉さんと小松菜奈さん出演で映画化もされた大人気作品。『別冊フレンド』で連載されていました。繊細で壮大な恋愛と成長の物語で大人もハマる少女マンガとなっています。懐かしい青春時代を思い出したい人、ピュアなだけでは物足りない読者におすすめ!
「溺れるナイフ」とは?
一言でいうと純愛物語ですが、ただのキラキラ青春マンガと思ったら大間違い! 恋に溺れ、欲に溺れ、光と闇にのまれていく怒涛のラブストーリーであり、少年少女が成長していく物語でもあります。都会から田舎への転校をきっかけに、主人公の夏芽が少年コウと出会い、運命が大きく変わりはじめるのですが、ただハッピーで胸キュンな恋愛マンガでは物足りない!という読者にはピッタリのマンガです。
あらすじ
どうすればいいのかわからないけど、欲しいのはこの子だけだ――。 小6の夏芽(なつめ)が越してきたのは、東京とあまりに違う田舎の町。そこで出会った一人の少年に、夏芽は自分の中の「何か」が、大きくうねるのを感じていた……。せめぎあい、追い上げ、追い込んでいく、破裂寸前の10代のこころを描いたジョージ朝倉先生の傑作長編!
登場人物
望月夏芽
12歳の小学校6年生で弟の竜太とふたり姉弟。 見た目はパーフェクトだが内面は脆く暗い。人とのコミュニケーションが苦手で芸術肌タイプ。 ティーンズ向けファッション雑誌『プラム』の表紙を務める人気モデルでイマドキの都会っ子だったが、引越しを機にモデル活動を休止することに。実家は父が祖父の代わりに旅館ひねもす屋を引き継いでいる。田舎でもアイドル的存在だが生活に馴染めず疎外感を感じている。 コウを「神さんの使い」と感じ惹かれていくが、誘拐事件をきっかけに関係性が変わっていく。 小学生の頃は疎遠だった大友とも中学生になると関係に変化が起こることに。
長谷川航一朗(コウちゃん)
転校先の田舎で出会った運命の相手。町を牛耳る大地主の跡取りドラ息子でクラスの人気者。 自信家で傲慢でヤンチャだけど、不思議な魅力のある夏芽の同級生。小学生時代は概念にとらわれない自由な発想と行動力を持つヒーロー的存在だったが、誘拐事件をきっかけに手のつけられない不良に。誰よりも強く誰よりも達観しているが誰にも見せない心の闇がある。 複雑な家族関係で母や家族に対してトラウマを持っている。町の象徴でもある神さんの海によく潜る。
カナちゃん
コウの幼馴染。おっとりしていて気が弱い。 コウが大好きだけど夏芽とコウのカップルが一番だと思っている。小学生時代はぽっちゃりキャラだったが、中学生になると少しずつ痩せてキレイになって性格も少しずつ変わっていく。 夏芽に憧れているが、物語の後半では2人の関係をかき乱していく重要な人物。
大友
コウの友人。素直で女っ気がなく男らしいが天然。中学生になると夏芽のクラスメイトになり、だんだん近づいていく。親友だったコウとはやがて恋のライバルに。夏芽の家によく魚を届けてくれ、夏芽の弟にも慕われている。
桜司
コウの従兄弟。コウにライバル心を抱いており、跡継ぎのポジションを狙っている。コウと同様にひねくれていて、ケンカが得意。顔も少し似ている。物語の中盤では物語に欠かせないキャラになっている。母親が毒親だが唯一の親類のため信じきっている純粋な一面も持つ。
謎の宿泊客
突然フラりと現れた謎の男。一見優しそうな好青年に見え、ただの宿泊客だと思っていたこの男が夏芽とコウの運命を大きく変えてしまう張本人。
魅力ポイント
(1) 恋愛とココロの葛藤・成長のゆくえ
「溺れるナイフ」のメインは夏芽とコウの恋愛模様ですが、それと同時に小中高と青春時代の心理や成長を繊細かつリアル描いています。 キラキラとしたまさに「青春まっさかり」な胸キュンシーンも多く輝かしい瞬間もたまらないのですが、それぞれが抱えるトラウマや思春期ゆえの悩みなどダークな部分も描き出しているのがとてもリアルで心理描写に共感してしまいます。 一筋縄ではいかない思春期。見た目もココロも一番変化する時期を、小説や映画のようなアーティスティックな情景や人物描写とテキストで彩りを与え、読者を物語へ引き込んでいきます。 夏芽とコウはとても不思議な関係性。物語の序盤は、好き嫌いではなくまだソレがなんなのか分からず惹かれていきます。 夏芽にとってコウは憧れであり、ライバルのように勝ちたいと思う存在。 嫉妬させたいからなのか、プライドの高い2人はまだまだ子どもでお互いを試し合います。 危なっかしくて自信に満ち溢れていて、でもどこかお互い儚げで脆さを持っている2人。 「ある事件」をキッカケに運命は大きく変わり始めていくので、そこからの展開にもアッとのまれるでしょう。
(2) 恋が人を変えていく
「溺れるナイフ」は恋する楽しみと幸せを味わわせてくれると同時に、苦しみや憎しみも容赦なく描いていきます。キラキラとして眩しい小学生時代にも恋によって苦しむ様子が描かれていましたが、それはまだ序の口。 中学生になりみんな少しずつ大人びてきた中、「ある事件」が起こるのです。夏芽もモデル業に復帰して人気もうなぎ上りの中、2人も付き合う事になって幸せの絶頂の中で「ソレ」は起こってしまい…。「恋する気持ち」が狂気になった瞬間、人はこうも変貌するのかと思うシーンに悪寒と悲しみが止まりません。
「ある事件」だけでなく、そこをキッカケに恋する気持ちや過去のトラウマから人が変わっていく様子が切なくも痛々しく描かれています。痛みや葛藤にどう向き合っていくのかも注目ですよ。 歯車の狂い始めた夏芽とコウの2人の気持ちが切なすぎて泣ける!
(3) 夏芽とコウ、大友の三角関係の行方
神様のコウか天然様の大友か。それぞれの持つ魅力に惑わされる三角関係の様子も本作の見所です。コウは一緒にいると感情の起伏が激しくなり、幸せと不幸せを両方味わうキケンでドラマチックな男。大友は正反対で一緒にいて安心し、包み込んでくれる男。これは究極の選択です。物語の前半はコウとの恋愛が中心ですが、中盤になると大友との恋も動き始めていきます。 夏芽の心を動かしていく二つの恋愛。その行方に目が離せません!
メディア情報
映画
小松菜奈・菅田将暉出演 2016年公開
まとめ
10代の破壊寸前の繊細なココロを描いた「溺れるナイフ」いかがでしたでしょうか?青春時代の壮絶な恋愛ドラマは、大人が読んでもハマること間違いなしです。懐かしいあの頃を思い出しつつ、読んでみては?
ダンス・ダンス・ダンスール 1
少年・青年マンガ主人公・村尾潤平は中学二年生。 幼い頃にバレエに魅了されるも、父の死をきっかけに「男らしくならねば」とその道を諦める。 バレエへの未練を隠しながら格闘技・ジークンドーを習い、クラスの人気者となった潤平だが、彼の前に、ある日転校生の美少女・五代都が現れる。 母親がバレエスタジオを経営する都に、バレエへの興味を見抜かれ、一緒にやろうよと誘われるが――!? すべてを犠牲にしたものだけが、立つことを許される世界。 重力に逆らい、美しく高く跳ぶものたちよ、 抗いがたきその衝動に、身を捧げよ―― 女性誌界のトップランナー・ジョージ朝倉が描く、 王道のドラマチック・バレエ・ロマン、開幕!!!!!