デビュー作『春の呪い』で一世を風靡した小西明日翔先生の最新作『来世は他人がいい』。 極道の家で生まれ育った女子高生、染井 吉乃。家庭環境は特殊でも、おとなしく平穏に日々を過ごしてきた。婚約者の深山 霧島(みやま きりしま)と出会うまでは――!はみ出し者たちが織りなす、スリルと笑いが融合した極道エンタメがここに誕生!!
『来世は他人がいい』とは
「次にくるマンガ大賞2018」で見事1位に選ばれた本作は、ヤクザの元で育った2人の奇妙な恋愛関係が描かれたコメディ漫画。 月刊アフタヌーン(講談社)2017年10月号から連載スタート。 「ウロボロス」「潜熱」などの裏社会モノが好きな方におすすめです。
あらすじ
関西最大の指定暴力団 染井蓮二を祖父に持つ女子高生・染井吉乃。 吉乃は祖父が関東最大の指定暴力団の総長・深山萼と兄弟盃を結んだことをきっかけに、勝手に深山総長の息子・深山霧島と婚約を取り付けてきたことを知る。抵抗も空しく、流されるまま吉乃は東京の深山一家の家で暮らすことになる。 一見、眉目秀麗な優男に見えた霧島だったが、破滅願望と被虐願望を併せ持つ危険な男だった。
登場人物
染井 吉乃
関西最大の指定暴力団染井組組長の染井蓮二を祖父に持つ17歳の女子高生。周囲を振り回す自由奔放で陽気な祖父を反面教師にして育ったため、ヤクザの一家で育ったにもかかわらず人柄は普通。ツッコミが鋭く的確。美人だが、周囲からは「梅田のホステス」「バツイチ子持ち」などと呼ばれている。 隙のないタイプで彼氏ができたことがなく、そんな孫娘を見かねた祖父が旧知の仲である関東の暴力団・深山一家の総長・深山萼と兄弟盃を結んだことをきっかけに、深山の息子・深山霧島との婚約を勝手に結んできてしまう。
深山 霧島
関東最大の指定暴力団である砥草会直系の深山一家総長・深山萼の息子。高校3年生。眉目秀麗で成績もよく、幼いころから空手を習っており、文武両道。常に笑顔で優男見える。一方で他人に凄惨な暴力を振るえる二面性があり、自分の人生をメチャクチャにされたい破滅願望を持っている闇がある少年。あることがきっかけで、吉乃に惚れてしまい、吉乃の電子辞書にGPSを仕込んだり、吉乃のスマホのクローンを製造したりして歪んだ愛情表現でストーカー呼ばわりされている。
桐ヶ谷組直系 染井組組長 染井 蓮二(吉乃の祖父)
関西最大の指定暴力団四代目桐ヶ谷組直系染井組組長で、染井吉乃の祖父。自由奔放で調子のいい性格。男っ気のない孫娘の吉乃を心配して勝手に深山総長の息子・深山霧島との婚約をとりつけた。その後、トントン拍子で事が進み、吉乃を深山家に送りこんだ。 吉乃と霧島が上手く行っていないことを知ると「一年掛けて死ぬほど自分に惚れさせたあと、容赦なく捨てろ それが男に効く一番の復讐や」と電話で吉乃に伝え、奮い立たせた
砥草会直系の深山一家総長 深山萼(霧島の父)
関東最大の指定暴力団である五代目砥草会直系の深山一家の総長。関西最大の指定暴力団四代目桐ヶ谷組直系染井組組長・染井蓮二と兄弟盃を結んだことで、関係者の間でも話題になっている存在。シュッとして男前。
鳥葦 翔真
小学生の頃に母を亡くしている。中3の頃、吉乃の祖父・蓮二に喧嘩を売ってそのままひろわれ、蓮二が事実上の養父となる。現在、京都の大学に通っている。吉乃は翔真のことを「家族」として大切に思っている。東京に来てから、霧島との心理戦に張り詰めていた吉乃は、大阪から父のアルバムを届けにきてくれた翔真と久しぶりに気を緩めた時間を過ごし、「正直このままアンタと大阪帰りたいわ」と漏らす。霧島の素性を聞いた翔真は「じゃあ吉乃さんの代わりに俺がそいつ(霧島)を殺したる」と真剣な眼差しで吉乃に言った。
魅力ポイント
(1) 霧島の恐怖の二面性
学校でも常に笑顔で爽やかな霧島は、当然の如くモテます。 はじめの頃は吉乃に対してもその“貼り付けたような笑顔”で優しくエスコートしていました。 ある時、街で吉乃にナンパしてきた輩3人に対し、まわりをかえりみず平然と悽惨な暴力を振るうのです。 吉乃は、返り血を浴びた霧島が上着を脱いだ際に露わになった背中一面に描かれた刺青に恐怖を感じ、同時に身の危険を感じました。 怯えた様子の吉乃を見た霧島は、呆れたように「あ~・・・もうダメだ 面倒臭い」と言い放つのです。 霧島は、吉乃のことを染井組長の孫娘で、さらに美人であることから死ぬほどワガママな女だと思って期待していたが、思っていたより普通で飽きてしまったと言います。吉乃のことを「俺にとって価値のない女」とし、取り柄である顔と体を売って金にしてこいと笑顔で命じるのです。
(2) 吉乃の覚悟
霧島の裏の顔を見た吉乃。霧島に言われた言葉を思い出しながら大阪に戻ろうかと珍しく弱気になっていました。同時期に、学校で自分のロッカーを開けると中が泥だらけになっているという出来事がありました。典型的なイジメです。公園で泥を落としてる時に、祖父の蓮二から電話があり、吉乃の様子を察した蓮二は「虐げられても 爪弾きにされても どんだけ上手くいかんかっても 1年は帰ってくんな」と叱咤し、吉乃は霧島に復讐することを決意しました。 そして、“取り柄である顔と体を売って金にする”ことを実行に移すのです。
(3) 翔真の存在
翔真は、大学が終わってそのまま大阪に行き、頼まれていた吉乃の父のアルバムを届けにきました。 プライドも 体面も捨てたら 残るもんなんて 何もない それ捨てたら 死んだも同然やろ 早朝の新幹線の見送りにきた吉乃に言われ「俺はそんなもんのために命張られへん」と答える翔真に「じゃあアンタは何のために命張るねん」と吉乃に問われた翔真は・・・? 新幹線の発車間際に吉乃を抱き寄せた翔真。 「また来ます」 反対側のホームには、二人を見つめる黒い影が・・・
まとめ
常人離れの感覚で破滅願望を持つマゾヒストの霧島と、我が強くてキレたら何をするかわからない吉乃。交わりそうにない危なっかしい高校生の2人が不思議と噛み合うのはやはり「極道」の世界で生きているから…。 歪んだ愛情表現で吉乃に付きまといながらも吉乃を守る霧島。そんな霧島と吉乃の祖父・蓮二は吉乃のいないところで電話や手紙でやりとりを行っている。関東・関西それぞれの組の本来の目的や真相は明かされていない。 この世界、一寸先は闇。 --------- いかがでしたでしょうか!現在2巻まで配信中の「来世は他人がいい」。 翔真の存在により、2人の距離は縮まるのかーー?新刊が出るのが待ち遠しいです。 吉乃が全身全霊でずしんと重みのあるドぎつい言葉を解き放つとき、読んでるこちら側のスカッと感が凄い..!吉乃がオトコマエすぎる!個人的には、翔真の登場で霧島の吉乃への態度が変わっていくのかと勝手に想像して楽しんでおります。霧島にも「嫉妬」という感情はあるのか?!そして霧島と吉乃の祖父・蓮二のやりとりにも引っかかるところがあり、どんな裏の裏事情が水面下に潜んでいるのか気になります。 「来世は他人がいい」このタイトルにどんな意味が込められているのかーー。 今後もますます目が離せません。いま、絶対に読むべきおすすめ作品です!