勝者は全てを手に入れ、敗者は全てを失う……そんなシビアな世界に拳一つで挑むのがボクシングというスポーツです。プロの世界で脚光を浴び続ける者もいれば、地の底でもがく者もいます。ボクシングというスポーツにさまざまな形で関わり合う選手達を描いたボクシング漫画の中でも、とくにおすすめのものを紹介します。ぜひ読んでみてください。
連載終了から50年近くたっても語り継がれるボクシング漫画の名作です。 東京・山谷のドヤ街に現れた矢吹ジョー(やぶき じょー)にボクシングの才能を見いだしたアル中の元ボクサー・丹下 段平(たんげ だんぺい)でしたが、ジョーは罪を犯して鑑別所に送られてしまいます。 そんなジョーに、段平は「明日のために」というボクサーとしての心得を手紙にして送るのでした。 鑑別所から出たジョーがプロボクサーとしての道を歩み始め、やがて世界へと挑むという作品です。 本作の社会的影響力はすさまじく、ジョーのライバルキャラである力石(りきいし)が作中で亡くなった際には、架空のキャラであるにもかかわらず葬儀が行われるほどでした。
バンドでスターになるといいながらも特に何もせずにだらだらと人生を送ってきた力太郎(りきたろう)に、転機が訪れます。それは、姉夫婦が交通事故により死亡したことでした。交通事故遺児となった姉夫婦の子ども・青空(あおぞら)を引き取ることになったことをきっかけに力太郎は人生を見つめ直します。 そんな彼にある日、3カ月の練習でボクシングのプロテストに挑むというテレビ番組の出演依頼が舞い込みます。元世界チャンピオンの指導のもと、力太郎はプロテストに受かるべく努力をするのでした。 27歳というボクサーとしては遅咲きな年齢ですが、初めて真剣に何かに打ち込む力太郎は応援したくなります。コメディとシリアスのバランスが良い作品です。
父が借金で自殺し母親はヤクザの愛人で麻薬中毒者という、ハードな人生を歩んでいる主人公・ 芥生 リク(あざみ りく)。彼は自分を虐待する母の愛人のヤクザを殺してしまいます。その後児童施設で育った彼は、元東洋太平洋チャンピオンのヤクザ者・所沢 京介(ところざわ きょうすけ)によって、ボクシングを知ります。プロテストに合格した理由はボクサーとして第2の人生を歩み始めるのでした。 父親のような敗北者にならず、子どもの頃の環境に逆戻りしないために文字通り人生をかけてボクシングに打ち込むリクは、ボクシングを通じて尊敬すべき選手をはじめ様々な出会いを経て、過去のトラウマを払拭していきます。人間的にも成長していくリクに注目です。
原作を担当しているのは、元WBAミドル級世界王者の竹原慎二さんです。ガチンコファイトクラブなどで、竹原さんは指導者としても有名です。 暴走族“風神”の喧嘩を肩代わりして生活費を稼ぐ少年リクでしたが、 アマチュアボクサー・棚夫木 克海(たなぶき かつみ)に圧倒的な力を見せつけられて敗北してしまいます。それからリクはボクシングにのめり込んでいきやがてプロボクサーの道を目指します。 一方で棚夫木は、プロデビュー直前に重大な病気が見つかってしまいリングを降りる事になってしまいました。プロとしての道を歩み始めたリクと、道を失ってしまった棚夫木という、対照的な2人の人生が描かれています。 原作がプロボクサーだけあって、リアルで迫力ある試合に注目です。作品後半では、リクがジムを設立するという展開もあります。
第五代皇帝ネロが即位し、ローマ帝国の繁栄が全盛期を迎えていた時代、主人公のセスタスが拳奴となるところから物語は始まります。 拳奴とは、拳で戦う奴隷のことです。自由市民の娯楽のために、見世物として戦うのです。負けた方は死の制裁が加えられるため、文字通り命を賭けて戦っています。 主人公のセスタスは、そんな拳奴として、神速と呼ばれるほどのスピードの乗ったパンチを武器に勝ち上がっていくのです。ライバルとの因縁の対決や師弟関係などの濃厚な人間ドラマに加え、ローマ時代の歴史と知識も身につけられる作品です。