社会派作品や歴史ロマンなど、様々な名作を生み出す池田理代子さんの代表作『ベルサイユのばら』。1972年の連載開始以来、40年余にわたって愛読されるロングセラー作品です。宝塚歌劇団による舞台の大成功がヒットに拍車をかけ、社会現象化しました。深い人物描写、優雅さと美しさに満ちた作画、伝記物としてのリアリティ、ドラマティックな展開など…今なお世界中の人々を魅了してやまない不朽の名作です!
『ベルサイユのばら』とは
この作品は、フランス革命前後のベルサイユを舞台に、男装の麗人オスカルと、フランス王妃・マリー・アントワネットらのドラマティックな生涯を描いた物語。通称『ベルばら』。 史実を基にしたフィクション作品で、フランス・ブルボン朝後期、ルイ15世末期からフランス革命でのアントワネット処刑までを描いています。前半はオスカルとアントワネットの2人が中心のストーリー、中盤以降はオスカルが主人公となりフランス革命に至る悲劇のストーリーになっています。 『イノサン』『王家の紋章』など、壮大な歴史ロマン作品が好きな方にオススメです。
あらすじ
フランス宮廷-そこは世界一華やかで贅沢さを競い合うセレブたちの憩いの場。時は18世紀、若き皇太子妃として、オーストリア・ハプスブルグ家よりマリー・アントワネットが嫁いでくる。皇太子夫妻を護衛するのは、男装の麗人・オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ。宮廷では愛くるしいアントワネットへと人気が集まるが、ルイ15世の愛人・デュ・バリー夫人が社交界を牛耳っていた…。皇太子妃VS国王愛人で盛り上がるベルサイユ。そして、対立はオスカルをも巻き込みやがて国際問題へと発展していき…!?
登場人物たち
主人公:オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ
本編のヒロインにして、主人公の1人。 代々フランス王家の軍隊を統率してきたジャルジェ伯爵の6女(末娘)で、あまりの元気の良い泣き声だったことから、跡継ぎのいない伯爵家の後継者として育てられる。幼い頃から男性として育てられた男装の麗人。「わたしは女だ!」と言って常に訂正をするように、本人が自覚する性同一性はあくまで女性である。 女性ゆえ王太子妃付きの近衛士官に選ばれ、フランスとオーストリアの同盟が結ばれて輿入れしたアントワネットに仕えることとなった。正義感が強く真っ直ぐな性格をしており、部下達からの人望も厚い。しかし、冷静沈着に見えてやや直情的で、父親譲りの短気な面ももっている。
主人公:マリー・アントワネット
フランス国王ルイ16世の王妃。主人公の1人。 オーストリアの女帝マリア・テレジアの第9子として生まれ、14歳でフランスへ嫁いだ。その後2男1女をもうける。誇り高く美しく、人を惹き付ける天性の魅力を持っている。 オスカルを信頼し、良き親友のような信頼関係を築き何でも打ち明け頼りにしている。 王妃の公務や、世継ぎ誕生を望む周囲の重圧や宮殿での生活の寂しさから逃れようと浪費や賭博にふけり、フランス国民の怒りを増長させてしまう。 歴史上の実在人物マリー・アントワネット・ジョゼファ・ジャンヌ・ド・ロレーヌ・ドートリシュがモデルとなっている。実際オーストリア皇女時代のドイツ語名は「マリア・アントーニア」だが、読者の混乱を避けるために本作品では初めから「マリー・アントワネット」と統一している。ジャルジェ夫妻のなれそめの話で、名前の1つが父フランツ1世の故国の名であることが語られた。
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン
政略結婚でフランスに嫁いだアントワネットが、初めて心から愛した男性。 スウェーデンの貴族の上院議員の長男として生まれる。容姿端麗で思慮深く知性的な青年。オスカルを親友として慕っている。 アントワネットの落馬事件の時にオスカルが負傷するまで、オスカルが女性だと知らなかった。 歴史上の実在人物ハンス・アクセル・フォン・フェルセンがモデルとなっている。
アンドレ・グランディエ
オスカルの従卒かつ幼馴染。ジャルジェ家の馬丁。黒髪で黒い瞳。 平民出身で、母子家庭で育つが、両親を亡くし祖母マロン・グラッセの働くジャルジェ伯爵家に引き取られる。そこで、その娘である主人公オスカルと出会う。 身分の分け隔てなく育ったこともありオスカルとはタメ口だが、分不相応の特別扱いを気にする祖母にたしなめられることが多い。アントワネットの落馬事件の時にオスカルに助けられ、彼女のことを命懸けで守ることを決意。いつしかオスカルを愛するようになる。
ロザリー・ラ・モリエール
オスカルがパリの下町で出会った娘。オスカルを強く慕っており、オスカルからも妹のように可愛がられている。 愛らしい容姿で優しい心を持つ。養母ニコールを馬車で轢き殺した実母ポリニャック伯夫人への復讐を誓う。母の敵を討つためベルサイユにやってきた彼女をオスカルが引き取り、ジャルジェ家で貴婦人としての教育を受ける。
ルイ16世
フランス国王でマリー・アントワネットの夫。ルイ15世の孫で彼の崩御により即位する。 趣味は読書と狩猟と錠前づくり。小太りで大人しく真面目な優しい性格だが、優柔不断なところがある。その優しい性格から国民からは慕われていたが、政治的決断力には欠けていた。 妻アントワネットを愛していたが、自身のコンプレックスから自信が持てずにいた。 歴史上の実在人物ルイ16世がモデルとなっている。
魅力ポイント
(1)男装の麗人!オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ
ベルばらと聞いて真っ先に思い浮かぶキャラクターといえば、ファンからも絶大な人気を誇る主人公オスカル。 この作品は歴史上の実在人物がモデルとなっているキャラクターが多いですが、オスカルは複数のモデルから創作された架空の人物です。 このオスカル、まさに男装の麗人という言葉がぴったりな風貌で、美しい金髪をなびかせた凛々しい姿は、作中でも女性達の憧れの的。 また、大貴族ながら個人の自由を尊重する発言が随所にみられるところも魅力的です。部下に反抗された際も「私はお前たちを好きにできる権力を持っている。しかし力で人を押さえつけることに、何の意味がある?心は自由だからだ」と発言。見た目だけではなく、中身も情熱的で高潔でかっこいいのです。
(2)痛いほどに切ない、恋愛劇
伯爵家の後継者として男と同じように育てられてきたオスカル、オーストリアとフランス両国の和平のために若くして嫁がされたアントワネット、スウェーデンの貴公子フェルゼン。この若い3人の恋愛模様がこの作品の物語の軸になっており、オスカルの叶わぬ恋、アントワネットとフォルゼンの危険な恋など、それぞれの切ない恋愛が描かれています。 個人的には、身分違いの愛に苦悩するアンドレが一番切ない…。オスカルに想いを寄せるアンドレの愛の深さ、切なさは泣けます…!
(3)ベルばらを読めばフランス革命期の大まかな歴史がわかる
この作品の舞台は18世紀のフランス、パリ。 オスカルやアンドレなど架空の人物も登場しますが、フランス史上有名な首飾り事件など、もう1人の主人公マリー・アントワネットに関する出来事の多くは史実に沿ったものになっています。 どういう流れでフランス革命が勃発し、断頭台(ギロチン)での処刑にまでいたったのか…この作品を読めばフランス革命期について大まかなことを学べます。 リアリティのある巧みなストーリー展開で描かれる今作。この作品をきっかけにもっと歴史を知りたいなという気持ちになり、気付いたら18世紀フランスについて詳しくなっているかもしれません。
メディア情報
テレビアニメ
1979年から1980年まで日本テレビおよびその系列局で放送されたテレビアニメ。全40話+総集編1話。 フランスとイタリアでも『Lady Oscar』のタイトルで放送。 原作に散見されたギャグ色を排除し、重厚なシリアスドラマとして構成されている。
実写版映画
資生堂タイアップで1979年に公開。 オスカルの劇的な人生を象徴した「劇的な、劇的な、春です。レッド」というコピーで展開した。
舞台
宝塚歌劇団がミュージカル作品として公演。 初演は1974年。それ以来再演を繰り返し、2006年には通算上演回数1500回を突破、2014年には通算観客動員数500万人を記録する。 宝塚歌劇団史上最大のヒット作となった。
アニメ映画
2025年春に完全新作・豪華声優陣でのアニメ映画化を発表し世間を賑わせた本作。 手がけるのは数々の名作を生み出したアニメーション制作会社 MAPPAです。 半世紀を超えてもなお輝きつづける本作の実写化にファンからも期待の声が上がっています。
まとめ
いかがだったでしょうか。本編は全9巻ですが、外伝なども出ており本編を読み終わった後も楽しめます。 数々の魅力的な登場人物、ドラマチックなストーリーで少女漫画として今なお人気の名作『ベルサイユのばら』、人生で一度は読むことをオススメします。