グローバル化や技術の進展により、
地理的な境界は消滅し、
市場は統合され、
政府ももはや無意味になるように思われていた。
しかし、金融危機以降の保護主義や分離主義、
部族主義の高まりは、
グローバル化という概念が新たな段階を
迎えたことを示しているようである。
実際、多国籍に展開する企業であっても、
深く根を下ろした「本拠地」がある。
また世界の多くの人は、
自分の生まれた国を離れることはない。
こうした現実を筆者は「ワールド3.0」と呼んでいる。
これは、民族国家がそれぞれ存在している状況(ワールド1.0)から、
無国籍を理想とする考え方(ワールド2.0)を経て、
自分のルーツや独自性を把握したうえで、
相対的な類似点・相違点を認識する世界へと進化したのだ。
グローバル化の転換点を迎え、
筆者はコスモポリタン企業になるための知見を述べる。
まず現在の状況を理解し、そのうえで戦略のあり方を考え、
組織の設計、リーダーの養成を進めるのだ。
ワールド3.0においては、
自分のルーツを持ったコスモポリタニズムこそが有効である。
*『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(2012年5月号)』に
掲載された論文を電子書籍化したものです。