【内容紹介・目次・著者略歴】
本巻には、著者がほぼ二〇年ごとにドイツで出版した三冊の著作から、現代日本におけるプロテスタンティズムの政治的・社会的な倫理課題について論じた九編の論考を精選し、あらためて邦訳しなおして収録する。巻末には戦後デモクラシーの基本原理を逆転させようとする動きが顕在化する現在、著者の立ち位置を明確に示す「日本人はこれから何を大切にしていくべきか」を付論として掲載。
【目次より】
序章 日本のキリスト教
一 歴史的概観 二 諸宗教とイデオロギーとの間 三 日本の政治宗教
I
1 天皇制ファシズムと日本のプロテスタンティズム
付論 キリスト者の《戦争責任告白》
2 市民的=キリスト教的課題としての平和 日本における平和運動の歴史のために
3 無教会運動の歴史と神学
一 内村鑑三と無教会の精神 二 無教会のエクレシア観 三 無教会の聖書思想 四 無教会の神学思想 五 無教会と教会との対話
4 無教会運動の反戦思想 内村鑑三の非戦論
一 義戦論から非戦論へ 二 非戦論の展開 三 非戦論と再臨思想 四 非戦論の継承
II
5 日本社会における福音宣教
一 日本社会の宗教的特質 二 国家的忠誠の日本的特質 三 現代日本における《未克服の過去》 四 福音宣教と証しの課題
6 原理としての人権 韓国民主化闘争に連帯するために
一 人間存在の目的としての人権 二 国際的連帯の原理としての人権 三 エキュメニズムの文脈における人権 四 人権思想と日本人
7 現代日本の精神状況 われわれは今どこに立っているのか
一 政治的《反動》の徴か 二 国民統合と象徴天皇制 三 政治宗教の精神風土 四 意識変革への問い
8 中間考察 回顧と展望
一 現代宣教学の視点 二 遠藤周作『沈黙』の社会倫理学的考察 三 福音の土着化とは何か
III
9 ボンヘッファーと日本 政治宗教としての天皇制
一 ボンヘッファーの政治宗教批判 二 ボンヘッファーの天皇制批判 三 もう一つの《暗号》解読 四 天皇制ファシズムの擬似神学的構造 五 ボンヘッファーの遺産
終章 《日本教徒》と《非日本的日本人》 領土主権の境界線を越えて
一 《非ユダヤ的ユダヤ人》であること 二 《非日本的日本人》ペトロ岐部の場合 三 《日本教徒》不干齋ファビアンの場 四 《非日本的日本人》として生きる
付論 日本人はこれから何を大切にしていくべきか
補章
I 『日本におけるプロテスタンティズムの政治的課題』(一九六四年)
II 『成人性と連帯性』(一九八四年)
III 『自由は土佐の山間より』(二〇〇五年)
あとがき 解説と解題に代えて
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宮田 光雄
1928年生まれ。政治学者・思想史家。東北大学法学部名誉教授。専門は、政治学、ヨーロッパ政治思想史。東京大学法学部政治学科卒。
二つの著作集がある。
『宮田光雄集 「聖書の信仰」』(全7巻 岩波書店)
「信仰案内」「聖書に聞く 説教選」「聖書を読む 解釈と展開」「国家と宗教」「平和の福音」 「解放の福音」「信仰と芸術」
『宮田光雄思想史論集』(全7巻+別巻 創文社)
「平和思想史研究」「キリスト教思想史研究」「日本キリスト教思想史研究」「カール・バルトとその時代」「近代ドイツ政治思想史研究」「現代ドイツ政治思想史研究」 7巻「同時代史論」「ヨーロッパ思想史の旅」。
訳書に、E・カッシーラー『國家の神話』A・ケーベルレ『キリスト教的人間像』K・フォルレンダー『マキァヴェリからレーニンまで 近代の国家=社会理論』(監訳)エーバハルト・ベートゲ, レナーテ・ベートゲ『ディートリヒ・ボンヘッファー』アードルフ・ケーベルレ『信仰の豊かさを生きる』ディーター・ゼンクハース『諸文明の内なる衝突』などがある。