【書籍説明】
炎が熱いという事実は、誰もが知っている。だから大きな炎を目の当たりにした時、人間は本能で逃げようとするし、何とか自分に被害が及ばない場所まで移動しようとする。
炎は生きているようで生きてはいない。故に先手を取ってしまえば炎に焼かれることはない。
この事実を、能力者本人であるランディー・アクトンは嫌と言う程熟知していた。炎を操る能力者だと知られれば、まず警戒されるのは『その炎で焼かれること』だからだ。
危害を加えられないうちにと、目の前の獲物はすべて逃げ出した。
炎には生き物を屈服させる絶対の力がある。それを知っている人間だからこそ生きていない炎をまるで生き物と認識するかの如く恐れてくれた。
だから、
だから、相手が逃げることで殺さなくてすんでいた。
だから、自分が絶対に負けないという自信を持っていた。
あの瞬間までは――。
【目次】
第九章 三戦目、其の弐「星返しの青年」
第十章 最終戦、「神風(意志)を継いだ男」
最終章 「後悔はしない」
終幕「それから」
… 以上まえがきより抜粋