前漢の中国。老いを自覚する武帝・劉徹は、漠然とした不安を抱いていた。宮中に蔓延る巫蠱の噂。その嫌疑をかけられた皇太子は、謀反の末、自死を遂げる。国内の混乱をよそに、匈奴との最後の戦いが迫っていた。敗北を続ける将軍・李広利は、その命を賭け、敵将の首を執拗に狙う。一方、匈奴に降り右校王となった李陵は、故国への想いを断ち切るかのように最後の戦に向かう。亡き父の遺志を継ぎ、『太史公書』を書き上げる司馬遷。そして極寒の地に生きる蘇武は、友と永遠の絆を紡ぐ――。北方版『史記 武帝紀』、感涙の完結。(巻末エッセイ・小松弘明)