お兄ちゃんがあんな大人になってしまう迄には、おそらく父の虐待にさんざん耐えたのでしょう。それを誰も止められず、モンスターになりさがり、罪を重ね、犯罪の隠蔽にもたけていた正己。
一方では、妹の「がおー」を棄てられなかったわずかな人間らしさも併せ持つ彼の尊厳を奪ったことに、直接手を下した者は苦しみ続ける。どういう形で決着をつけても、海利が罪悪感から完全に解かれることはないでしょう。でも、理世のために生きること自体、一種の贖罪と言うか、生きながら絶えず良心に責められ裁かれ続ける「生き地獄の刑」の日々かもしれない。子供をもうけることはおそらく難しい。正己の余罪を問われる可能性だってある。それでも二人でいたいなら、絶対に理世を幸せにする覚悟で選んだことでしょうから...