｢式の前日｣のレビュー・感想

結婚にまつわるマンガの短編集でどの回も感動するのですが、特に1作目の「式の前日」が心にぐっとくる度でいうと一番だと思ってます。
明日に結婚式を控え、ソワソワしたり切なくなったり。ただ、結婚式を控えた夫婦の話かと思いきや、最後に「え、そういう話なの？！」とびっくりさせられ、最後の3ページで一気に感動して胸いっぱいになる話に急展開します。

短編集を集めた単行本です。各話ごとにそれぞれの登場人物たちの心の機微が見事に表現されていて、少ないセリフの中のなかに現れる個人の性格や、絵の繊細なタッチが短編とは思えない濃密な感動を与えてくれます。日常の一コマを切り取ったような、生活感のある表現が絶妙で、各話を読み終わるごとに涙し心温められることでしょう。読んだら誰かに勧めたくなること間違いなしのしっとりとした作品です。

親子や兄妹など、家族2人の関係を描いた短編オムニバスです。全編を通して、登場人物2人の関係性は分かりづらく、セリフも最小限に抑えられているため、読み手側の想像力が多少問われます。ですが、ラスト1〜2ページで全ての謎や疑問が解決されて一気に雨上がりの空に虹がかかったような気分になって、心がじんわりと温かくなるんです。このマンガは2回泣けます。1度目は各話のラストページを読んだ時、2度目はもう一度読み返して登場人物たちの隠れた気持ちに気付いた時です。

男女の表紙が目を引く短編集。
表題作の『式の前日』ももちろん素晴らしいのですが、個人的にとくに好きなのは『あずさ2号』。読みながら涙が止まりませんでした。ただお涙頂戴というわけではなく、どの作品にもちょっとした意外性が仕込まれているのがこのマンガの魅力です。
いろんな「ふたり」が織り成す人間ドラマのたくさんつまった名作をご堪能ください。