哀れな灰かぶりは王子様にふさわしくない。どんなに心をこめて愛していても。
その日、17歳のフルリーヌは名家出身のラウルに会いに出かけた。横暴な父親が許さないので服は不格好な白いワンピースしかなく、リボンも買えないために長い髪はとかすのが精いっぱいだったけれど。だがラウルは気にせず、「君が18歳になったら結婚しよう」と言って熱烈なキスをしてくれ、フルリーヌは最高に幸せだった。父親が現れ、猟銃を突きつけて彼女を連れ去るまでは。10年後、パリで再会したラウルはあの日の約束を忘れてしまったのか、華やかな女性とデートをしては世間を騒がせる億万長者となっていた。そんな彼に、意気地なしのフルリーヌはすっかり自信をなくしてしまう。そもそも二人は住む世界が違う。結婚を夢見た私がばかだったのね……。
■『愛の都で片想いの婚約を』『大富豪と名もなき薔薇の出自』の関連作で、三つ子の億万長者最後の一人の物語がついに刊行です! ヒロインはヒーローを陰ながら愛するだけにしようと決めますが、なんともう一人の灰かぶり、彼女の妹がヒーローに恋をして……。