「そうですね。その河童が――誰かと云うことです」
「河童が誰かって、中禅寺さんあんた」
小山田は顔を顰めた。
昭和29年、夏。
複雑に蛇行する夷隅川水系に、次々と奇妙な水死体が浮かんだ。
3体目発見の報せを受けた科学雑誌「稀譚月報」の記者・中禅寺敦子は、薔薇十字探偵社の益田が調査中の模造宝石事件との関連を探るべく現地に向かった。
第一発見者の女学生・呉美由紀、妖怪研究家・多々良勝五郎らと共に怪事件の謎に迫るが――。
山奥を流れる、美しく澄んだ川で巻き起こった惨劇と悲劇の真相とは。
百鬼夜行シリーズ待望の長編!