何も思い出せないの――愛するあなたのことも、赤ちゃんのことも。
富豪カルは瀟洒な邸宅でのんびり髭を剃りながら、美しい妻ダイアナと愛し合った甘い余韻に浸っていた。と、突然鳴り出した電話が、彼を現実に引き戻した。病院の緊急治療室からだ。妻が通りで転倒して頭を打ち、赤ん坊と一緒に運び込まれたという。ダイアナはほんの30分前に家を出たばかりだ。病院に駆けつけたカルを、妻はおびえた目で迎えた。愛する妻は、夫のぼくが誰だかわからないのか……。そして赤ん坊のことも――。
*本書は、ハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊から既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。