モデルとデザイナーの成長過程を描く物語に、“友情”や“努力”といった少年誌らしいエッセンスをうまく取り入れることで読者の心をつかんでいる本作。「好きなことに挑戦してる人」「好きなこととやれることの違い」にモヤモヤしてる方の心に、グッと刺さる胸熱展開の数々で、思わず大人買いしてしまうヤミツキ漫画です。今回は、そんな魅力的な登場人物たちと、見どころについて、ご紹介します!
『ランウェイで笑って』とは
『週刊少年マガジン』(講談社)で5月末に連載がスタートした『ランウェイで笑って』は、少年誌では珍しいファッション業界にスポットを当てた漫画。 作者の猪ノ谷言葉先生は、新人漫画家で初連載ながら、SNS(交流サイト)を中心に読者からは高評価の声が多数上がっています。 身長に恵まれなかったモデル志望の美少女が、同級生のデザイナー男子と共に業界のトップに上りつめていく様子が堪らなくドキドキワクワクします。 夢が「パリ・コレ」モデルの藤戸千雪は、ある時から身長が伸びずにモデルは無理だと言われるが、決して諦めない。 同級生でファッションデザイナー志望の都村育人に服の製作を依頼し、見事オーディションに合格する。 千雪も育人も夢に向かって困難を乗り越えていくのです。 「ブルーピリオド」や「ボールルームへようこそ」「あさひなぐ」など、目標に向かって頑張る青春漫画が好きな方におすすめです。 「少年誌でファッション漫画⁉️」と思うかもしれませんが、読んでいるうちにそんなことは忘れてしまうくらい、最高に熱い展開で魅了してくれますよ。
魅力的な登場人物たち
◆藤戸 千雪(ふじと ちゆき)
パリで活躍するハイパーモデルとなることを目指す高校3年生の女子。 子供の頃から、父親が経営するモデル事務所に所属し、モデルとして活躍してきた。顔も可愛く、スタイルも抜群。 大手芸能事務所のオーディションにも一発で受かるほどの逸材である。 しかし、小学4年生からまったく背が伸びず、身長は158㎝で止まってしまった。 この身長が、ハイパーモデルを目指すのに、ネックになるのである。 それでもパリ・コレクションのモデルになることに固執したため、父親である藤戸研二社長から2年前に事務所を解雇されてしまった。 だが、ショーモデルの道をあきらめない千雪は、その後何度もミルネージュのオーディションを受け続けます。 その後、同級生のデザイナー志望の男子・津村育人と出会い、彼に服の制作を依頼したことから、彼女の運は開き始めるのです。
◆津村 育人(つむら いくと)
藤戸千雪の同級生。高校3年生の男子。オカッパ頭の大人しい男の子で、学校では、手芸部に所属。 妹が3人いて、その面倒を献身的に見ている。 デザイナーになることが将来の夢。 しかし、家庭の経済的な事情で進学をあきらめようとしていた。 そんな中、育人は千雪と出会い、彼女が一番魅力的に着られる服の制作を依頼される。彼の服は千雪の要望に見事に応え、彼女はモデル会社ミルネージュのオーディションに合格した。 この時彼が作った服の写真がファッション誌に掲載されて人気を博し、育人はミルネージュの専属デザイナーとして誘われる。しかし、彼が高校生であり、デザイナーとして正式な教育を受けていないことが判明すると、この話がなかったことにされてしまう。
◆藤戸 研二(ふじと けんじ)
ファッションブランドも手掛ける会社・ミルネージュの社長。 藤戸千雪の父親。モデル事務所でもある。 子供の頃から、娘の千雪をモデルとして自分の会社に所属させていた。 身長が低いにも関わらずパリ・コレクションに固執する千雪を一時解雇。 一度は津村育人を会社のデザイナーとして迎え入れる提案を行ったが、彼が高校生であることとデザインの教育を受けてないことを知ると、その提案を取り下げてしまった。
◆雫(しずく)
藤戸千雪の憧れの存在である。かつてパリ・コレクションで活躍した女性モデル。 千雪の父親・藤戸研二が経営するモデル事務所ミルネージュに所属するモデルだったが、早々に引退。 パリ・コレクションに固執する千雪をオーディションで何度も落としていた。 津村育人の手がけた服をまとった千雪に可能性を見出し、彼女を再びミルネージュに迎え入れたのである。
見どころ
(1) 苦悩を乗り越え、2人が成長する姿
作中では、千雪の低身長がいかにモデル界で致命的であるかが描かれており、大人たちの反応や観客の反応も見ていて辛くなる部分があります。 育人の家庭環境も、守らなければならない家族、病状が悪化してしまう母親など、こんなに彼はがんばっているのにここまで追い詰められる必要があるのか⁉︎と、思わず叫びたくなるような出来事ばかりです。 多くの人が抱く夢、それを邪魔する障害は、個々の状況によって様々です。 同じ境遇でなくても、千雪と育人の辛い・やるせない気持ちに、夢を持つ人なら誰でも共感できてしまうのではないでしょうか。 だからこそ、2人がファッション世界で認められたときはぐっと込み上げてくるものがあります。
(2) 真剣な人たちの、努力
モデル体型を維持するために、家でもヒールを履き、徹底的な食事管理をする千雪。 家族や着る人のためを考え、服を作り続けてきた育人の、裏での2人の努力には、あっぱれです。 この努力を真似できるかと言われれば、難しい。 でもその努力をしてきた2人だからこそ、多くの人に認められてほしい! そう応援せずにはいられません。 千雪と育人以外にも、新人デザイナーの柳田も手は抜きません。 トップデザイナーの孫の綾野も自身の立場がありながらも目標に向かい努力します。 この話はもう、皆が服が好きでやりたいことのために頑張り続ける漫画なのです。 全員が報われるのは難しいのかもしれませんが、全力で応援したくなる、そんな読み手の心を動かすドラマがつまっています!
(3) 最後はちゃんと勝利で報われる
育人は金銭的な面や経験不足から、よく土壇場に追い込まれます。 そこで彼は未知の物に対しても、挑み、そして発想で結果を出し、勝利をつかんでいく姿は、みていて気持ちがいいです。 発想、技術、想像を再現できる瞬発力が育人の武器なのです。 後半になると育人の事情や服作りのイベントがメインになり、千雪の出番はかなり減るのですが千雪も負けん気、諦めない心でモデルとしてのチャンスを掴もうと踠いています。 印象的なのは、 育人がデザイナーの所で仕事をする際に同僚となる大学生の心さん。 高身長で存在感、トップモデルの条件を全部持っているモデルの才能の塊です。 それでもやりたいのはデザイナー。育人が頑張る姿は心さんにも諦めない気持ちを芽生えさせます。
まとめ
いかがでしたでしょうか? この漫画は、「モデルとデザイナーの物語」で片付けることができません。 読んでいると、ページを進むにつれ、興奮がヒートアップしていきますので、1人でこっそり読むのをおすすめします。キャラクターたちの、真っ直ぐな姿に涙してしまうでしょう。 ばりっばりのスポコン漫画が連載している少年マガジンで何故この『ランウェイで笑って』人気があるのか。 ぜひ、ご自身の目で確かめてください。 一巻からの完成度もかなり高いので、必見ですよ。