※ネタバレあり 「カノジョは嘘を愛しすぎてる」は、「僕は妹に恋をする」や「僕の初恋をキミに捧ぐ」でも人気を集めた青木琴美先生によって2009年から2017年まで連載され、累計売上部数450万部を突破した大ヒット作品。略称は「カノ嘘」。 佐藤健主演による実写映画化作品が公開され話題になり、国内外問わず人気の作品となった。 今回はそんな「カノ嘘」の魅力と、個性豊かなキャラクターたちをご紹介。
『カノジョは嘘を愛しすぎてる』とは?
人気バンドCRUDE PLAY(クリプレ)の元メンバーで作曲家・小笠原秋(アキ)は、プロデューサー高樹総一郎のゴーストライターで、恋愛でも恋人茉莉の2番手でいることに苛立ち、行きずりの女子高生小枝理子(リコ)に告白。リコはアキの鼻歌に魅せられ、正体も分らぬまま付き合うことに。 「歌う人間は嫌だ」と釘を刺す秋だが、リコは偶然出会ってしまった高樹総一郎によってスカウトされ、彼女もまた音楽の世界へと飛び込んでいく。 2011年6月には、作中の主人公である“小枝理子”がペプシネックスのポスターに起用され、物語の中でもペプシネックスのCMに理子が歌手としてのデビューに起用されるというリンクしたシーンがあったり、映画化が発表されると同時に、主人公の“小枝理子”役を公募オーディションで選出することが告知されるなど、漫画作品の枠を超えた取り組みも話題となった。 「覆面系ノイズ」「坂道のアポロン」「BECK」「四月は君の嘘」など、音楽ジャンル作品が好きな方にもオススメ。
あらすじ
「小笠原さんって何してる人なんですか?」 「何って…えっと…ニート?」 「ニートぉ?」 道端で鼻歌を歌っていた自称ニートなイケメンにナンパされ、一目惚れしてしまうリコ。彼が実は、大好きなバンド「クリュードプレイ」の音楽プロデューサーだと知らずに付き合うことになるが…?
魅力ポイント
(1) デキる男がかっこいい!
とにかくキャラがカッコいい! 外見だけでなく、仕事もできる&自分に妥協を許さない男前な中身もとても魅力的な彼ら。 数々のヒット曲を生み出し年収4億円を超える売れっ子で、周りからは天才と言われているにも関わらず自分に自信が持てない主人公アキ。 才能に溢れ、アキの演奏のゴーストを務めたこともあるが、自らを「天才を育てるために選ばれた悪役」と評し自分だけのバンドが欲しいと苦しむ心也。 実家は超がつくほどお金持ちだが、リコの家の八百屋を継ぐことまで考えるほどリコに一途な恋心を寄せるバンド仲間で幼なじみの祐一など、周りからは才能や環境に恵まれたように見えていても、密かに苦悩し、必死に進化し続けようとするイケメンたちのアツい姿は必見。
(2) リアルすぎて怖い!?丁寧な業界描写
「口パク」「あてぶり」など、綿密な取材によって丁寧に描かれた業界の裏側は、音楽関係者に「リアルすぎて怖い」と言われてしまうほど。 実名のアーティスト名や音楽レーベル、店舗なども作中に多々盛り込まれており、現実世界とリンクして、実際にキャラクターやバンドがそこに存在しているかのようなリアリティを感じることができるのも魅力。
(3) のめり込んでしまうドラマティックなストーリー展開
音楽業界を舞台に描かれたリアルな世界観と、才能と努力の殴り合いのような、これでもか!と各々の最高をぶつけ合う展開がアツイ! とにかく登場人物みんな音楽が大好きで、マンガなのに「音」が聞こえてくるようなシーン描写も最高。 大好きな音楽と恋との間で揺れる、危なかしくて、もどかしくて、ドキドキする甘酸っぱい恋愛模様もたまらない。音楽が好きな人もそうじゃない人も、読めば不思議と登場人物たちに感情移入してしまうこと間違いなし。
個性あふれる登場人物たち
小笠原 秋(おがさわら あき)
作曲家。25歳。 クリュードプレイの元メンバー。ベースと曲を担当。 メジャーデビュー決定後に、自分の代わりに演奏した心也の圧倒的すぎる技術を目の当たりにし、自分の音はこのバンドにふさわしくないと脱退した。 今でも曲を提供しているが表向きはプロデューサーの総一郎名義で発表されているため、ゴースト状態。音楽を介して全てが総一郎と繋がっているような現状に嫌気が差しており、自分の事を知らない理子に自分の正体を告げぬまま付き合い始める。 意外と子どもっぽい部分があり、すぐ拗ねる。 4人姉弟の3番目で唯一の男子。14歳の誕生日、父がギターと間違えてベースを買ってくれたのがきっかけでベースを弾くようになった。 ベースの機種はミュージックマン・スティングレイ。
枝 理子(こえだ りこ)
クリュードプレイの大ファンの女子高生。作中ではリコ。小枝青果店(八百屋)の一人娘。 背は小さく、マッシュルームのような髪型が特徴的。秋の正体を知らぬまま鼻歌に聞きほれ、顔にも一目惚れしてお付き合いすることに。心也や秋と瞬の会話の中では、「マッシュ」と呼ばれている。 祐一と蒼太と3人でバンドをやっており、ボーカル兼ギター担当。道端で一人歌っていたところを、その歌声に興味を持った総一郎にスカウトされる。 明るく前向きで、ライブでこそ本領を発揮するタイプ。そのパフォーマンスには音楽業界の重鎮も舌を巻ほど。
君嶋 祐一(きみじま ゆういち)
理子の幼馴染。通称・ユウで、理子からは「ユウちゃん」と呼ばれる。 理子の家の八百屋を継ぐ覚悟を持っているほど理子のことがずっと好きだった。イケメンだが運動神経が壊滅的にない。バンドではギター(エレキギター)担当。
山崎 蒼太(やまざき そうた)
理子の幼馴染で家も近所。太めの体型。理子からは「ソーちゃん」と呼ばれる。魚屋の息子。 バンドではやはりギター担当(アコースティックギター。全員ギターをやりたがったため)。 秋の正体を知っている。運動神経が良く、クラスメイトからは動けるデブと言われている。
CRUDE PLAY
通称・クリプレ。 作中に登場する大人気バンド。「粗悪な遊び」という意味で「本気じゃないんで許してください」という言い訳の気持ちでつけた。ボーカル兼ギター坂口瞬、ベース篠原心也 、ギター大野薫、ドラム矢崎哲平の4人で構成される。
坂口 瞬(さかぐち しゅん)
CRUDE PLAYのボーカルで薫とのツインギター。アキとは幼馴染で哲平と薫とはバスケ部で一緒だったが、瞬だけレギュラーだった。ちゃらそうに見えてかなりの努力家。 クリプレ一の空気を読む男であり、フォローもとても得意。アキのことが大好きでしょうがない。公衆トイレのドアノブが濡れていると一日ブルーになる。 実家は、何かあれば日本の株価に影響が出るほどの大企業。
篠原 心也(しのはら しんや)
アキ脱退後にCRUDE PLAY加入。デビューシングルでアキの演奏のゴーストを務めた。 デビュー直前にアキが脱退→心也が加入した結果、インディーズ時代のファンからブーイングを受けたことがずっと心の傷になっており、自分はアキが戻るまでの一時的なメンバーだと思っている。 自分だけのバンドを望んでおり、高樹総一郎がスカウトしたリコの声をすっかり気に入ってしまい、プロデュースしたいと申し出る。 父親は人気バンド「シモンズ」のベーシストだったため、小学生の頃からスタジオに出入りし、ギャラを初めて貰ったのも小学生。
大野 薫
CRUDE PLAYのギター担当。年上のモデルの彼女を見送って家事をして毎日を過ごす、ヒモのような生活をしている。一方でアパレルブランドも仕事としてやっており、そっちを本業だといいバンドの練習は行わないちゃらちゃらした表向きを装う。しかし、本当はこっそりとバンドの練習をかかさない超努力家。
矢崎 哲平
CRUDE PLAYのドラム担当。エアースイマーを買ってくるおちゃめさと優しさを持ち合わせている。曲がったことが嫌いで、ファンレターと一緒に連絡先を渡してくる可愛いファンにも手を出したくなるが、ダメだと自制している。
茉莉
「歌姫」と称される歌手。アキ曰く、ガラスのような声。 高樹総一郎との出会いがきっかけでデビューへの足がかりができ、強要されたわけではないが断れずにカラダの関係を持ち始め、そのままアキとの関係も始めた。 高樹とも寝ていることに気付いたアキに関係の解消を求められたが、未練があり、事あるごとにリコを敵視して嫌がらせや圧力をかけてくることも。 家が貧乏で父は物心ついた時からおらず、酔った男が代わる代わる家に来る幼少期を過ごしたため、学校に通っていなかった。16の頃4つ年をごまかして中学に通い始めて以来、ずっと年をごまかして生きている。
高樹 総一郎
CRUDE PLAY(クリプレ)、歌姫茉莉のプロデューサー。リコの実力を見出しバンドをスカウト。スカウト文句は茉莉と一緒の「天才見つけちゃった」。 過去に自分のバンドを失敗した経験から、音楽性よりも売れることを重視しており、クリプレも心也以外は身代わりのプレイヤーを使っている。自分がプロデュースする女性タレントとは寝る主義。 アキの才能を高く買っており、歪んだ愛情表現で絡んではウザがられている。アキがアレンジした曲を自分の名で提供している。
メディア情報
実写映画
2013年12月、全国東宝系で公開。ヒロイン・理子役には、一般から募集した「リコを探せ!オーディション」で勝ち抜いた、当時現役女子高生の大原櫻子が選ばれた。 本作の監督で「タイヨウのうた」(2006年)でデビュー直後のYUIを起用し、スターダムに押し上げた小泉徳宏監督らにその歌声を高く評価され、満場一致で大抜てきされた。脚本はテレビドラマ「美女か野獣」、実写化映画「僕等がいた」などでも脚本を担当した吉田智子。 元“東京事変”のベーシストで椎名林檎やスピッツ、平井堅等の多くの楽曲を手掛ける亀田誠治が音楽プロデューサーを担当している。
青木琴美先生の代表作品
僕は妹に恋をする 僕の初恋をキミに捧ぐ
最後に
恋や愛情、才能があるからこそ見えてしまう限界、成功者への妬み、憧れ、劣化と言われてしまう老いへの焦り、諦めたいけど諦めきれない辛さと希望など、あらゆる葛藤と感情が詰まった「カノジョは嘘を愛しすぎてる」。4巻まで読み進めたら後はノンストップで寝不足になってしまうこと間違いナシ。ぜひ、好きな音楽をお供に世界観にハマってみてはいかがでしょうか。