アルファ・ベータ・オメガという特殊な性が存在する世界で、思春期を迎えた男女の恋模様を描いたマンガ、『夏の魔物』をご存じでしょうか?序盤のあらすじや登場キャラクターを紹介しつつ、世界観についても解説していきます。
『夏の魔物』ネタバレなしのあらすじ
本作のあらすじを、序盤の展開を中心に解説します。序盤で描かれているのは、主に雄晴の境遇、そして特殊な性設定です。
"オメガ性"であると診断される雄晴
小さい頃、主人公の村田 雄晴(むらた ゆうせい)は病院で第二次性徴を迎えたこと、自分が両性具有の存在・オメガであることを告げられます。 3ヵ月に1回のペースでアルファ性を強く惹きつけるフェロモンを出すことも同時に知らされた雄晴は、薬で"発情期"の症状を抑えることになりました。 以降、雄晴はアルファ性ともベータ性とも異なる、希少なオメガ性として生きていくことを強いられます。
教室で陽菜子に押し倒されて行為に及ぶ
ある日、雄晴の下駄箱に一通の手紙が差し込まれます。空き教室に来てほしいと伝える手紙の最後には、佐藤という名前が書かれていました。 雄晴を空き教室に呼び出したのは、別のクラスの女子学生・佐藤 陽菜子(さとう ひなこ)でした。陽菜子は雄晴にずっと気になっていたと告げ、熱に浮かされたような表情を浮かべながら彼を押し倒します。 そこで2人は互いがオメガ、アルファであることを知ります。雄晴のことがずっと気になっていた陽菜子は、恋愛感情ではなく本能で欲情していただけなのかと考え涙を流しました。それでも衝動を抑えられず、2人は行為に及びます。
陽菜子に好意を伝える
後日、陽菜子は雄晴の元を訪れると頭を下げて、「薬で症状を抑えたのでもう二度とあんなことはしない」と宣言しました。 転校しても構わない、と謝罪を続ける陽菜子に対して、雄晴は笑顔で「エロいお誘いじゃないの?」と返します。唖然とする陽菜子に対し、雄晴は以前から陽菜子を知っていたこと、気になっていたが自分の手が届く相手ではないと思っていたことを明かしました。 驚く陽菜子に「好きだよ」と告げた雄晴は、そのまま陽菜子にキスをするのです。
『夏の魔物』の登場人物
本作に登場する主なキャラクター、雄晴と陽菜子について、どんなキャラクターなのか詳しく見ていきましょう。
村田 雄晴(むらた ゆうせい)
オメガ性として生まれた男子で、アルファ性の人間を強く惹きつけるフェロモンを発しています。 気持ちを顔に出す方ではありませんが、陽菜子に対してはからかったり、自分の思いを伝えたりする一面もあるようです。 陽菜子とは中学の時に行為に及んだのちに付き合い始め、高校に入っても関係は続いています。始めは陽菜子に流される形で行為に及びましたが、やられてばかりであることを拒み、自分からもリードするようになりました。
佐藤 陽菜子(さとう ひなこ)
アルファ性として生まれた女子で、雄晴に惹かれて手紙によるアプローチを行いましたが、雄晴がオメガ性であることを知ったときには自分の気持ちは恋ではないのかと疑問を抱き、涙を流して心情を吐露しています。 行為のあと、雄晴から気持ちを伝えられたことで交際を開始し、高校に入ってからは彼の家に招かれるようになりましたす。 優しい性格の持ち主ですが、雄晴に告白するために職員室からこっそり鍵を持ち出すなど、大胆な一面もあります。
『夏の魔物』の特殊な世界観
本作の世界観について、作品の特徴を交えながら解説していきます。オメガについての基本的な概念もチェックしましょう。
本作の特殊設定"オメガ性"とは?
通常は男女で分けられている性ですが、この世界ではその2つ以外に、"アルファ""ベータ""オメガ"という3つの性があります。オメガは両性具有で、男性であっても妊娠が可能です。 オメガにはヒートと呼ばれる発情期に似た状態があり、3カ月に1回程度の周期で訪れます。その期間中は、強力なフェロモンでアルファ性の人間を誘惑してしまうのです。 それらの症状は薬で抑えることが可能で、オメガ性の人間は定期的に薬を投与して生活しています。
無駄な描写がなく読みやすい
物語は、雄晴と陽菜子2人を中心に展開していきます。複雑に人間模様が絡み合ったり、本筋から逸れたエピソードが語られたりすることはほとんどなく、シンプルに雄晴と陽菜子のやりとりが続いていくため、非常に読みやすい作品です。 特殊な世界観でもすんなり作品に入り込めるのは、この無駄のないストーリー展開によるところが大きいでしょう。焦点を絞ることで、2人の恋愛模様を濃密に描ききっています。
雄晴と陽菜子の絶妙な距離感
陽菜子が手紙で呼び出したことをきっかけに関係がスタートしますが、じっくり愛を育んでいくわけではなく、2人は互いをよく知る前に行為に及んでしまいます。 そして互いにオメガ性・アルファ性であることを知り、自分の感情が恋なのか本能なのか悩みながら、躊躇いつつも惹かれていくその距離感がもどかしい作品です。関係のもどかしさこそが、先へ先へと読み進めたくなる理由にもなっているのです。
特異な世界観と2人の心の動き
オメガ・アルファという特殊な性が存在する世界で、思春期の雄晴と陽菜子のやりとりが細やかに描かれている『夏の魔物』は、シンプルな描写が好きな人・一般的なラブストーリーに飽きた人におすすめです。 特殊な性の世界に興味があり、まだ読んでいない方はぜひこの機会に手にとってみてはいかがでしょうか?