異世界に転生したけれど、特に何の力も持たないヒロインと、最強魔法使いの恋を描いた、『魔法使いの婚約者』をご存じでしょうか?ファンタジー世界で展開する恋模様にドキドキできる本作の魅力を、登場人物紹介と併せてご覧ください。
「魔法使いの婚約者」概要
本作がどういった経緯で生まれたか、どんな賞を受賞している作品かなどを、簡単にまとめてみました。
第一回アイリス恋愛ファンタジー大賞金賞作品
中村朱里さんが原作の作品、『魔法使いの婚約者』は、小説家になろうで連載されていた小説です。一迅社アイリスNEOから発売され、第一回アイリス恋愛ファンタジー大賞の金賞を獲得しています。 恋愛ファンタジー大賞を受賞した作品にふさわしく、ファンタジー世界で展開していく主人公の恋愛模様に注目の作品です。
Flos Comicにてコミカライズ
原作の人気を受け、オンラインマンガサイト、『Flos Comic』でマンガ化もされました。 マンガはかづか将来さんによって描かれ、全4巻が発売されています。美麗なイラストで繰り広げられる甘いストーリーに、胸がきゅんとすること間違いなしです。
「魔法使いの婚約者」あらすじ
本作は偉大な力を持つ魔法使いの男性と、その婚約者の物語です。二人の出会いを中心に、序盤の展開を紹介しましょう。
熱でうなされた際に前世を思い出す主人公
主人公、フィリミナは貴族の娘として、とある世界のとある王国に生を受けました。彼女が3歳の時、流行病で一週間ほど生死の境を彷徨います。そのときフィリミナは、自らの前世を突然思い出したのです。 フィリミナの前世は、日本でごく普通のOLとして働く女性でした。不景気でリストラにあい、落ち込みながら歩いていたところ、交通事故に遭って死亡してしまいます。29歳という短い人生でした。 フィリミナは病床で前世を思い出して以降、その記憶を取り戻し、3歳でありながら中身はアラサーという奇妙な人生を歩むこととなったのです。
エギエディルズと出会い婚約を交わす
ある日、フィリミナの父と旧知の仲だという男性が家を訪れます。彼は王宮付きの魔法使いとして高名な人物でした。 彼に懐いていたフィリミナは訪問を喜びますが、この日男は、一人の少年、エギエディルズを連れてきていました。聞けばフィリミナと同い年だそうで、マントに隠された素顔を見ると、美しい黒髪をしていました。 この世界で髪の色は魔力の強さを表し、黒に近いほど優秀ですが、黒髪を持っているというだけで世間から恐れられてしまいます。当時フィリミナはそんなことを知らず、前世でよく見ていた黒髪に懐かしさを感じ、笑顔で「綺麗ね」と告げるのでした。 始めは人との接触を拒んでいたエギエディルズでしたが、次第に二人は打ち解け、仲を深めます。ある事件がきっかけでフィリミナは背中に傷を負ってしまいますが、それでも二人の絆が途切れることはなく、少年が魔法学院に通うことになった日、「待っていてくれるか」という言葉にフィリミナは頷きます。それが、本人の知らぬところでプロポーズのやりとりとなっていたのでした。
7年後が舞台の不器用なラブストーリー
少年が魔法学院に入ってから、二人は会うことなく7年の月日を過ごします。その間、やりとりは手紙のみでした。 やがて再会の日を迎え、成長した少年はフィリミナの元を訪れます。しかしそこで、楽しみにしていたフィリミナに告げられた最初の一言は、「残念なほどに変わらないな」という毒舌めいたものでした。 エギエディルズに悪口を言った意図はなく、変わらないでいてくれたことの安堵を伝えたつもりでしたが、照れ隠しが強すぎたこと、嫉妬が渦巻く学院で長年過ごし性格が曲がってしまったことなどから、マイナスな言い方をしてしまったのです。 互いに思い合ってはいるのに、なかなか距離を縮められなかったり、予期せぬ魔王復活の兆しが見えたりと多くの障害が発生する中での、二人の恋愛模様が描かれていきます。
魅力的なキャラクターを紹介
本作には主人公のフィリミナと、彼女と関わっていく多くのキャラクターたちがいます。代表的なキャラクターを何人か紹介しましょう。
フィリミナ
王都に住む貴族、アディナ家の第一息女です。3歳の時に前世の記憶を取り戻しており、前世では日本で働くアラサーのOLでした。 7歳の時、エギエディルズと初めて会い、魔法の勉強などを通して仲を深めていました。とある事件で背中に傷を負いましたが、エギエディルズからの申し出で婚約し、7年ぶりに再会を果たします。 笑顔が素敵で人当たりも良く、他人を和ませることが得意ですが、意地っ張りな一面もあり、エギエディルズに意地悪を言ってしまうこともあるようです。
エギエディルズ
強大な魔力を持って生まれてきた少年で、美しい黒髪が特徴です。幼少期、フィリミナの要望に応えようと上位精霊を召喚しましたが、力が暴走した結果精霊の攻撃でフィリミナは怪我を負い、それを後悔していました。 魔法学院で過ごすうち、元々社交的ではなかった性格に拍車がかかり、より捻くれた性格になってしまいました。素直ではなく、つい刺々しい表現で物事を伝えるため、誤解される時もあるようです。 魔王が復活した際は討伐メンバーに選ばれ、フィリミナとはしばしの別れとなりました。意思表示が苦手で不器用なため、フィリミナを心配させる場面も少なくありません。
クレメンティーネ
生まれた時より、女神の加護を受けたと称される王宮の姫君です。圧倒的な美貌と存在感で人気があり、第一王位継承者でもあります。 外見はおしとやかそうな女性ですが、性格は勝ち気でじゃじゃ馬なところがあるようです。 回復魔法が使えるため、魔王復活の際は討伐メンバーの一員として、エギエディルズと共に旅をしました。最初は彼との婚姻も考えていましたが、エギエディルズがフィリミナ一筋だったため身をひいたようです。フィリミナとは良い友人関係を築いています。
ユリファレット
元は片田舎に住む青年でしたが、聖剣による勇者選定の儀に参加したところ、聖剣を引き抜き、勇者として魔王と戦うことになりました。 当初は頼りなく、自分が選ばれたことに不安を感じていましたが、旅をしていく中で、他の人を守りたいという気持ちから勇者としての自覚を深めていったようです。 性格は人懐っこく、人のために行動できる優しい人物です。人と群れようとしないエギエディルズへ積極的に話しかけては、距離を縮めて友達になろうと奮闘します。
恋模様だけじゃない?見どころ
本作の見どころは、一番にフィリミナとエギエディルズの恋愛模様ですが、冒険ファンタジーとしても楽しめます。具体的な注目ポイントを、紹介しましょう。
一筋縄ではいかない恋愛模様
意地っ張りで本音をなかなかさらけ出せないフィリミナと、口下手で皮肉めいた言い方をしてしまうエギエディルズは、互いに好き同士なのですが、距離がなかなか縮まりません。 読者目線では「もどかしい!」と思わず言いたくなるような展開が続きますが、そのモヤモヤ感が程よいスパイスとなり、甘いシーンをより引き立ててくれます。 また、彼らの周りに現れるキャラクターたちも癖が強く、時にはアプローチされてしまう場面もあり、ハラハラしながら読み進める楽しみもあるでしょう。
冒険ものとしても楽しめる
物語は二人の恋愛を軸に進んでいきますが、途中で魔王が復活し、討伐メンバーが結成されるなど、冒険ファンタジーの要素もあります。 魔王軍との手に汗握るバトルシーンや、ピンチに陥ったパーティーがどう切り抜けるかなど、読んでいて目を離せません。
平凡だからこその愛らしさと切ない恋
異世界に転生した主人公といえば、チートスキルを持っていたり、敵を相手に無双したりというイメージが強いかもしれません。しかし本作は、主人公がいたって平凡で、婚約者が最強という珍しい設定です。 普通の異世界転生ものに飽きてしまった人や、恋愛メインのストーリーが好きな人にぜひおすすめしたい作品です。