漫画軍鶏の魅力は?ハードな暴力描写が話題の格闘技モノ

漫画軍鶏の魅力は?ハードな暴力描写が話題の格闘技モノ

闘鶏専用の品種であり、非常に闘争心が強い"軍鶏"というタイトルの通り、本作にはさまざまな闘士たちが登場します。主人公の成嶋亮は、少年院に入ってから結末までの半生を戦いの中で過ごすことになります。そんな荒々しい成嶋 亮の生き様を描いた『軍鶏』という作品を、ぜひ楽しんでみてください。

  • 軍鶏(34)

    少年・青年マンガ
    4.0
    690

    俺は死ぬのか……。バカ兄弟との死闘はついに大詰めを迎える。激闘の末、最後まで立っているのは果たして――? そして、すべての決着がついた時、リョウの前に現れた白い影。これが「終わり」というものなのか。かつて少年Aと呼ばれた男の、永い旅が今終わる――。

    「軍鶏」ってどんな漫画?

    ボクシングや空手をテーマにした漫画は多くありますが、『軍鶏』という漫画はそれらの近代体育的な価値観を持ち合わせておらず、闘争を通じて人間の抱える心の闇や社会への暗黒面切り込んでいく漫画です。 連載開始当初は双葉社の『漫画アクション』に掲載されていましたが、後に講談社の『イブニング』に移籍します。両方の巻数を合わせて全34巻で2015年3月号で最終回を迎えています。 外伝の小説版も刊行されているほか、実際の格闘経験のある俳優を起用した香港・日本合作で映画も作成されている人気作品です。

    「軍鶏」のあらすじ

    主人公の成嶋 亮(なるしま りょう)は最初は気弱な少年でしたが、後に闘士としての道を歩んでいくことになります。普通の少年だったはずのリョウを変えたのはなんだったのでしょうか。序盤のストーリーについて解説します。

    両親を殺害し少年院に送られたリョウ

    物語は主人公の成嶋 亮が少年院搬送されてきたところから始まります。少年院の中でも、リョウは要注意人物でした。それというのも彼が、両親を殺害して一躍メディアを賑わせた"少年A"だったからです。 一見するとリョウは気弱な少年にしか見えません。囚人の一人であるマサに気に入られたリョウは、性奉仕を強要されますが、なんとリョウはマサの性器をかみちぎってしまうのでした。 それ以来彼は、マサと仲が良かったグループから壮絶なイジメを受けることになりました。

    少年院で黒川と出会い空手の鍛錬を始める

    表でも裏でも壮絶なイジメを受けるリョウ。看守たちですら、彼を親を殺した最低の人間だと認識しており、かばおうとはしません。またたくまに体も心も追い詰められていきます。 そんな彼を救ったのは、少年院で空手を教える黒川との出会いでした。リョウは、空手の技術を異常なほどのスピードで身に付けていきます。 危険人物として独房で過ごすことが多くなったリョウは、独房の中でも空手の鍛錬を行います。次第に少年院で彼に敵う者はいなくなっていきました。 1対1で敵わないとなると、複数人でリョウを襲撃したり、ときには武器を持って襲撃したりしてきましたが、リョウはすべて返り討ちにします。また、少年院でのこうした喧嘩に明け暮れた生活は気弱だった彼の性格を一変させ、荒々しく暴力的で、触れれば指先をそぎ落としてしまう鋭いナイフのように変貌させていったのです。

    出所後は裏社会で生きるリョウ

    少年院に入ったばかりの頃は、出所できずに壮絶なイジメと暴力で死ぬだろうと思われていたリョウですが、2年を得て無事に出所します。しかし親殺しという彼の経歴では、まともな職につくことができません。リョウは裏社会で生きていくしか道がなかったのです。 男娼から始まり、後にその腕を買われて用心棒として生きるようになります。彼の心の唯一の拠り所は、唯一の肉親である妹・夏美の存在でした。兄の犯罪によって高校を中退せざるを得なかった夏美は売春婦となっており、リョウは時間があれば妹を探し、手がかりがなければその苛立ちをぶつけるように、さらに喧嘩に明け暮れるようになっていったのです。

    格闘技イベント・リーサルファイトの世界へ

    すさんだ生活を送る中で、リョウはある日、テレビで番竜会空手最強の男・菅原直人が戦っている姿を目にします。そして、自分の空手とのあまりの性質の違いに衝撃を受けるのでした。 リョウにとって、空手とは自分の生命を守り、生きるための手段でしかありませんでした。しかしテレビ画面の向こうにいる直人は空手によって人々から喝采を受け、ヒーローとして君臨していたのです。リョウは直人に対し、次第に憎しみのような感情を抱くようになっていくのでした。 番竜会空手館長・望月謙介との因縁もあり、リョウは菅原が活躍する格闘技イベント・リーサルファイトに出場することになります。その中でリョウは番竜会の空手家たちを次々に破っていき、直人のいる場所へ少しづつ近づいていくのでした。

    「軍鶏」の主要登場人物

    『軍鶏』に出てくる主な登場人物を紹介します。リョウを中心とした登場人物の関係性に迫っていきましょう。

    成嶋 亮(なるしま リョウ)

    本編の主人公です。両親を殺害するという事件で一躍世間を賑わせ、少年院に送られました。元々は気弱な性格でしたが、少年院でのすさんだ生活と空手を通して徐々に凶暴化していき、少年院を出た後は、連日喧嘩に明け暮れて過ごすようになります。 出所後は口調も大きく変わっていて、乱暴な言葉遣いになっていますし、人を傷つけることにもためらいはありません。目的のためなら手段を選ばず、空手であっても平気で反則行為を行ったり、試合外で精神攻撃を仕掛けたりといった卑怯な手も行います。 彼にとって闘争とは生き残ることであり、表の世界で活躍する格闘家たちとは、試合に対する姿勢からして一線を画しているのです。彼の暴力と凶暴性が人の怨みを大きくしていき、彼は次第に裏社会の闇へと落ちていくのでした。

    黒川 健児(くろかわ けんじ)

    少年院の空手の指導者であり、彼自身も犯罪者です。坊主頭の厳つい外見に違わない空手の実力を有していて、元番竜会でトップクラスの実力を誇る空手家でした。その攻め手や流儀はスポーツマンシップとは大きくかけ離れていて、多くの番竜会の空手家たちを畏怖させるほどです。 リョウに対して少年院で空手を教えて人物であり、少年院を出た後も、再び指導者としてリョウと再会を果たします。リョウも黒川に対し悪態をついているも、内心ではその実力を認め尊敬しています。

    菅原 直人(すがわら なおと)

    番竜会空手最強の男であり、リーサルファイトでもトップクラスの人気と実力を誇る空手家です。実直で落ち着いた佇まいで、まるで武士を思わせる雰囲気をまとっています。 空手の達人だった父親を深く敬愛していましたが、その父親は試合中の事故によって寝たきりになってしまい、父親の意志を受け継ぐ形で空手を始めました。 当初はリョウのことは無視していたものの、ある因縁によってリョウに対して深い怨みを抱くようになり、リョウとの対決を熱望します。

    成嶋 夏美(なるしま なつみ)

    リョウの妹です。リョウが起こした事件のせいで高校を中退し、働かざるを得なくなりました。犯罪者の家族であり高校中退という経歴から選べる職業はほとんどなく、売春婦の道を選びます。 少年院を出たリョウと再会した際には、重度の薬物中毒者になっていました。精神と記憶に異常をきたしており、リョウのことすらわからなくなっています。 夏美の人生を狂わせてしまったことにリョウは罪悪感を抱いており、彼女を療養させ、医療費を稼ぐこともリョウの目的の一つとなっています。

    「軍鶏」の魅力

    他の格闘漫画と比べて明らかに異色である『軍鶏』の魅力について解説します。どのような魅力が、読者を『軍鶏』の世界へと誘うのでしょうか。

    ダークサイドに堕ちていく主人公の行く末

    格闘技漫画は多く存在します。その中には、主人公が手のつけられない不良から始まり、格闘技を通して肉体的・精神的に成長していく作品も少なくありません。本作が異質なのは、まさにその点です。 本作は元々は過ちを犯した一般人が、物語が進むごとにダークサイドへと堕ちてきます。人から恨まれ、より過酷でルールのない戦いへと身を投じることになるのです。 はたして主人公はいったい、どこにたどり着くのでしょうか。結末が予想もできないのは、本作の魅力と言えます。

    闇社会を舞台とした独特の世界観

    本作では少年院から始まり、ヤクザに非公式の賭博格闘技など、さまざまな闇社会の中での主人公の立ち回りが描かれています。 その中には主人公の妹のように、麻薬によって人生を転落していった者もいれば、一般社会で暮らすことができなかった社会不適合者、他人を傷つけることに躊躇がない悪人など、闇社会を象徴するようなキャラクターも多く登場するのです。 闇社会を舞台とした背景やキャラクターは、通常の漫画では味わえない魅力を備えています。

    「軍鶏」は格闘漫画の枠を超えたアウトローさも魅力

    闇社会を生きる主人公を描いた本作は、格闘漫画と呼ぶにはあまりに生々しく、ダーティーです。主人公自身も純粋な格闘家ではなく、反則を行ったり、人を傷つけたりするのも厭いません。 本作を読んでいると「なんのために主人公は戦っているのか」と何度も思うことでしょう。その答えは主人公は軍鶏であり、戦うために生まれてきたとしか答えようがありません。 格闘漫画の域を外れたアウトロー作品を、ぜひ読んでみてください。

  • 極厚版『軍鶏』(1~3巻相当)

    少年・青年マンガ
    4.0
    1,238

    【コミック1~3巻分収録】真昼の昼下がり、少年は両親を殺害した。エリート銀行員の父と美しき母の、まとわりつくような愛情が、自分のすべてを吸い尽くすという妄執にかられ、少年は凶行に及んだ。収監された少年院で、少年は「空手」と出会い、その牙と爪を研ぎ続ける。何者にも自分自身を奪われないため、何より、殺されないためにーー。