『ダブル』はドラマ化も決定し、近年注目を浴びている漫画です。1人の天才俳優と1人の凡人俳優が、互いを支えながら厳しい役者という世界で生き抜きます。普段と俳優で全く雰囲気が変わるの演技は、ドラマとその裏を見ているかのようです。『ダブル』のあらすじや登場人物、見どころを紹介します。本作を通して役者の世界に触れてみてください。
「ダブル」はどんな漫画?
『ダブル』は『ふらっとヒーローズ』にて連載されています。2021年5月時点で既刊4巻と、まだ始まったばかりです。しかし、ドラマ化の企画も始まり、『文化庁メディア芸術祭優秀賞』を受賞したという経歴があり、勢いに乗っています。 作者は野田彩子さんです。『わたしの宇宙』『いかづち遠く海が鳴る』などの作品を小学館で連載しています。繊細なタッチと夜空のように美しい独特の世界観がタッチの特徴です。 本作は、2人の無名俳優の表と裏の顔にスポットを当てています。1人は要領の悪い天才、1人は要領の良い秀才といった様子です。2人の今後の活躍や関係性に注目したい作品です。
「ダブル」のあらすじ
本作のあらすじについて、物語の起点となる1巻を中心に紹介します。2人の俳優の立ち位置や、作品のコンセプトの把握に役立ててください。
同じアパートに住む2人の役者
宝田 多家良(たからだ たから)と鴨島 友仁(かもしま ゆうじん)、2人は同じ劇団に所属する俳優同士であり、安アパートの隣人でもあります。多家良は私生活については非常にだらしなく、起床、仕事のスケジュールなどの管理を放棄しています。そんな多家良に変わって彼の生活を管理しているのが友仁です。 スケジュール管理だけでなく、朝起こしに来る、荷物の整理、台本の読み合わせなど、仕事や私生活に関することをすべてサポートしてくれています。
多家良が芸能事務所にスカウトされる
そんなある日、多家良の舞台を見たことをきっかけに、芸能事務所が多家良をスカウトします。契約のために多家良は芸能事務所に呼び出されますがそこにも友仁はついていきます。 契約周りの確認や多家良の意思確認などをすべてこなす友仁。その面倒見の良さに、友仁は芸能事務所の人からは多家良のマネージャーと勘違いされるほどです。 劇団で自由に演技ができればいいという多家良ですが、友仁は多家良が貪欲に上を目指すよう激励します。紆余曲折を経て、多家良の芸能事務所入りが決定します。多家良は本格的に俳優としての道を踏み出すのでした。
初仕事がうまくいかない多家良
芸能事務所入りした直後、最初の仕事が決まります。ナイトドラマのゲストです。 多家良は早速現場入りします。 そして撮影が始まりましたが、多家良は何度も演技にNGを出されてしまいます。監督の若松の演出と全くそりが合わないためです。バラエティ班出身の若松は、ドラマの原作に全く合わない表情や演技を要求したため、多家良は自分の役のイメージが全く掴めなくなってしまったのです。現場から多家良は逃げだそうとします。 多家良は、友仁に電話します。友仁のアドバイスを電話で受けた多家良の演技は豹変。監督から一発OKをもらうところか高評価を受けました。
次第に認められていく多家良
多家良は天才型の役者で、現場に大きな影響を及ぼします。見る人を魅了し、アドリブの演出でも「その方がいい」と演出家になつかせてしまう説得力を持っているのです。多家良が仕事をするたびに、彼を認める人が増えていきます。 多家良は役者としてどこまで駆け上がることができるでしょうか。今後の展開に注目です。
「ダブル」の登場人物
『ダブル』に登場するキャラクターを紹介します。2人の主人公と、彼らを取り巻く俳優や監督について、把握してみてください。
宝田 多家良(たからだ たから)
本作の主人公の1人です。 劇団"英雄"に所属している役者で、映画のゲストや舞台俳優などの仕事をこなしながら日々を送っています。 生活に関してはだめで、家事全般に料理、はては自分の仕事のスケジュール管理までも、アパートの隣人であり友人の友仁に丸投げしているという状況です。生活能力・社会適応性が低く、傍から見ているとどうやって今まで生きてこれたのかが不思議でなりません。 そんな彼にも特別な才能がありました。それは役者としての才能です。役に入り込んだ多家良は、まるでその役者として生きてきたかのような迫真の名演を見せ、人々を魅了します。彼自身、イメージトレーニングで過去を追体験してしまうほど、その役になりきってしまうのです。 そんな才能を持ちながらも仕事や名声に関しての欲はなく、ただ劇団で楽しく演技ができれば良いと考えています。
鴨島 友仁(かもしま ゆうじん)
多家良と同じ劇団に所属している俳優仲間であり、同じアパートの隣人でもあります。生活能力がない多家良の面倒を見ています。まるで夫婦以上に世話を焼いており、初対面の人から多家良のマネージャーと勘違いされるほどです。 多家良の役者としての才能を見いだし、彼が世界一の俳優になることにかけています。 多家良とは違い生活能力もあり、器用に立ち回れるタイプです。多家良の仕事の演技プランや演出まで干渉し、多家良の代役として演出に口を出すこともあります。 多家良の才能を認めつつも、自分もまた世界一の俳優になることを目指しています。俳優としての実力は未知数ですが、多家良が友仁の演技に影響されていると言っていおり、実力が確かなことはうかがえます。
冷田一恵(つめた かずえ)
フラット芸能事務所の女性マネージャーであり、多家良を事務所にスカウトした人物です。多家良の舞台を見て、多家良の演技に惚れ込み、声をかけました。できる女性という雰囲気で、多家良が事務所に入ってからは多家良のマネジメントをこなしています。 多家良を採用した理由を直感ではなくきちんと説明できる点からも、論理的で頭が良い、仕事ができる女性であることがうかがえます。多家良をもっと多くの人の前で見てもらいたいと、心から思っている様子です。
轟 九十九(とどろき つくも)
多家良が最初の仕事で共演した、若手の俳優です。バイオレンス映画の常連ということで、骨太な演技をします。後輩の面倒見がよく、言いたいことはストレートに言うタイプです。 現場のことをよく知っていて、多家良にアドバイスもしてくれます。
若松明男(わかまつ あきお)
多家良が最初に出演したドラマの監督です。元々はバラエティ班でしたが、演出の腕を買われて初めてドラマに抜擢されました。そのためとてもはりきっているのですが、周りから見ていると空回りしている様子です。 良いものより売れるものを作ろうと、シリアスな台本に変顔などの奇抜な演出を入れようとしていましたが、多家良の演技を見て、本当に良いドラマをとりたいと思うようになります。多家良のことを序盤で認めた人物でもあります。
「ダブル」の面白いポイントは
『ダブル』を読む上での見どころを紹介します。なぜ今作が注目されているのかを見ていきましょう。
役者を肌で感じる
本作はとても"役者"に力を入れています。一部のトップに君臨する才気あふれる俳優ばかりではなく、それよりも下にいる、貧しくても役者活動をやめられない人達も大勢登場します。 ようやくチャンスを掴んだ演出家に、小さな芸能事務所の社長、打ち上げの飲み会など、舞台上の役者だけでなく、プライベートも含めた役者を肌で感じることができるのは今作のポイントです。
天才的な多家良の演技シーン
多家良が役に入り込んで演じるシーンは、圧巻の一言です。普段はマイペースでだらしない多家良ですが、役に入ったとたん、その役者になりきって、まるで別の人格のようになってしまいます。 罪悪感に苛まれる犯人の苦しむ顔、皮肉なキャラが道化師を演じる様子など、本当に別人の魂が入り込んだ様子です。その描写を見れば、「多家良は天才だ」という友仁の評価も納得できてしまいます。
2人の役者、舞台の光と影
本作は2人の俳優、それぞれの生き方を描いています。演じることがすべての不器用な多家良と、そんな多家良を支える器用な友仁の関係は、今後どうなっていくのでしょうか。 ドラマ化も決まり勢いのある作品です。役者という仕事の深さを、ぜひ味わってみてください。