ヤクザの若頭、八代とその周りの人々の人間模様を描いたBLマンガ、『囀る鳥は羽ばたかない』をご存じでしょうか?BLとしては非常に多くのキャラクターが登場し、物語を彩ります。本作の見どころを、登場人物の紹介と併せて紹介します。
「囀る鳥は羽ばたかない」あらすじ
ヤクザの世界を舞台に、複雑な人間模様が描かれるのが本作「囀る鳥は羽ばたかない」です。序盤の展開を、簡単に説明していきましょう。
付き人兼用心棒の百目鬼に引かれる矢代
八代は、真誠会に属するヤクザで若頭です。そんな八代の元にある日、一人の男が連れてこられました。男は百目鬼という名で、刑務所から出たばかりだと言います。 最初は金貸しの方に引き取られていましたが、頭と口が回らないという理由で、組の用心棒に推薦されました。八代は百目鬼のことを付き人兼用心棒として招き入れることになります。 最初から百目鬼の目に惹かれていた八代ですが、百目鬼もまた、八代を初めて見た時から綺麗だと感じていたようです。
しかし百目鬼には応えられない理由が
八代と百目鬼は互いに惹かれるものを感じながら、行為になかなか及びません。それは、百目鬼の事情が深く関係していました。 百目鬼は過去のある事件により、男として役に立たない状態、つまり不能になっていたのです。 それを聞かされながらも、八代は百目鬼のものを愛でようとしますが、二人の周りには八代をかつて愛でていた男や、百目鬼の妹なども現れ、物語はより複雑になっていくのでした。
BLマンガには珍しい豊富な登場人物
重厚なストーリーを生み出すため、多くのキャラクターが登場しているのが本作の特徴です。それらの中から一部を紹介しましょう。
矢代(やしろ)
真誠会という組織で若頭を務めるヤクザの男性です。美しい容姿を持ち、さらに頭の回転も早いため、人を惹きつける魅力があります。 小さい頃の出来事がきっかけで、マゾな性質と男好きの性質を併せ持つようになりました。 性格は飄々としていて人を食ったような態度を取ることが多く、一見マゾには思えないような言動を取っています。しかしプレイ中は激しく乱れ、虐げられることに快感を覚えるなど相当なマゾを発揮します。
百目鬼力(どうめき ちから)
八代の組織に用心棒として務めている、体格の良い男性です。八代の付き人としても行動し、彼に付き従います。 基本的には口数少なく、感情を表に出すことは多くありません。しかし八代を綺麗だと言い、それを告げた時は耳が赤くなるなどの一面も持っているようです。 小さい頃のある事件がきっかけで不能となり、八代の要望に応えられないでいます。妹がおり、彼女に対しては感情を出すこともあるようです。
影山莞爾(かげやま かんじ)
八代の学生時代の同級生で、いわゆる腐れ縁です。現在は医師として、ヤクザが負った怪我の手当てなどを行っています。ただし専門分野は内科です。 火傷や傷の縫い跡に性的興奮を覚えるというフェチズムを持っており、お腹に火傷跡のある久我とはただならぬ仲になっています。 二人を引き合わせたのは八代でしたが、八代自身、影山に惹かれていた部分があり、あえて二人をくっつかせたようです。そこには八代なりに平静な気持ちを保つための思惑がありました。
久我瑛心(くが えいしん)
施設で育った、素行の悪い青年で、鋭い目つきが特徴です。八代がそのぎらついた雰囲気に興味を持ち、組へとスカウトしますが何度も断られています。 とある出来事がきっかけで、八代は久我の面倒を影山に見させることとなり、共に暮らしているようです。書籍には本編第一話の前に、影山と久我が中心のエピソードが収録されています。
三角隆仁(みすみ たかひと)
真誠会の元組長で、現在はその上の組織である道心会の若頭を務めている男性です。八代を組に入れた人物であり、現在は凶暴な面を出すことは多くありませんが、当時は「鬼人のようだった」と恐れられていました。 八代が組に入る前から気にかけていましたが、今も彼を気にかけ、側に置こうとしています。八代とは1年ほど愛人のような関係にありましたが、今は舎弟関係に近い状態です。
竜崎篤士(りゅうざき あつし)
道心会の下部組織、松原会の組長を務める男性です。八代とは親元が同じ兄弟分にあたります。 口が悪く、性格も荒っぽいため八代と度々衝突を繰り返しているようです。かつて組員たちが八代を辱めた際、竜崎もそこに加わっており、ただのライバル関係というよりはもう少し複雑な何かがあるようです。
平田和明(ひらた かずあき)
真誠会の組長を務める男性で、三角のことを慕っています。それゆえ、三角から気に入られている八代に対して微妙な感情を抱いているようです。 出世欲があり、八代がいずれ自分を出し抜いていくのでは、と恐れているような描写もあります。
七原祐輔(ななはら ゆうすけ)
八代の舎弟として組に在籍しているヤクザです。百目鬼の兄貴分にあたり、彼にヤクザの基本を教えます。 八代の性癖については、どぎついと評しながらも耐性がついているようで、機会があればお願いしたいくらいには思っているとも発言しています。 周りからは腕っぷしがよいと言われており、ある程度信頼もされているようです。
天羽静真(あもう しずま)
三角の付き人として組に務めている男性です。感情をあまり表に出さず、敬語で話す大人しい性格です。三角とは長い付き合いのためか、立場は付き人ですが小言を口にしたりと、深い関係性が覗えます。 当然、三角や組のことを思っての口出しですが、昔は八代から「口うるさい女房みたいだ」とからかわれることもありました。
杉本隼人(すぎもと はやと)
八代の組に在籍するヤクザで、百目鬼にとっては兄貴分にあたります。七原の弟分であり、七原を兄貴と呼び慕っているようです。 八代や七原が時折起こす無茶な行動や激しい行動に、戸惑ったり怯んだりとさまざまなリアクションを見せています。
かっこいいだけじゃない?作品の見どころ
本作の見どころは、極道としての人間ドラマです。また、登場人物の繊細な心の動きも見どころでしょう。それらについて説明していきます。
リアルな極道の世界観
極道の世界観ならではの、組内抗争や一般人との線引き、血なまぐさい権力争いがリアルに描かれています。 主人公の八代も、容姿端麗・頭脳明晰でありながら完璧な人間ではなく、時には銃で撃たれたりする場面もあるため、ご都合主義ではない生々しさを味わえるでしょう。
従順な極道の主従関係
極道の世界は、兄弟としての関係性が非常に重要です。上の者はなめられないよう振る舞わなければいけませんし、下の者は上の命令を無視することができません。 そんな厳密な主従関係がしっかり描かれており、決して覆ることのない上下関係の中でもがくキャラクターたちの人間模様には、ハラハラさせられることでしょう。
矢代の抱える自己矛盾
八代は、ヤクザの若頭という立場でありながら、マゾな一面も持っているキャラクターです。また、学生時代には、影山との関係性に悩み、もがいていたこともありました。 マゾなのに、影山に対しては普通に欲情してしまっている自分や、拒まれたら容易に傷ついてしまう自分を想像しては、歪な気持ちだと矛盾に苛まれます。そんな八代の心の機微も、本作の見どころの一つでしょう。
求めあう繊細な心の動きに目が離せない!
『囀る鳥は羽ばたかない』は、本格的な極道のマンガでありながら、人間同士の複雑で微妙な関係性を描いた人気作です。 BL作品という一言では括れない魅力が詰まっていますので、まだ読んでいない人はぜひ手にとってみてはいかがでしょうか?