『恋と嘘』は、高校生の男女が織りなす恋愛模様を描く学園ラブコメディです。舞台は一見現代日本のようですが、実はやや特殊な近未来の環境です。作品の概要、序盤のあらすじ、そして主要な登場人物4人についても解説します。
恋と嘘(11)
少年・青年マンガ「嘘」は許されない。「恋」はもっと許されない。すこし未来。日本では16歳になると、政府から結婚相手が指名される世の中になっていた。根島由佳吏15歳は、日本の片隅に住む、うだつの上がらない少年。成績もスポーツも中の下。だがしかし、その胸に燃えるような恋心を秘めていた! 恋が許されない世界で、誰かを好きになってしまった少年の運命は‥‥!? 想うことは、止められない。塞いだとしてもどこからか溢れてくる。恋と呼ばれるこの感情に人は輝き、惑い、痛みを知る。そんな想いと同時に明かすことのできない秘密を抱える少女、高崎美咲。どうしても欲しいもののためにある取引をしたという彼女の、その言葉の真意とは…。それぞれの思惑が交錯する中で物語は、ひとりの少女の初恋に遡る。
マンガ「恋と嘘」のあらすじ
『恋と嘘』は、ムサヲさん作の青春純愛マンガです。2014年にiOS・Android用マンガ雑誌アプリにて連載を開始し、2021年6月現在もまだストーリーは完結していません。 "恋嘘"の愛称で親しまれており、2020年3月には累計発行部数が250万部を超えるほどの人気作です。2017年にはテレビアニメ化・実写映画化もされました。 まずは序盤あらすじをざっくりと追ってみましょう。
国が結婚相手を決める近未来が舞台
『恋と嘘』の舞台は近未来の日本です。そこでは"超・少子化対策基本法(通称ゆかり法)"が施行されています。 "ゆかり法"とは、国民一人ずつの遺伝子情報をベースに、国が最良の結婚相手をマッチングする政策です。16歳になると、カップリングされた相手の情報が国から通知(政府通知)されます。 そしていったん政府通知を受け取ると、自由恋愛が禁止となるのです。 高校1年生の根島由佳吏(ねじまゆかり)は、同じクラス高崎美咲(たかさきみさき)に5年間片思いしていました。 まもなく16歳の誕生日を迎えるにあたり、「恋がしたい」「美咲に気持ちを打ち明けたい」強く思うようになります。
根島は16歳になる前に片思いの美咲に告白
16歳の誕生日を迎える前日、根島は思い切って美咲に話しかけます。自己紹介しても、美咲は根島を全く覚えていませんでした。根島はショックを受けながらも、「夕方6時に小学校裏の公園に来てほしい」と伝えます。 夕方、根島は公園で美咲を待ちますが、10時半を回っても現れません。あきらめて帰ろうとしたところ後ろから服をつかまれ振り向くと、それは美咲でした。 「好きです」と。根島は美咲に告白します。すると美咲は涙ぐみ、ポケットから半分の消しゴムを取り出したのです。それは昔、根島が美咲にあげたものでした。 5年間お互いに思い合っていたことを知り、根島は思わず美咲を抱きしめます。そして2人はキスを交わすのでした。
別の相手が結婚相手として通知される
キスの後2人が見つめ合っていると、突然根島の携帯電話が鳴ります。それは政府通知でした。日付が変わり根島が16歳となったため、政府が選んだ結婚相手の情報が送られてきたのです。そこには美咲の名前がありました。 「奇跡だ」そう喜んだのも束の間、突然携帯の画面が真っ暗になり途切れます。焦る根島の元に現れたのは、厚生労働省のスタッフ・一条と矢嶋でした。 根島は2人から政府通知の書類を受け取ります。しかし書類に掲載されている結婚相手は、美咲ではない別の女性の名前でした。 根島は驚き戸惑いながらも、「2人の今後について美咲とよく話し合おう」と考えます。
政府通知の相手・莉々奈とのお見合いへ
告白をした夜から4日後、根島と政府通知の相手とのお見合いがセッティングされました。あれ以降美咲と話す機会が持てなかった根島は、当日お見合いをすっぽかすつもりで学校へ行くのでした。 お見合いを「バックれてきた」という根島にクラスメイトは騒然となり、先生も両親へ連絡を取ります。 それでもなお逃げようとする根島に、美咲は冷たく「『思い出にしよう』って言ったの」「こんな風にされると、とても迷惑」と言い放つのでした。 ショックで呆然自失状態のまま、根島は結局お見合いに参加します。そこで政府通知の相手・真田莉々奈(さなだりりな)と初めて対面するのです。
「恋と嘘」の主要登場人物
ここでは『恋と嘘』のストーリーの中核をなす4人のキャラクターを紹介します。 主人公・根島は、ルックスも頭脳もいたって平凡で、存在感も薄い"モブキャラ"的な設定です。 しかし、丁寧なセリフ回しと緻密な心情描写は読み手を引き込み、癖の強い他のキャラクターとの関係性からも目が離せなくなってしまいます。
根島由佳吏
主人公の高校1年生男子です。連載開始時は15歳でしたが、その後すぐに16歳の誕生日を迎えます。 ルックスや成績などは平凡、趣味は"古墳"という地味で内気なフツメンです。友達からは"ネジ"と呼ばれています。 不器用で天然、優柔不断な面も多々見受けられ、自分に対しても自信を持てませんしかし穏やかで真面目、また非常に優しい性格です。底抜けにお人好しで、人のために一生懸命な姿がつい応援したくなるキャラクターです。 クラスメイトの高崎美咲とは小学校5年生のときにも同じクラスで、席も隣同士でした。それ以来、美咲にずっと片思いしています。
高崎美咲
本作のヒロインで、根島のクラスメイトです。清楚な黒髪のセミロングボブスタイルで、巨乳の持ち主でもあります。 美少女であるうえ明るくさっぱりした性格なので、男子生徒からの人気も抜群です。 小学校5年生のときから、実は密かに根島のことを思い続けていました。根島に告白されたときに、初めて自分の気持ちを打ち明けます。 しかし自分の思いについて、「本当は一生誰にも言うつもりがなかった」と意味深な発言をしていることなどから、何か大きな秘密や悩みを持っているようです。
真田莉々奈
女子高"理城学院"に通う高校2年生の女の子です。根島や美咲より1学年上になります。 人形のようにかわいく、長いツインテールが特徴です。頭脳明晰で、県内トップクラスの私立高で首席をキープしています。 しかし実は人付き合いが苦手だったり、率直な物言いをしたりすることから、友達ができず学内でも孤立しているのでした。 ゆかり法に基づき、根島とは将来の結婚相手として出会いますが、根島に美咲への思いを打ち明けられてからは2人の恋を応援しようとします。恋愛に対しては非常にウブで不器用です。
仁坂悠介
根島や美咲のクラスメイトで、女子生徒からモテモテのイケメンです。クラスで一目置かれている立場ながら、根島たち地味メングループと仲良くしており、根島には「何を考えてるかわからない」と思われています。 実は、根島に対して恋心を抱いていおり、教室で寝ている根島にこっそりキスをするシーンで、その秘密が明らかにされます。 美咲に対して、ときどき挑発的な態度をとります。美咲を恋敵と見ているからなのか、あるいは2人には何か明かされていない因縁があるのか、今後明らかになるかもしれません。
「恋と嘘」の注目ポイント
最後は『恋と噓』の見どころについて、2つのポイントから分析してみます。 主要な登場人物の相関関係、またそれぞれの思いについてよく理解しておくと、物語の面白さや各シーンの臨場感をより実感できるのではないでしょうか。
登場人物の複雑な関係性
ストーリーの中核をなすのは、主人公を中心とした複雑な四角関係です。 根島と美咲は、お互いに思い合っていることを知らずに、5年間もそれぞれ相手を遠くから見つめ合うだけでした。 やっと根島と美咲が心を打ち明け合った途端に、"ゆかり法"によって国が決めた結婚相手である莉々奈と出会い、状況が変わりはじめます。 そしてそこにさらにBL的要素が加わり、根島に密かに思いを寄せる仁坂も絡んでくるのです。 また普通は恋敵同士は敵対関係にあることが多いものの、この物語では美咲と莉々奈は友達になるためさらに状況は複雑になります。
切ない恋の行方が気になる
『恋と嘘』では、一つひとつのセリフや表情、心理描写がとても丁寧に描かれおり、読者は各登場人物への感情移入がしやすくなっています。 5年前に恋に落ちるきっかけとなった消しゴムを根島と美咲がそれぞれ大切に持っていたり、美咲が根島の"つむじ"について熱く語ったり、"初恋あるある"なエピソードがピュアで切なくてクスっと笑えます。 また莉々奈の根島に惹かれる気持ちと、根島と美咲の恋を応援したい気持ちのジレンマにも、やるせなさを感じるでしょう。 それぞれの切ない思いがヒシヒシ伝わってくるだけに、読者が恋の行方に夢中になってしまうのも無理はないといえます。
「恋と嘘」は複雑な恋模様を描いたラブコメ
『恋と嘘』は、国が決めた相手との結婚が求められ、自由恋愛が禁止されている近未来の世界で繰り広げられる青春ラブコメディです。 主人公と2人のヒロイン、そしてそこにBL要素も加わった4角関係が話の軸となります。 主要登場人物は全員健気なよい子ばかりで、明確な"ヴィラン"がいないだけに、全員がハッピーになってほしいと願う読者も多いのではないでしょうか。 「恋の行方、またストーリーの落としどころは?」と結末をあれこれ想像しながら読み進めるのも楽しいかもしれません。