異世界居酒屋「のぶ」とはどんなマンガ？あらすじと見どころを紹介

異世界に日本の居酒屋が出現するという、変わった設定が本作の特徴です。序盤の展開を、簡単に紹介していきましょう。

物語の舞台は、異世界にあるアイテーリアという都です。城壁に囲まれたアイテーリアの食文化は、あまり美味しくないお酒や芋類が中心で、食材も新鮮なものが少ないなど、上質な環境とはお世辞にも言えませんでした。 そんな古都に出現した居酒屋は、日本でよく見る和風の居酒屋です。雰囲気的に場違いなその居酒屋は「のぶ」という店名で、傭兵たちの間でちょっとした話題になっていました。 ある日、傭兵のニコラウスが仲間のハンスを連れて来店したところから物語は始まります。ハンスは見慣れない外観や内装、メニューに戸惑いつつも、ニコラウスに勧められるがまま食事をし、その美味しさに驚くのでした。 そうしてニコラウスやハンス、ほかの住人たちが居酒屋の評判を広めていくうちに、客が増えていくという展開です。

その後も居酒屋のぶには、ハンスの上司である中隊長や、街で税の仕事に携わる男性、わがままな令嬢、教会の助祭など様々な人物が訪れます。 彼らはそれぞれに悩みや事情を抱えていることが多く、居酒屋のぶの料理や接客を通して、心のモヤモヤを晴らしていきます。 さらに、ハンスは店に顔を出して以降、のぶで働く女性、しのぶに好意を抱いているようで、そのあたりの人間ドラマも見逃せません。

居酒屋のぶで働く側のキャラクターや、店を訪れる側のキャラクター、どちらも魅力的な人物が多いです。その中から一部を紹介しましょう。

居酒屋のぶで働く看板娘です。性格は明るく、笑顔と元気な接客で客からの評判も上々です。 まかない飯を自分で作ることもあり、信之には及ばないながらも美味しい料理を作ることができます。なお、好物はキスの天ぷらです。 元の世界では、実家絡みで何か問題を抱えているようですが、物語が進むにつれ徐々に明らかになっていきます。

居酒屋のぶの店主で、開店中に出している料理は基本的に彼が振る舞っています。異世界の客からは「タイショー」と呼ばれ親しまれているようです。 客思いで優しく、温和な性格ですが、料理に関することになると、負けず嫌いな一面を表に出すこともあります。 自分の店の料理で、客が幸せそうにしている様子を見るのが好きで、その瞬間は自分でも気付かぬほど、柔らかい表情になっています。

異世界の住人で、小さな女の子です。居酒屋のぶの店内にあった蛇口から、水が出ているのを見て、飢えからそれを盗もうとしたところをしのぶに見つかりました。 罪を自白し償おうとしたエーファでしたが、しのぶが事情を察して庇ったため、お店でアルバイトとして働くことになりました。 その後は真面目にお店で働きつつ、まかないを食べる時の可愛らしい仕草でしのぶや信之を和ませているようです。

異世界で衛兵として働く青年です。ニコラウスに誘われたことがきっかけで居酒屋のぶに来店し、あまりにも料理が美味しかったことから、常連となりました。 来店前は「食べ飽きた」と芋を嫌っていましたが、居酒屋のぶで美味しく調理された芋料理を食べてからは、芋が好物になったようです。なおサトイモが特にお気に入りです。 初めて店を訪れた時からしのぶのことが気になっており、時折彼女を見つめては照れた表情を浮かべ、それをニコラウスにからかわれています。

ハンスと同じ異世界の衛兵で、年はハンスより1つ上です。いつまで自分は衛兵の仕事ができるのかと思い悩むこともありますが、人前でそういった弱味はあまり見せず、明るく振る舞っています。 ハンスに居酒屋のぶを教え、常連にさせた人物でもあり、自身も常連の一人です。お気に入りは熱燗で、おでんを出された際はハンスに同じものを勧め、彼も気に入ったようです。

ハンスやニコラウスの上司にあたる存在で、衛兵の中隊長として登場する男性です。最初は店の評価をあまり信じていませんでしたが、実際に居酒屋のぶの料理を食し、常連になりました。 鶏肉料理が好きで、最初に店を訪れた際は、美味しい鶏肉がアイテーリアで調達できないことを知りながら注文する、という好戦的な態度を取っていました。 しかし、そこで出された鶏の唐揚げはベルトホルトを感動させ、以降はすっかり常連となっています。

美味しそうな料理、人間ドラマなど、本作の見どころは多くあります。それらについて、簡単に説明していきましょう。

居酒屋のぶで出される料理は、日本人なら大抵食べたことのあるものばかりで、目新しいものはありません。 しかし、異世界の住人にとってはどれも珍しく、冷えた生ビールでさえ「酒を冷やして飲む！？」というようなリアクションを見せます。 当然、出される料理の一品一品も食べたことのないものばかりのため、異世界の人々はあっという間に虜になっていくのです。

たとえばわがままな令嬢が来店した際は、「臭くも辛くも酸っぱくも苦くもなく、パンでも芋でも粥でも卵でもシチューでもないもの」と人を試すような、いじわるな注文が入ります。 そんな令嬢に居酒屋のぶが振る舞ったのは、客の前で火を使う鍋料理でした。いつもは毒味が済んでからの食事のため、冷えた料理しか食べていなかった令嬢は鍋料理に感動します。 味わったことがなく、それでいて美味しい料理に、令嬢は久しぶりの笑顔を見せます。その様子を見た叔父が安心するという、心温まるお話があるのも見どころです。

居酒屋のぶは、元々京都にあるお店でした。それがどういうわけか異世界とつながってしまったのですが、物語が進むと、異世界の住人が元の世界に迷い込んでしまう事件なども起きます。 そこで神の使いやお供え物などのエピソードも登場し、異世界と現代日本との文化の違いに驚く住人たちの様子も、面白く読むことができるでしょう。

本作は、ドラマ化・アニメ化もされています。それ以外にも派生作品がありますので、まとめて紹介します。

本作のスピンオフとして、エーファが主役のお話『異世界居酒屋「のぶ」エーファとまかないおやつ』があります。 開店前のお店を舞台に、エーファとしのぶがおやつを食べては満足するという、ほんわか系ショートストーリーです。2021年6月時点で、単行本が4巻まで発売されています。

2020年には、実写版としてドラマ化もされました。放送は全10回です。しのぶ役を武田玲奈（たけだ れな）さん、大将の信之を大谷亮平（おおたに りょうへい）さんが演じました。 お笑いコンビ、品川庄司の品川さんが監督・脚本を務めたことも話題になり、ほかにも数人のお笑い芸人が出演していました。

2018年からはアニメ化もされ、各種配信サイトでも配信されています。しのぶの声は三森すずこ（みもり すずこ）さん、信之の声は杉田智和（すぎた ともかず）さんが演じ好評でした。 主題歌を歌ったのはクラムボンさんで、『Prosit!』という楽曲です。後に、Blu-rayボックスがクラウドファンディング形式で受注制作されました。

居酒屋のぶで登場する料理の数々は、異世界住人の新鮮なリアクションもあって、どれも美味しそうに映ります。 読んでいるうちに居酒屋メニューが食べたくなってくること間違いなしの『居酒屋のぶ』、まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。