本格的なオメガバースを描いたBLマンガ『嫌いでいさせて』の魅力について、あらすじやキャラクターを紹介します。オメガの苦しみやシングルマザーとしての葛藤、かわいい子どもやスパダリ系年下アルファなど、見どころ満載なこの作品をチェックしてみましょう。
「嫌いでいさせて」のあらすじ
ひじきさんの描く『嫌いでいさせて』は、大人気のオメガバースBL作品です。オメガバースとは、男性・女性という性別の他に、優秀な遺伝子をもつ最上位の階級"α(アルファ)"や、一般的で多数存在する"β(ベータ)"、男性でも妊娠や出産が可能な"Ω(オメガ)"という性別が登場する設定を指します。 『嫌いでいさせて』では、オメガでシングルマザーとして生きる男性と、アルファである年下男子の恋愛を描いた作品です。王道オメガバース作品とも呼べる本作品について、まずは簡単なあらすじを紹介します。
意図しない婚活パーティーでの出会い
オメガの古賀雫斗は、シングルマザーとして娘を育てていました。娘のしずくは幼稚園に通う5歳児ながら、朝食の準備ができるほど利発な子どもです。 しっかり者でかわいい娘との生活は、雫斗にとってかけがえのない幸せな時間ですが、幸せというだけでは暮らしていけません。1人でしずくを育てて暮らしていくために、雫斗は必死で仕事を探していました。 "ヒート"という発情期があり、アルファやベータを誘惑してしまう体質のオメガは、面接でも門前払いをされてしまうのです。オメガというだけで就職が難しいことにもへこたれない雫斗を案じた母親は、婚活パーティーへ行くように促します。 "番(つがい)"を見つけたほうがいい、という母の言葉に促された雫斗は、「番なんかいらないのに」と期待せずにパーティーに参加しました。そして、意図しない婚活パーティーで「あんたは俺の運命の番だ」と断言するアルファの少年に出会うのです。
新しい仕事先で少年と再び出会う
学生時代、アルファの先輩に無理矢理襲われた経験がある雫斗は、アルファに対して恐怖を感じていました。少年に掴まれた腕を振りほどきその場を逃げ出した雫斗は、「番なんていなくても俺一人でしずくを守る」と決意するのです。 それから2日後、雫斗は高校の用務員として働くことが決まります。オメガということから不採用になる予定でしたが、オメガの番をもつ用務員の木村が、雫斗を推薦してくれたのです。 オメガの生きにくさや苦労を理解している木村は、「一緒に頑張ろう」と雫斗を励まします。そんな木村の言葉にやる気をもらった雫斗でしたが、仕事中に声をかけてきた生徒が婚活パーティーの会場で出会ったアルファの少年だったのです。 雫斗に気付くなり「好きだ」と告白してきたのは、この高校に通う2年生の土屋葉月でした。「子どもにもあんたにも好きになってもらえるように努力する」と語る葉月は、直感で雫斗が自分の運命の番なのだと感じたのです。 こうしてアルファにトラウマのあるシングルマザーの雫斗と、そんな彼を一目で運命の番だと感じたアルファの少年・葉月の恋が始まるのでした。
主要キャラクター紹介
オメガとしてつらい人生を歩みながらも、懸命に子どもを育てる主人公・雫斗や、そんな彼に真っすぐな思いをぶつけるアルファの葉月など、本作品には魅力的なキャラクターが登場します。BLマンガですが、子どもが登場するところも見逃せないポイントでしょう。 主人公カップルやその子どもたちなど、『嫌いでいさせて』の主要な登場人物を紹介します。
古賀 雫斗(こが なおと)
雫斗は、シングルマザーとして娘のしずくを育てている21歳のオメガ男性です。学生時代にアルファの先輩からレイプされた経験があり、心に深い傷を負っています。 オメガということが原因で職が見つからず苦労しながらも、自分の力で娘を守ろうと考えています。アルファへのトラウマから"アルファなんていらない、番は作らない"と考え、1人で頑張ろうとする立派な母親です。 高校の用務員に採用されて働くことになりますが、そこで葉月に再会します。そしてオメガの苦悩を理解して、自分を守ろうとしてくれる彼に少しずつ惹かれていくのです。
土屋 葉月(つちや はづき)
葉月は17歳の高校2年生で、アルファの男性です。母親が経営する大企業の跡取り息子で、婚活パーティーのバイト中に雫斗と出会います。 初めて出会ったときから雫斗を自分の運命の番だと断言し、再会してからも正面から思いをぶつけてくる真っすぐな青年です。雫斗のフェロモン香を嗅いでも本能に逆らい、腕を噛んで我慢をします。 真剣に雫斗を思っているため、彼と娘のしずくに好かれるために頑張りたいと宣言するのです。男らしい性格のスパダリ攻めで、雫斗よりも年下ですが包容力があります。
古賀 しずく(こが しずく)
しずくは、雫斗の一人娘で幼稚園児です。雫斗が学生時代にアルファから受けたレイプ被害によって身ごもった子どもで、父親が誰かは分かりません。 5歳児ですが朝食の準備をして雫斗を起こしたり、チャイルドシートに座っているのに"女の勘"という言葉を使ったりと、年齢よりも大人びた一面があります。雫斗の事情を心配して気を使うなど、母親思いで優しい少女です。 葉月に対して最初は警戒していますが、彼が真剣に雫斗を思っていることを理解すると2人のキューピッド役として活躍します。
古賀 湊(こが みなと)
湊は『嫌いでいさせて』の2巻に登場する、雫斗と葉月の息子です。元気でかわいい0歳児で、よく泣きます。 2巻の時点では成長したしずくがよく面倒を見ていますが、湊はまだまだ手のかかる第2子です。嫌いな食べ物は葉月が食べてくれるなど、家族に愛されている様子が伺えます。
「嫌いでいさせて」の見どころをチェック
オメガバースらしい世界観と、切ない感情の揺れが描かれている『嫌いでいさせて』ですが、どのような見どころがあるのでしょうか。本作品の魅力について、ぜひ読んでもらいたいおすすめのポイントを紹介します。
子どもたちのかわいらしさ
男性でも子どもを産めるというのがオメガバースの特徴ですが、『嫌いでいさせて』にもその設定が取り入れられています。主人公・雫斗の一人娘であるしずくの存在が、この作品の大きな魅力の一つでしょう。 しずくは幼稚園児ですが、大好きな"ママ"である雫斗のことを心配しています。母親がオメガということで幼稚園で意地悪を言われても、「ママがオメガじゃなかったらしずくはいなかったのに」「ママは悪いことしてないのに」と泣くような心優しい少女です。 葉月に対しても、初めは雫斗への心配から威嚇するのですが、徐々に心を開いて懐いていきます。雫斗が葉月と結ばれるために背中を押すなど、素直でかわいいしずくが活躍するシーンは必見です。
葉月と雫斗のラブストーリー
オメガというだけで辛い経験をしてきた雫斗と、そんな雫斗に信じてもらおうと真摯な態度で向き合う葉月の恋模様は最大の見どころです。雫斗がアルファにトラウマを抱く原因となった出来事や、オメガがシングルマザーとして生きるつらさなど、読んでいて胸が締めつけられます。 葉月に惹かれながらも、アルファに恐怖を抱く雫斗がどのように心を開いていくのか最後まで見逃せません。そんな雫斗に正面から向き合って思いを伝え、オメガのフェロモンを嗅ぎながらも本能に逆らって守ろうとする葉月も魅力的です。
マンガ以外の派生作品は?
感動的なラストまで一気に読める『嫌いでいさせて』は、既刊が2巻です。1巻だけでも十分に楽しめますが、その後の雫斗と葉月を見たいという人は2巻も必見です。 派生作品としてドラマCDがあるため、マンガを読み終わった後も『嫌いでいさせて』の世界に浸れるでしょう。愛情たっぷりの濃厚なエッチシーンや、登場人物の魅力をより深く感じられるドラマCD版もぜひチェックしてみてください。
ドラマCDも発売中
ドラマCD版の『嫌いでいさせて』は、雫斗役を斉藤壮馬さん、葉月役を増田俊樹さんが演じています。1巻の内容にあたる第1弾は2020年11月4日に発売、2巻の内容にあたる『嫌いでいさせて2』は、2021年3月26日に発売されました。 斉藤壮馬さんの色気と切なさを感じさせる声と、増田俊樹さんの優しく響く低めの声が相性抜群です。斉藤壮馬さんは原作を読んで何度も涙し、収録中も思わず泣きそうになったというほどの熱演ぶりで、ファンの人は必聴のドラマCDといえます。
切ない・感動したい気分のときに読んでみて
『嫌いでいさせて』は、オメガの苦しみを描いたシリアスなシーンや、ヒートに耐える姿など、オメガバースの王道展開がしっかりと描かれています。雫斗の切ない心情や、葉月の深い愛情を感じさせる言動など、読後の満足感が高い作品です。 切ないBLや、感動的なBLを探しているときに読んでみてほしいマンガといえます。エッチなだけではない、愛情溢れるオメガバースをぜひ堪能してみてはいかがでしょうか。