「ホームルーム」はどんなマンガ？あらすじや登場人物を紹介

生徒と教師の異常な愛が反響を呼んだサイコ・ラブマンガ『ホームルーム』について解説します。まずは連載先やドラマの情報について見ていきましょう。

『ホームルーム』は2018年から2020年まで講談社のウェブコミック配信サイトにて連載されました。 そこでは、講談社のマンガ誌に過去に掲載された作品やオリジナル作品を読むことができます。

本作は2020年に毎日放送の深夜ドラマ枠『ドラマ特区』にてドラマ化されました。主演は映画『闇金ドッグスシリーズ』で主演の安藤忠臣役を演じた山田裕貴さんです。 30分の枠で全10回に渡って放送されました。山田裕貴さんが演じる変態ストーカーの演技に注目です。

『ホームルーム』のあらすじを紹介します。あらすじからでもにじみ出る各キャラクターの異常性に注目です。

女子高生の桜井幸子は、毎日のように陰湿ないじめに遭っていました。ある日、幸子はイスから立ち上がることができずにいて、よくよく観察するとイスが接着剤で塗りたくられていたことに気付きます。 幸子は地味な外見で気弱な性格もあり、"ガリベン桜井"と呼ばれています。クラスでも親友ののぶ代以外に話す相手がおらず孤立気味です。 そんな目に遭っても、幸子にあまりめげる様子はありません。彼女には、自分を助けてくれるヒーローが身近にいたからです。

幸子のピンチに颯爽と現れたのは、教師である愛田凛太郎でした。凛太郎はイケメンで爽やか、生徒からの人気も高く"ラブリン"というニックネームで親しまれています。 接着剤でイスから離れられない幸子を見た凛太郎は、なんと幸子を抱えたまま保健室に直行します。 抱えられた姿勢のまま廊下を走る姿は生徒たちから注目の的です。幸子は恥ずかしいと思いながらも、凛太郎が自分のことだけを見ていてくれるこの時間が嫌いではありませんでした。

凛太郎は幸子のクラスメイトたちに、犯人は自首するように呼びかけます。しかし、誰も自首してくることはありません。 それもそのはずで、なんと幸子をいじめていた犯人は、凛太郎だったからです。 帰り道に、凛太郎は接着剤をポケットから捨てて帰路につきます。しかも、凛太郎が向かった先は彼の自宅ではありませんでした。

凛太郎が幸子をいじめていた理由は、"幸子のヒーローになりたい"という願望から自作自演を演じるためでした。ヒーローであるためには犠牲者が必要であり、その犠牲者に選ばれたのが幸子だったのです。 また、凛太郎は幸子に歪んだ愛情を向けています。幸子が寝ている最中にベッドの下に潜伏する、盗聴する、アルバイトの様子を監視するなど、ストーカーのようなことをしています。 凛太郎の幸子に対する歪んだ感情が、いじめから助けるヒーローという形で体現されていたのです。 その後も、凛太郎は幸子を独占したいという思いから幸子に対するいじめや、幸子に近づこうとする男子を脅迫したりといった蛮行を繰り返します。

『ホームルーム』の主な登場人物について、経歴や性格を紹介します。本作を読む際には、キャラクターを整理しておくとより読みやすくなるでしょう。

本作の主人公です。担当教科は英語。正義感が強くて爽やかで、イケメンとしてとくに女性から人気があります。生徒からは"ラブリン"というニックネームで呼ばれています。 生徒からの信頼も厚く、いじめや非行を許さない模範教師としての表の顔を持っていますが、幸子に対する歪んだ愛を抱いています。盗聴に尾行、全裸でベッドの下に潜入するなど犯罪行為にも手を染めています。本性は自己中心的で利己的、しかし用心深い人物です。

本作のヒロインです。化粧もせずに地味な見た目をしていて、クラスでは"ガリベン女"と呼ばれています。性格も気が弱く、言いたいことをはっきり言うことができません。彼女がいじめられているのは周知の事実ですが、のぶ代以外に助けようとする人間はいません。 母親が育児をほぼ放棄しており、普段は家にいません。最低限のお金は振り込んでくれていますが、自分でアルバイトもしています。凛太郎の本性を知らず、彼のことをいじめから助けてくれる"救世主"のように思っています。

幸子の親友です。幸子とは幼稚園から一緒の幼なじみで、クラスメイト。幸子のいじめを心配し、クラスで唯一の味方です。 幸子の相談にも乗ったりと、普段の生活から幸子のことを色々とフォローしている様子がうかがえます。

図書委員の委員長の男子生徒です。同じ図書委員の仕事をきっかけに、幸子と仲良くなっていきます。真面目ですが地味な生徒で、女性との交流経験が乏しい様子が作品からは見て取れます。 幸子の代わりにいたずらの被害にあったり、幸子と近づきすぎたことで凛太郎から脅迫されたりと、何かと不幸な人物です。

『ホームルーム』を読むにあたっての注目ポイントについて解説します。見どころを知った上で読むことで、より本作を楽しむことができるようになります。

爽やかイケメンで熱血漢の教師で、女生徒からの人気も高い凛太郎の表の顔と、幸子のストーカーとして異常な行動をとる裏の顔は注目してほしい部分です。 凛太郎は幸子のヒーローであるために表の顔も大切にしており、自らの行動がバレないように注意を払ったり、また正体がばれそうになった場合は都合の悪い人間や問題を排除したりします。 裏での彼の異常な行動はまさにサイコと呼ぶにふさわしく、ドラマ版ではその演じ分けも見どころとなっています。

本作を読み進めていくと、実は歪んだ性癖を持っているのが凛太郎だけではないことが判明していきます。凛太郎同様に周囲からの支持の厚いキャラクターや、地味で無害に見える生徒の欲望を垣間見ることができます。 表の顔だけを見ると、現実世界でもどこにでもいる一般人に見えます。そうした人物たちの裏の顔は、現実世界でも"実はあの人は裏があるんじゃないか？"と想起させ、恐ろしくなってきます。 リアルな絵柄とリアリティのある人物像が、この作品の怖い部分でもあるのです。

凛太郎は行動自体は異常者ですが、彼の幸子に対する気持ちや、過去の境遇を知ると共感できる部分も出てきます。凛太郎という人物は、女性を好きになれていない純愛なキャラとしての一面も持っています。 彼の行動自体には全く共感はできないものの、ふとした行動や思いには、つい共感を抱いてしまいます。

自作自演のストーカーを演じるサイコな凛太郎ですが、本作は色々な登場人物が現れ、凛太郎の正体に迫ろうとしたり、幸子と凛太郎の関係を邪魔しようと働きかけたりしてきます。 この歪んだ愛がいつまでも続くことがないのは、読者目線から見ると明らかです。凛太郎の歪んだ愛がどのような結末を遂げるのか、ぜひ見届けてみてください。