『コスメティック・プレイラバー』のあらすじ・登場人物。年下の後輩との関係は？

『コスメティック・プレイラバー』は、デパートの男性美容部員同士のBL恋愛ストーリーです。キャラクター設定としてはとても珍しい職業のため、数あるBLマンガの中でも印象に残りやすいかもしれません。 まずはどんな媒体で連載されているかについてや過去に受賞した賞、作者などの概要について説明します。

『コスメティック・プレイラバー』は、"株式会社リブレ"の発刊する雑誌『月刊MAGAZINE BE×BOY』にて連載されています。初めて登場したのは2018年1月号で、21年4月の現在まで続くロングラン作品です。電子書籍および紙媒体でのコミックは、『BE×BOY COMICS DELUXE』から発刊されています。 作者はBLマンガ家の"楢島（ならしま）さち"さんです。この作品のほかには『シアンとイエロー』『愛されたがりの尽くし方』『男子校生、はじめての』など、BL作品をメインに手がけています。

本作は、国内最大級の電子書籍サイト『コミックシーモア』開催の『みんなが選ぶ！！電子コミック大賞2021』にて"BL部門賞"を受賞しました。 このコンテストは、出版社68社が推薦する140作品の中から、"2021年にヒットしそうな電子コミック"を各部門別に読者投票で選ぶという形式でした。 BL部門賞は30作品のエントリーから2作品のみが選ばれており、この作品が読者から強く支持されていることが伺えます。

『コスラバ』は、主人公・棗（なつめ）とその後輩・佐橋との恋物語です。序盤の流れをざっと追ってみましょう。 生真面目で不器用な棗と仕事を舐めたような態度だけれどパフォーマンスが高い佐橋、2人の性格の対比が興味深いところです。

棗は、まだまだ珍しいコスメ売り場の"メンズBA（美容部員）"です。顧客獲得のため、同じくメンズBAである後輩・佐橋とペアになって接客をしています。 佐橋は元モデルをしていたほどの長身イケメン男性ですが、態度が生意気である上、仕事に対しても真剣ではありません。しかし、整ったルックスと高い知識・スキルによって、売り上げは棗を上回っているのです。 仕事に真摯に取り組む棗にとっては、言うことを聞かずやる気の低い佐橋にイライラせずにはいられません。一方で、悔しいけれど佐橋の才能を認めており、「態度を直せば素晴らしいBAになれるはずなのに」ともったいなくも思うのでした。

定時が過ぎ、棗が売り上げ締めの作業をしていると、田之内が棗の職場を訪れます。田之内は棗と同じブランドの元BAで、現在は営業職で現場を回っているのでした。田之内と棗は長年家族ぐるみでの付き合いでしたが、棗は密かに田之内に恋心を抱いています。 棗が更衣室で田之内への想いをつぶやいたところを、たまたま戻ってきた佐橋に聞かれてしまいます。"ゲイであること"と"田之内に恋していること"を知られてしまうのです。

「男いけるならさあ、棗さんで遊ばせてよ」棗の秘密を知った佐橋は、"セックスフレンドになれ"と棗に持ちかけます。 「ふざけんな、なんで俺なんだよ」棗は必死に抵抗しますが、体格がよく力も強い佐橋に壁ドンをされて逃げられません。そのまま後ろ向きにされ、佐橋にされるがままでした。 「…だめとかやめてとか、案外かわいいこと言うんですね」そう言いながら佐橋は強引に会社のロッカールームで棗と関係を持ってしまいます。 激しく動揺する棗に「これからも言うことを聞いてくださいね、棗さん」と佐橋は涼しい顔で言い放ち、棗はおののくでした。

それから数週間の間、セフレ関係は続き更衣室やトイレで2人は体を合わせます。「どうしてこうなった…」棗はこんなことを続けたくはありません。 しかし、佐橋に田之内のことで弱みを握られている上、下手に逆らったらペア売りを解消されるかもしれないリスクもあります。売り上げを落として職場に迷惑をかけたくないのです。頭をかきむしって悩む棗でした。

ここでは『コスラバ』の序盤における、主要な登場人物3人について解説します。話の肝となるキャラクター数はそれほど多くなく、相関関係は比較的分かりやすいです。その分、一人ひとりの性格をしっかり把握しながら読み進めると、より物語への理解が深まるかもしれません。

主人公で、24歳です。まだ業界では珍しいメンズBAとして"ロミーフェリーク東雲有楽町店"に勤務しています。 真面目で誠実、また上昇志向も強い性格です。マメに顧客リストを作ったり終業後に他社の視察に出かけたり、仕事に対しても常に努力を怠りません。 後輩である佐橋とペアを組んで接客していますが、いつも尊大で言うことを聞かない佐橋に手を焼いています。実はゲイであり、長年の知り合いである田之内に密かに恋しています。

元モデルの、23歳長身イケメンです。棗の後輩BAとして同じ職場で勤務しています。抜群のルックスに加えて、美容に関して非常に高い知識・技術を持っており、売り上げ実績は棗よりも上です。 要領と外面がよいためクライアントからは受けがよいものの、裏では生意気で人を舐めたような態度をとります。先輩である棗の言うことも聞きません。 仕事に対しても真剣さが感じられないため、同じ職場で働く上司と衝突します。棗からまっすぐに「ずっと前から能力を認めている」「上を目指してほしい」と言われたことで、気持ちに変化が起こります。

棗・佐橋と同じブランドの営業職に就いており、棗いわく"かわいく・癒される"男性です。棗は密かに憧れています。 以前はメンズBAとして勤務していました。棗の母が元上司だった関係で、棗とは小さいころから家族ぐるみで付き合う仲です。それもあってか、棗のことを何かにつけ気にかけています。 保育園に通う娘を持つ既婚者です。棗との会話では、うれしそうに子どもの話をするなど子煩悩なパパの面も持ちます。

『コスラバ』は、上記でも紹介した通り『みんなが選ぶ！！電子コミック大賞2021』でBL部門賞を見事に受賞しており、作品のクオリティはお墨付きです。 数あるBLマンガの中で、『コスラバ』が特に秀でているポイントとは何でしょうか？見どころを三つまとめました。

佐橋は棗よりも1歳年下な上、職場でも後輩の立場です。しかし性格的も体格的にも佐橋の方がより男性的であり、さらにBLの関係性でも棗は"受け"、佐橋は"攻め"の立場となります。 弱みを握ったことも手伝って、佐橋は棗に対してグイグイ強引にアプローチしますが、"その荒々しさにこそときめいてしまう"という読者も多いのではないでしょうか？ "生意気でオレオレな年下くんから、ワイルドに奪われたい…"そんな願望を満たしてくれるかもしれません。

とにかく絵がキレイで、泥臭くない女性好みのイケメンたちが"目福"です。絵のタッチも繊細で、読みやすさも抜群です。 絵がストーリーを台無しにしたり、絵が引っかかって話が頭に入ってこなかったりということがありません。登場人物の心理状態や気持ちの変化なども丁寧に表現されており、より感情移入がしやすいことも魅力です。

仕事上でペアとして組んでいたものの反発しあっていた2人が、ある日を境にセックスフレンドとなります。その後、仕事の変化とともにどんどん距離感が縮まり、お互いに本気の恋に変わっていくプロセスが共感度抜群です。 "オレ様"的な態度で棗を見下していた佐橋が棗の優しさに触れ、相手をかばい思いやるようになる姿には胸がキュンとなる人も多いでしょう。

『コスメティック・プレイラバー』はBLの王道的なストーリーながら、絵柄のキレイさと繊細な表現力が魅力といえます。 はじめは"水と油"のようだった2人が次第に心引かれあい、本気の恋へと変わっていく様子に、読者はグッと引き込まれるとともに心からのエールを送りたくなるはずです。真面目で不器用な青年と、生意気で強引な年下くんのツンデレ恋物語を存分に味わってみませんか？