渡邊ダイスケ先生によるクライム・バイオレンス漫画です。少年画報社『ヤングキング』2014年10号から2016年7号まで連載された『善悪の屑』の第2部として『外道の歌』にタイトルを変更し、同誌2016年8号から引き続き連載されています。劇中に登場する事件は話題になっており、今回は本作の魅力と登場人物を中心にご紹介します。
【ネタバレ注意】 犯罪に手を染めながらも十分な裁きを受けず反省もしていない犯罪者たちに、被害者に代わって復讐を行う2人の「復讐屋」の物語です。 主人公となるのは、この「復讐屋」の男2人、通称カモとトラ。 復讐は、依頼人から依頼を受けることで始まります。 事実関係を調査するにしたがって明らかにされる事件の凄惨さには、思わず顔をしかめてしまう方も多いはずです。 しかしその分、「復讐屋」の被害者の壮絶な想いがこもった復讐に共感することができるのです。 正義、善悪について改めて考えさせられる作品となっています。 『闇金ウシジマくん』や『怨み屋本舗』などダークな世界観が好きな方にオススメです。
窪塚 洋介(くぼづか ようすけ)さんと亀梨 和也(かめなし かずや)さんのW主演で実写ドラマ化が決まったことが発表されました。 実写映画の中止を余儀なくされた善悪の屑のリベンジということで大いに盛り上がっています。 衝撃のクライム・サスペンスの実写化にファンは歓喜の様子です。
ある日、理不尽な理由で妻と娘の命を奪われた男がいる。 その名も鴨ノ目武。 家族の命を奪った加害者の男は、警察官僚の息子であり、警察内部では男をなんとかやり過ごそうという怪しい動きがあった。 そこで鴨ノ目武、通称カモは、犯人の正体を突き止めて自分の手で復讐を行うことを決心する。 それ以来、理不尽な理由で身近な人間を殺された人を救う名目で、被害者の代わりになって、加害者に復讐する、復讐代行を行う事になったのである。
1つ目の魅力は主人公カモの信念を貫いた仕事の流儀です。 自分の妻と娘を失った事が、復讐屋になる事の背景となっている事から、依頼された復讐に関しては、徹底的に行います。 残忍すぎるほどのやり方も多々見受けられますが、完膚なきまで行う復讐劇には、カモが持つ復讐屋としての信念の強さを感じます。 また、逆に被害者には少しでも気持ちが楽になるような言葉をかける事から、カモの内側の人間味を垣間見る事ができます。 厳しさと優しさの両面を持つカモの行動、言動に注目です。
2つ目の魅力は、リアルすぎる加害者の犯罪までのストーリーです。 加害者の犯罪までの過程が非常に細かく描写されています。 危害を加えるシーンよりも、それまでの加害者の心理描写、特になにがこの人物を凶行に走らせたのかを中心に描かれているのが本作品の一つの特徴です。 決して起きてはならない残忍な事件ばかりですが、どこか身近でもこのような事が起きているのではないかと、思わずハッとさせられます。
3つ目の魅力は、改めて本当の正義とは何かという事を考えさせられる点です。 ストーリーの中では、被害者の家族などがカモに復讐を依頼にやってきます。 そこでは、復讐の依頼をする人々の心の葛藤が描写されています。 自分自身がこの立場であった場合、どのような感情が湧くのか、正義とは何かを考えさせられます。 また一方で、主人公のカモは正義や社会、道徳など関係なく、あくまで「復讐屋」として仕事を完璧に行います。 加害者の行なった悪は疑いの余地もない悪だと一刀両断するカモの姿勢からは、復讐屋として貫く正義を感じる事になります。
4つ目の魅力は、カモとトラのみせるギャップのある優しさです。 ストーリーは基本的にカモとトラが繰り広げる、残酷な復讐がテーマで展開されます。 普段は残酷なまでの復讐を冷静に行う復讐屋の二人ですが、時折被害者にみせる優しさには、1人の人間としての優しさが滲み出ています。 普段から人情味溢れるトラはもちろん、カモがみせる優しさには思わず感動してしまうこと間違いなしです。
本作品の主人公。通称カモ。 坊主頭にサングラスをかけ、ゼブラ柄のパーカーを着用していることが特徴。 普段は亡き父親が経営していたカモメ古書店に住み、復讐代行を請け負っている。 性格は無口で感情をほとんど表に出さない。 加害者への拷問に近い復讐を行う際も、基本的には顔色一つ変えない冷徹さをもつ。 対して、復讐の依頼主に対しては、優しい言葉をかけることから、人情味溢れる性格もうかがえる。 自身の妻と娘が理不尽な理由で殺されたことが復讐屋として活動することの経緯となっている。 その為、女性や子供に危害を加えたものに対しては、必要以上の復讐を行う。
カモの相棒。通称、トラ。 長髪で関西弁を話す。 普段はカモの自宅で同居している。 背中に派手な刺青があることが特徴。 身体能力が高く、格闘技を得意としている為、加害者を取り押さえる役割を担っている。 常に冷静なカモとは対照的な性格で、義理人情に厚い。 その性格から被害者に感情移入して、加害者を殺すまで復讐をしようとしてしまう事もある。 ただし女性には手を出さないと決めている為、加害者が女性の場合は手を出さない。 喧嘩屋として地下格闘技に参戦していたという経歴を持つ。
カモの叔父。 スキンヘッドに強面といういかにもヤクザのような容姿だが、職業は刑事。 その職業柄、様々な情報を持っているので、カモ達に意図的に内部情報を漏らす事もある。 両親、そして妻と娘を失ったカモをいつも気にかけており、力になりたいと考えている。
カモの妻。 幸せな日常をカモと娘と送っていたが、ある日突然家にやってきた男に殺害されてしまう。
カモの娘。父親でもあるカモを溺愛していた。 カモと一日中一緒にいれる日曜日が好きという理由で、猫に日曜日という名前をつける。 母親同様に、突然家にやってきた男に殺害されてしまう。
復讐支援組織の「朝食会」の代表を務める。 復讐代行とは違い、被害者に復讐をさせるための手助けをする組織。 どんな依頼も受ける訳ではなく、自身が考える復讐の条件に見合わなければ仕事を引き受けない。 カモ達の復讐のやり方を好んでいないため、カモ達に対しては、いつも上から目線でものを言う。
朝食会のメンバーである大柄の男。 長髪でメガネをかけ、ジーンズにシャツをインしたスタイルが特徴。 見た目からは想像できないが、トラを屈服させるほどの腕っ節を誇る。
いかがだったでしょうか。 リアルな事件をもとに話ができていて、被害者側の描写、加害者の犯罪までのストーリーが本当にリアルなものとなっています。 感情移入することはもちろんの事、カモの執拗な復讐劇により悪が滅びる様子は、思わず読者もスカッとするのではないかと思います。 正義について考えさせられる話題の本作品を是非この機会に手に取ってみてはいかがでしょうか?