本作は2000年から2001年まで『ビックコミックスピリッツ』に掲載された、セカイ系漫画の先駆けとも言われる名作漫画です。TVアニメ化、ゲーム化、実写映画化にもなった本作は、初版から約20年が経とうとしていますが、今もなお色褪せぬ魅力を持ち、多くのファンがいます。『あげくの果てのカノン』『エルフェンリート』『寄生獣』など、SFと恋愛の両方の要素を持ち合わせた漫画が好きな方に、おすすめの作品です。
『最終兵器彼女』とは
ある日突然人間兵器となってしまった女子高生・ちせと、主人公 ・シュウジによる純愛ストーリー。 「この星で一番最後のラブストーリー」というキャッチコピーがついたこの作品は、世界の終わりが舞台のディストピアで、過酷な状況におかれながらも純粋な愛を紡いでいく2人の様子が繊細に描かれています。
普段はごく普通の女子高生として生活を送っていたちせは、自衛隊からの選出により突然兵器へと改造されてしまう。戦争が起こり兵器としての役目をはたしていくうちに、ちせは人間としての心を失っていってしまいます。
だんだんと日常が壊され、ちせは身も心も兵器に蝕まれていきますが、事態が絶望的になるにつれ二人は絆を深めていきます。 身も心も兵器と化していくちせと、そんなちせを愛し、想い続けたシュウジが迎える壮絶な結末とは…? 悲しく、重く、残酷な、2人の美しい愛の物語。そんな『最終兵器彼女』の魅力について、ご紹介します。
あらすじ
ぎこちなくも清純な交際をしている高校生、シュウジとちせ。札幌が突然の空爆に襲われたある日、シュウジは思いも寄らない姿に変身していたちせに出会った。背中から羽が生え、空をマッハ2の速度で飛び、とてつもなく破壊能力を持つ、自衛隊によって改造された“最終兵器”。それがちせだった。地球のあちこちで紛争が起こるたびに呼び出され現場へ向っていくちせと、彼女を見守ることしかできないシュウジ。ふたりの未来はいったい…!?
登場人物
ヒロイン:ちせ
気が弱くて鈍臭く、口癖は「ごめんなさい」。 ちせが勇気を出して告白したことにより、シュウジと交際することになります。 兵器に改造されてしまうという恐ろしい運命を持つちせですが、体も小さく穏やかな性格で、どちらかというと守ってあげたくなるようなかわいらしさを持ち合わせています。
主人公:シュウジ
北海道の小さな田舎町に住む、思春期真っ只中の男子高生。 自分の気持ちをストレートに話すことが苦手で不器用な性格ですが、成績優秀で根は優しく、いつもちせのことを心配しています。 シュウジはちせと違い、戦う力もなく戦争にも参加しませんが、兵器に改造されてしまったちせを愛し、支え続けます。
テツ
ふゆみの夫で自衛隊として出征しており、階級は二等陸尉。 部下を思いやる優しい一面がある一方で、口が悪く、いざという時は迷いなく敵を殺害する冷酷さも持っています。 ちせにふゆみを重ねてみていたと思われる描写もあります。
ふゆみ
シュウジが中学生のときに教育実習でやってきた陸上部の先輩で、現在はテツの妻。 根は寂しがり屋で、出征中の夫テツに会えず、いつも悲しげな表情をしています。 シュウジの「初めての相手」であり、シュウジにとって気になる存在です。
アケミ
シュウジとちせの幼なじみで、クラスメイト。 2人の良き相談相手で、ちせがシュウジへ告白する際後押ししたのですが、実は密かにシュウジに恋心を抱いています。
アツシ
シュウジのクラスメイトで、シュウジの良き理解者。 アケミのことが好き。
本作の見どころ
(1)不器用さから始まる切ない恋
この作品の冒頭は、ちせとシュウジの歯がゆい恋愛描写から始まります。 初めは「学園物の恋愛漫画かな?」と見間違えてしまうほど平和でありきたりな、誰もが経験したような懐かしい青春の日々が描かれています。
ですが、この作品の舞台は世界の終末という究極のディストピア。 物語の冒頭やほのぼのとした絵のタッチからは想像もつかないほど、だんだんと残酷な展開へと進んでいきます。
世界の終わりという絶望的なシチュエーションだからこそ、愛することの尊さをより深く感じられ、ちせとシュウジの純粋な愛の形に涙せずにはいられなくなってしまいます。今大切な人がいる人はもちろん、しばらく恋を忘れてしまっている人に是非観て欲しい作品です。
(2)兵器と人間の間で揺れ動く、ちせの苦悩
ちせが兵器に選ばれ改造されたのは、たまたまその適性を持っていたからです。 兵器と人間の両面を持つことになったちせは、普段は女子高生として生活しますが、兵器としてのちせは姿形を変え自衛隊と共に戦います。
世界を守るためとはいえ、兵器と融合したちせは大量殺戮を繰り返していきます。身も心も兵器に蝕まれ、だんだんと兵器としてのちせの存在が大きくなっていきます。
まるで二重人格のように兵器と人間の二つの面を持つようになり、その間でちせは苦しむこととなります。
そして絶望的なディストピアの中で時折訪れる、愛に溢れた瞬間がたまらなく切なく、だんだんと人間の心を失っていくちせの姿には胸が締め付けられます。
(3)シュウジの葛藤
シュウジはちせのように戦う力はなく、戦地へ駆り出されるちせをいつも見送ることしかできません。 世界を救うため自分を犠牲にして戦うちせに対し、何もできないシュウジは、全てを捨て共に逃げようと提案します。
一度は二人で逃げようとしますが、結局ちせは戦うことを余儀なくされ、二人は一度離れて生きる道を選ぶこととなります。
それでもちせにとっては、シュウジといる時間が人間らしさを取り戻せる唯一の時間であり、シュウジもちせを忘れることなどできません。 一度引き裂かれても、ちせを愛し、支え続けたシュウジの様々な想いや葛藤が繊細に描かれています。
(4)平和な日常を刻一刻と侵食していく、戦争のリアルな描写
最後にこの作品の一番すごいところは、何気ない平和な日常と、地球の終末という残酷な背景が見事に入り混じっている点です。 恋愛、戦争、死、高校生の日常、そして性に対する高校生男子の葛藤までもが、いい意味で見事に混沌化し描き出されています。 本作品では性的な表現も多く描かれていますが、その生々しい描写があることで思春期の男女の恋愛がより繊細に表現されています。
このように人間の本能や葛藤が剥き出しに描かれることによって、この作品の美しさや残酷さがよりリアルなものとなっているのではないでしょうか。
メディア情報
映画化、TVアニメ化、ゲーム化
まとめ
いかがだったでしょうか。『最終兵器彼女』は7巻まで発売しています。 読書のお時間です by Amebaでは新規会員限定で最大2500円還元キャンペーンを実施中です。 気になった方は是非無料で試し読みをしてみてください。
いいひと。 1
少年・青年マンガ▼第1話/START!▼第2話/TWO HEARTS▼第3話/終わりの季節▼第4話/with▼第5話/幸せになりたい▼第6話/曇りのち晴れ▼第7話/笑顔の行方▼第8話/ありがとう▼第9話/KIDS BLUE▼第10話/PRIDE▼第11話/Maybe Tomorrow●主な登場人物/北野雄二(札幌の大学から、就職のために上京。周りの人の幸せが自分の幸せと言い切る“いいひと”なのだが…)、桜妙子(雄二の高校時代からの恋人。北海道にいるため雄二とは遠距離恋愛)、二階堂千絵(東大卒のキャリアウーマンだが、会社や仕事に不満の毎日)●あらすじ/北野雄二はスポーツメーカー「ライテックス」に就職するのが夢だった。“いいひと”すぎる雄二は、困っている人をみると親切にせずにはいられない性格。北海道から就職試験のために何度も上京するのだが、その度にハプニングに巻きこまれ、遅刻を重ねてしまう(第1~3話)。▼やっと就職できた夢の会社なのに新入社員研修でまたもや遅刻の雄二(第4話)。▼研修地先に向かうバスもなくなり、走って現地へ向かう途中、副社長の車に便乗できたのだが(第8話)、▼研修地先では苛酷な試練が待ち受けていた(第9話)。▼おまけに会社の主任である千絵との仲を疑われるはめに(第11話)。●本巻の特徴/この第1巻では、雄二がなぜライテックスに入社したかったのか(第1話)、また入社するまでの経緯などが紹介される(第1~4話)。