【ネタバレ注意】『1日外出録ハンチョウ』の囚人・大槻に学ぶ人生の愉しみ方!

【ネタバレ注意】『1日外出録ハンチョウ』の囚人・大槻に学ぶ人生の愉しみ方!

『天』、『最強伝説 黒沢』など多数の代表作を持つ福本伸行先生の大人気漫画『賭博破戒録カイジ』の登場人物が主人公の本作品。『中間管理職トネガワ』に続く「カイジ」シリーズのスピンオフ作品第2弾として2017年から「ヤングマガジン」にて連載開始。本編からは想像が出来ないほどの本格グルメ漫画的な内容から「カイジの飯テロスピンオフ」と呼ばれ話題に。今回はこの話題の作品を、登場人物の魅力を中心にご紹介します。

  • 『1日外出録ハンチョウ』とは

    借金帳消しのため、地下王国で強制労働に従事している男・大槻が、1日外出券を利用して休日を楽しむ様子を描いたギャグ作品。 本来自由がない立場の囚人大槻が、一日外出時に見せる大胆不敵な人生の楽しみ方が滑稽に描かれている。 また、グルメ通大槻の選ぶレストランが毎回秀逸で、その独特な食事風景も相まって今までに類を見ない全く新しいタイプのグルメ作品となっている。 『賭博破戒録カイジ』ファンはもちろん、グルメ漫画『孤独のグルメ』などが好きな方もぜひ一読あれ。

    あらすじ

    地の底の底、帝愛の強制労働施設。そこでは、多くの債務者達が一日外出券という地上の光を夢見ています。 叶わぬ権利に絶望する亡者達のため息を尻目に、今日も軽々と外出権を手にする男がいました。 その男とは、地下にいながらもチンチロで大金を稼ぐE班トップの大槻! 舞台はそんな大槻が一日外出権を行使して、悠々自適な一日を送る、外の世界。 他人の苦しみを愉悦とする大槻班長の壮大な飯テロ物語が幕を開けるのでありました。

    魅力ポイント

    (1)大槻が魅せる、大人の余裕

    本作品の1つ目の魅力は、囚人である大槻が魅せる大人の余裕です。 普段、地下の労働施設では自由が制限されている為、一般的な囚人はたまの外出日にはその開放感から色んな事を楽しみたくなり焦ってしまうのが常です。しかし、大槻の外出日のスタートはいつも落ち着いています。 時には一日目は簡単に食事をとって、あとはホテルで休息して終了、なんてことも。 この一般的な囚人とのギャップが、大槻のただ者ではない感を強くして、次は一体どう動くんだろう?と一気に大槻ワールドへと引き込まれてしまいます。

    (2)大槻に学ぶ人生の楽しみ方

    2つ目の魅力は、大槻が底抜けに人生を愉しんでいる点です。 世の中で最も不自由なはずの囚人が、少年のように人生を楽しんでいる様が痛快で、時には何か教えを受けているような気になってくることもしばしば。 実際に大槻の外出時につく看守も、大槻の人生の楽しみ方に徐々に巻き込まれていき、いつの間にか一緒に楽しんでいるシーンが描かれています。 大槻の、周りの人をも幸せにする人生の楽しみ方は、一見の価値があると言っていいでしょう。

    (3)飯テロレベルの高さ

    3つ目の魅力は、飯テロのレベルの高さです。 グルメで知られる大槻が選ぶ居酒屋、定食屋はどれもレベルの高いものばかり。 読者を一気に空腹にするこの飯テロレベルの高さは、グルメ漫画『孤独のグルメ』級ともいえます。 また、時折見せる大槻の自炊スキルも非常に高く、こちらにも注目です。 深夜に読む際は、どうかお気をつけください。

    (4)唐突に差し込まれるクオリティの高いパロディ

    4つ目の魅力は、ストーリーの所々に差し込まれる、クオリティの高いパロディです。 その綺麗な伏線とパロディオチが、この作品のギャグレベルを一気に高めます。 とても囚人生活とは結びつかない意外なパロディが毎回秀逸なタイミングでやってくるので、見落とさないように気をつけて見てみてください。

    (5)大槻に学ぶ、生活の知恵

    5つ目の魅力は、大槻の生活の知恵のレパートリーの豊富さです。 長い間囚人生活をしていて、どこでこんな情報を得たのかと不思議になる程、とにかく知恵が豊富。 「お婆ちゃんの知恵袋」ならぬ「大槻さんの知恵袋」は、すぐに実践してみたくなる実用性が高いものが多いのも特徴の一つです。

    (6)大槻の人心掌握術の高さ

    6つ目の魅力は、大槻の人心掌握術の高さです。 その人間味の深さと計算高さで、大槻は周囲の人間をあっさりと味方につけます。 祭り会場では祭りの役員メンバーと打ち解けタダ酒をもらったり、監視役をもうまく味方につけて充実した1日を過ごしたりと、不自由なハズの身で自由気ままに楽しげに過ごす様は見ていて痛快です。 さすがは地下労働施設E班の班長をやっているだけあるな、と感じさせる大槻の優れた人心掌握術。是非注目してみてください。

    個性的な登場人物

    大槻

    本作品の主人公。地下労働施設のE班班長。 班長の特権を活用してビール・お菓子等の物販の利益と、主催する地下チンチロリンで大勝を重ね、囚人たちから収奪したペリカ(地下でのみ流通する通貨)を大量に溜め込む狡猾な人物。 そのペリカを使った勤労奨励オプション「1日外出券」の利用常連者である。 これまで積み重ねてきた経験やスキルをもとに、1日外出を心置きなく楽しむ手練者。 長年培ってきたのか「食べ歩き」の審美眼は中々のものでり、美味い店の的中率はかなり高い。 年齢については明記されていないものの、25年前に東京都内で大学生(学生バンドに励むかたわら、貧乏質素な生活を送る描写がある)、その後はサラリーマンとして働いていたことが語られている。

    沼川

    大槻の側近。オールバックと口ヒゲが特徴。 1日外出に慣れておらず、その楽しみ方に苦心する。 そんな理由もあって器用に楽しむ大槻を慕い、1日外出の予定日をわざわざ合わせて行動することが多い。

    石和

    大槻の側近。 幕末ファンで強い思い入れを持っているため、同じく結構な幕末ファンである大槻と意気投合して行動を共にする場面も。 坂本龍馬の墓前で号泣したり、動物系のドキュメンタリー番組で泣きそうになったりと涙もろい一面も描かれている。

    小田切

    地下労働施設のC班班長。 班長特権でC班でタブレットを活用した地下映画事業を開催し、大槻からはライバル視されている。 この事業がきっかけで、後に大槻から事業提携の誘いを受けることとなる。

    監視役 宮本

    地下監視役を担う若年の黒服。 当初は地下チンチロで不自然に勝ち続ける大槻に対し、強い不信感を見せていた。 しかし、同伴した地方自治体のアンテナショップ巡りで禁欲を刺激され、結局は大槻と酒を飲み交わす仲になり交友関係を築く。 以降もたびたび登場し、すっかり大槻に心を許してグルメや観光に同行したり、大槻を気にかけたりする様子を見せる。大槻が風邪を引いた際には休日にも関わらずわざわざ見舞いに訪ねたり、情の厚い一面も。

    木村

    バブル崩壊の時期、30歳過ぎで地下施設入りして以降、四半世紀近くも地下労働の日々を送り続けた。 任期満了のため地下から解放される事となった木村は、久しぶりの地上生活に不安を感じ、1日外出手練れの大槻に出所の付き添いを依頼する。 地下落ちの間一度も地上に出ておらず、情報も古新聞や古雑誌などで得ていた為か、服装やトレンドが地上と大幅にずれている。

    メディア情報

    『カイジ』シリーズのスピンオフ作品である『中間管理職トネガワ』の放送枠をジャックする形で、テレビアニメ化された。 2018年10月放送の第14話にて放送され、その後も不定期にハンチョウのエピソードが放送されている。

    まとめ

    いかがだったでしょうか。 読み進めるうちに大槻の懐の深さや、知識の豊富さ、予測のつかない行動力に引き込まれてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。 今回は1~2巻のストーリーを中心に紹介させて頂きましたが、まだまだ大槻の魅力は紹介しきれません。仕事や人間関係で疲弊した大人にこそ読んで欲しい、気持ちの良い休日の過ごし方や力の抜き方を教えてくれる1冊となっています。 充実した休日を過ごしたいと思っている方は、一度大槻の過ごし方を参考にしてみてはいかがでしょうか?

  • 福本伸行の他作品

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  • 萩原天晴の他作品

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