今から約1000年後、勝利した都市国家の「単一国」は、野蛮で無秩序な人間社会に訣別し、「緑の壁」にかこまれた理想社会を築いていた。そこには「私」はなく、あるのは「われら」だけであった。「住人」は、ガラス・シルクの制服を着、数字と文字を組み合せた国民番号で区別されている。生活の隅々までが「時間律法」に規制され、むろん性にも自由はなく、性生活は性規制局が決める相手と予定表にしたがって行なわれる。単一国は、目下建造中の宇宙船「積分号」によって、他の惑星へ「幸福」をもたらすために出かけようとしている。本書はその宇宙船の製作担当官D五〇三号の詳細な「手記」として記録されている。DはI三三〇号という女性との禁断の「恋」に悩まされ、最後には…。1920年代初頭にロシアで書かれたディストピア小説の先駆的名著。
