秋分から冬至まで何日あるか。北の空で一年じゅう沈まない星の名を三つ挙げよ。秋の午後、客を招いた席で、ロシュフォール家のエルネスティーヌはその二つに一言も答えられなかった。どちらも知っていたのに声が出ず、手首が勝手に動いて茶碗が倒れ、四人が笑った。十九歳。父を八年前、母を六年前に亡くし、屋敷は後見人ユベールが差配している。彼女には前の生で人の顔を写して暮らした記憶があり、その癖のせいで、笑っている四つの顔を一つずつ覚えてしまう。その夜、後見人は書庫の鍵を取り上げた。女に学問は要らぬと客の前で言った同じ口が、教師を入れると言う。翌朝来たのはマルタ・キーゼルという女だった。二十一の年から人の家で教えて八年目、荷は衣類の包みと本の入った箱の二つきり。北向きの狭い部屋をあてがわれ、紙が焼けないからいちばんいい部屋ですと言う。彼女は作法の稽古を一日で切り上げ、書庫で何をするかは決めず、決まるまで待つとだけ言った。エルネスティーヌが決めたのは、この部屋の本を全部数えることだった。一の書架、百七十八冊。三の書架のいちばん下の段の奥から、十年前に母が書いた百二十五枚の目録が出てくる。締めの数は千二百四十二冊。初冬に数え終えた数は千百九十五冊で、差は四十七。そのうち三十一が星と暦と数の本だった。マルタは答えを一度も渡さず、調べ方だけを置いていく。分からないことは分からないと書く。合わない数は、合うように数え直さない。村の子が三人、本を見せてほしいと勝手口に来る。エルネスティーヌは一人一冊七日でと決め、貸し出しの帳を作った。子は五人になり、七人になり、九人になった。屋敷に入れるなと言われると、貸す場所を橋の袂の石の台へ移す。雪の日も吹雪の日も彼女は通い、粉挽きの家のコランは毎回先に来て台の雪をどけ、九つのリゼットは七日ごとに来て一度も休まなかった。冬に差出人のない紙が二枚届く。この教師は資格を持たぬ、前の家で何があったか訊いてみよ、と。晩冬に縁談が壊れる。その夜マルタは、去年の秋のあの午後を、控えの間の扉の隙間から最初から見ていたと明かす。閉めれば見えなくなったのに閉めなかった、見ていたかったからだと。初春、二人は長持ちの底から出てきた壊れた天球儀を三日かけて直そうとして、直せない。数えはじめた娘が、封を切らないまま一通の手紙を目録の最後の頁に挟むまでの、十月から七月まで。異世界転生の恋物語・全10章完結。
