手間賃を四枚下げられた羊毛屋ですが、門の内側に選毛台を出したら、家を出た買い付け人が毎日門の外から等級を教えてくれます

手間賃を四枚下げられた羊毛屋ですが、門の内側に選毛台を出したら、家を出た買い付け人が毎日門の外から等級を教えてくれます

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一等三十、内実二等。差引、銅貨七百二十枚。四年前の秋の頁に、織元の朱でそう入っている。その上の行には、等級付け・見習い、とだけ書いてある。見習いはその年ひとりきりだった。十八のアガーテ・フォルクマンである。丘のいちばん高いところに、東を向いた門をひとつだけ持つ家がある。羊毛屋フォルクマン家。谷じゅうの牧から刈り取ったばかりの原毛を買い集め、選り分けて等級を付け、俵に詰めて織元へ渡す。羊毛そのものの値は牧のもので、この家が受け取るのは、集めて選って詰めた分の手間賃だけである。四代のあいだ、誰も並べ替えなかった仕事だった。二十二歳になったアガーテは、当主の父が倒れた七日後から、家督を継ぐ手続きを始めている。二の月の半ばを過ぎたら暖炉の薪を半分に減らすという決まりだけは、父が寝ついた今も誰ひとり動かそうとしない。前の生では大きな給仕場にいて、窯が四つと汁を煮る鍋が六つある場所で、毎日八百人ぶんの昼を作って出していた。広間に集まった親族が、四年前に家を出た養子の名を口にする。ラインハルト・フォルクマン。血の繋がりはなく、十の年に北の町の宿場から連れてこられ、十五から買い付けに出て、十八でこの家の等級を全部任された男。四年前の秋、織元へ渡した一等の三十俵は、中身が全部二等だった。原毛を抜いたのはあの男だ、ということになっている。なっている、というだけである。三十俵に一等と書いたのは、十八の見習いのほうだった。父に誰が付けたのかと二度訊かれ、二度目に、彼女は彼の名を言った。彼は一度だけ違うと言い、それきり何も言わずに、荷を一つも持たずに門を出ていった。以来、俵は百八十から百二十へ落ち、手間賃は一俵二十枚から十六枚に下げられたまま戻らない。初春、手間賃の交渉に出た織元の土間で、アガーテは四年ぶりに彼と会う。彼は川向こうの領の買い付け人になっていた。谷の十一の牧のうち、九つはすでに回り終えている。家へ寄っていかないかと言うと、返ってきたのは、二度とあの敷居は跨がない、という一行だけだった。以後、彼は門の外の土の上にしか立たない。晩春、アガーテは男二人でやっと動く樫の選毛台を門のすぐ内側まで運ばせ、門の桟越しに等級の見方を教わる。細さ、長さ、撚りの縮れ、混ざり。掌を閉じて、開く。戻りが途中で一度つかえるかどうか。谷では、フォルクマンの娘が門の外の男に毎日毛を見せている、と噂が立つ。四年借りたままの測り棒がある。持ち手に焼き印で名が入り、揃った六本より一本だけ短い。十六の彼が自分で削ったもので、刻みは二つ、擦れて浅くなっている。返さずにおくための理由を、彼女は四年かけて作ってきた。四年ぶんの数を並べ直し、値を自分の口から先に言うまでの、二の月から十の月まで。異世界転生の恋物語・全10章完結。
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  • 手間賃を四枚下げられた羊毛屋ですが、門の内側に選毛台を出したら、家を出た買い付け人が毎日門の外から等級を教えてくれます

    8月16日発売予定

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