嫁入り道具は四十七点。三年前の五月十一日、嫁いだ翌朝に、フリーデリケ・タウベは婚家の門の前でその四十七点ごと返された。勘定に細かい嫁は要らぬ、と当主は言った。垣根の外には近隣と使用人が二十五人立っていて、品書きを一点も飛ばさずに読み上げる声だけが庭を渡っていった。荷は減りも増えもしなかったから、あの朝に失ったものは帳面の上には一つも残っていない。三年後の十月三日。借財一万二千グルデンで傾いた伯父ゴットハルトの領へ、フリーデリケは帳面を検める役として送り込まれる。そこで家令として彼女を迎えたのが、あの朝に品書きを読み上げたエーミール・ブラントだった。彼は初対面のその場で、読み上げたのは自分だと自分から名乗る。フリーデリケはそれを聞き流し、代わりに、出し渋られた帳の墨の艶を光に透かして、使用人十一人の給銀が七か月止まっていることを見つける。前の生で二十年、人に会って話を聞き、それを紙に刷って売っていた彼女は、裏の取れないことを一行も書かない。町を歩いて薪と蝋燭と麦の種の値を訊き、蔵の薪を百二十束、一束ずつ地面に下ろして二度数える。伯父に告げた自分の値は一件につき十ペニヒ。三年分の出納は四千二百十二件、締めて四百二十一グルデン二十ペニヒになる。客の前でその額を口にしたとき、笑わなかった者は一人もいなかった。小作の寡婦ロゼル・キーンが持ち込んだ証文には、利息の一の字に、あとから横棒が二本足されていた。差額は八十グルデン。彼女が五年前に借りた元金と同じ額である。書き換えられた十一通は二年前に町の証文買いへ売り払われ、東の谷ではすでに三軒がたたまれていた。そして三年分十七冊を夜通し突き合わせた末に、月に一つずつ、三年で三十六通、六十グルデンの受取証が出てくる。屋根の板、南の橋の板、蔵の修繕。どれも直されていない。わたしはあなたを庇いません。そう言い切ったフリーデリケは、同じ月に、この男が寡婦の子の奉公の口を、雨の中を三度歩いて先に作っていたことを知る。書いた手と、東の谷を歩いた足は、同じ人のものだ。だから両方書く。値はつけず、材料だけを揃えて渡す。見ていた人が二十五人いても、荷は一つも戻らなかった。戻らなかったものの代わりに、自分でつけた値を自分の口で言うまでの、十月から六月まで。異世界転生の恋物語・全10章完結。
