七年前の五月、木染の橋が渡り初めの日に落ちた。行列の先頭が二十歩ばかり進んだところで、中ほどの径間が抜けた。三人が死んだ。原因は根固めに使った石の等級の取り違えだったことになっている。検分に、当時二十六の手代だった苫田汀は呼ばれていない。紙は一枚も動いていない。判決も裁きもない。ただ検分の場で誰かが苫田の名を言い、それから三日で、川筋のどこへ行っても同じ言い方をされるようになった。落橋を出した男。名前ではないものが名前になるのに、七年もかからなかった。苫田汀、三十三。いまも石を積んでいる。指図はするが請書に名は載らない。載せられないのではなく、載せてはいけないことになっている。蓼沢の渡しでは、七年、一人だけ倍の四銭を取られつづけている。弦巻橋の検べに来た郡の検査方、室井篤、四十一。検べる前に「先に、話しておきたいことがある」と三度言い、三度とも打ち切られる。この男は二人の道具袋に同じ形の石の欠片が入っていることを、十四年前から知っている。一月から秋まで、苅生川の川筋で。謝罪を受け取らない男と、謝るのが下手な男の話。BL時代小説・全10章完結。

