表通りの幅は七間ある。その両側に、同じ大工が同じ年に建てた氷菓子屋が二軒、真向かいに立っている。仲は悪い。それでも旗を出す日だけは、二軒とも必ず同じ日を選ぶ。間宮朔、二十九。十七でこの削り台の前に立って、今年で十二年になる。三年前に父が死んで、梶棒と帳面と借財を同じ日に受け取った。掛けの覚えを開いたとき、数字の桁を三度数え直した。数え直しても桁は減らなかった。父の道具は半分売った。売らなければ氷が買えなかった。葛西湊、三十一。七間向こうの店の主人。のんびり話す男で、値と数の話になると急に隙がなくなる。ある日、客に「向かいと蜜が同じ味だ」と言われて、朔は変装して向かいの列に並ぶ。水四合、砂糖三度。二軒の白蜜は、煮方が一字も違わなかった。夏の盛り、朔の氷だけが「食べると頭が痛くなる」と言われて三日で客が半減する。氷を割って気づく。今年の氷は縞が斜めに立っている。その晩に五貫潰して七度試し、削り台の爪を半寸ずらして十五度で当てる据え方を見つける。翌朝、値を二銭に戻すと列が戻った。その晩、葛西が砥石を三丁抱えて来て、二人は初めて一緒に刃を研ぐ。四日の大雨で川が出て荷が三日遅れ、雨上がりの猛暑で両店の氷が尽きる。二人は暖簾を下ろして石蔵へ行き、いちばん奥の、どちらのものでもない一山を割ると決める。二十年前、二軒の親父が最後に二人で切った氷だった。二軒は毎年一緒に山へ入っていた。九月、氷問屋の帳場で掛けが四十八両に増え、来年の八月末までに全額と切られる。道は三つ。店を畳むか、問屋の直営になるか、向かいと一緒になるか。葛西は二十四両を出すと言い、朔は断る。お前に出させたら、二度と向かいに立てない。石蔵は川沿いの土手を四半里下ったところに、斜面に半分埋まって建っている。籾殻をかぶせた氷の山があり、そのいちばん奥に、どちらの店の帳面にも載っていない山が一つある。朔は朝と昼と夕方の三回、葛西は朝と夕方の二回、そこへ通う。氷代は去年の四両二分から、今年は六両近くまで上がった。石蔵は手前と奥に分けられる。七間は縮まらないし、縮める必要もない。晩春から冬の山の池まで、氷旗を掛けてから仕舞って、また掛けるまでの一年。オメガバースBL・全10章完結。
