想乃は駆け出しの絵本作家。次作が決まらず悩んでいたある日、遠縁のおじさんから古い団地の一室を相続する。その団地には小さなカフェがあり、異界から来たお姫さま・ユリアが明るく働いていた。お魚のパンや、こけももジャムのクッキー、ミルクに浮かべたふわふわクリームパン。ユリアが作るお料理は、どこか不思議で、けれどあたたかく美味しい。月に一度、満月の夜。ユリアはドレスを着ておめかしし、大好きな国王陛下をお迎えする。自分たちの絵を描いてほしいと頼まれた想乃は、優しく恋しあう二人の姿を、スケッチブックに描き留めてゆく。あのとき団地で起こったこと、恋も友情も、涙も笑顔も、輝く奇跡も全部・・・・・・。現代のおとぎ話。「わたしは待つのが辛くなったとき、ごはんやお菓子を作ると気持ちが落ち着くの。あの人に作ってあげたい、この人に食べてほしい。そんなことを考えながらお鍋のスープをかきまぜたりパンを丸めたりしていると、だんだん楽しくなるのよ」
