常連の札が掛かる店

常連の札が掛かる店

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六年前、検問所で足止めした避難民の一家を増水で流し、止められなかった。——トールは衛兵をやめ、「二度と人を止めまい」と霧河の渡し場を継いで四年になる。擦り切れた舫い綱を、常連の機織りアネッサが工房の端糸をより合わせて継いでくれた朝。トールは暗いままだった桟橋の入口に、古い提灯をひとつ灯した。薪が湿れば猟師のガイが枝を分け、渡し板が反れば老船大工のドンが端材をくれる。足りないと分かるたび、常夜灯は二つ、三つと増えていった。検問所跡を通りかかった冬、トールは初めて、衛兵をやめた本当の理由をアネッサに打ち明ける。川止めの晩には足止め客を小屋に泊め、灯りはやがて桟橋の端から端まで五つ並んだ。初春、アネッサが名を彫った「通いの札」を差し出す。トールは五つの灯りを端から数えて、四年の渡し守の日々が、灯りの数だけ積み上がっていたことに気づく。本作は小春日和の「常連の札が掛かる店」シリーズ。一話完結・どこからでも。
一覧
  • 二度と人を止めまいと衛兵をやめた渡し守ですが、霧河の渡し場に常夜灯を灯し続けたら、常連が名を彫った通いの札を持ってきました

    8月21日発売予定

  • 病人を救えず薬師をやめた湯屋の主ですが、小春の湯に薬湯壺を仕込み続けたら、常連の猟師が名を刻んだ木札を柱に掛けました

    8月21日発売予定

  • 状を継ぎ遅れた悔いで飛脚をやめた継所の主ですが、峠下の軒に鈴を吊るし続けたら、常連の継飛脚が定飛脚となって自分の振鈴を掛けました

    8月21日発売予定

  • 相方を死なせた悔いで木こりをやめた山守ですが、楢の山の杣道に水呑場を湧かし続けたら、常連の木こりが山付きとなり自分の水場を開きました

    8月21日発売予定

  • 急ぎ打った鎌で人を死なせ刀鍛冶をやめた野鍛冶ですが、火床で貸し農具を打ち続けたら、常連の若い百姓が自ら鎚を握り農具を掛けました

    8月21日発売予定

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