秋の朝、蔵米二十俵を横領したとして、勘定方書役のトウマは中庭の白洲に引き出された。上役オガタが掲げたのは出納帳の「写し」——二百四十俵と記されたその四の字は、七年帳面を書いてきたトウマの筆ではなかった。声を荒らげても仕方がない。帳面は声を張らない。検見役カリンが原本を蔵から取り寄せ、蔵番のゴンザが俵数の食い違いを証言する。米問屋セキの控え、名主タゴサクの請取証文、書役ウネメの鍵の受け渡し記録——代官所の外に残されていた帳面が一冊ずつ持ち寄られ、九月十二日の数はどれも二百二十で揃っていく。やがて、上役オガタが自分の借金の穴埋めに三年前から蔵米を流用していたことが、六冊の帳面と五人の証言で裏づけられる。オガタは罪を認め、代官はトウマの無実を言い渡す。初春、トウマは控えの帳面に新しい年号を書き入れる。隣に机を並べたいというカリンの申し出を受けて、静かに筆を置いた。本作は綺羅星ツバサの「濡れ衣を晴らす帳面」シリーズ。一話完結・どこからでも。

