最強の実業家・久瀬冬吾の、たった一人の秘書。わたし藤宮詩織の一日は、あの人の手帳の一行目から始まる。いつのまにか引っ越し先は消え、親しくなった人は遠くへ飛ばされ、気づけばわたしの世界には、あの人とあの会社しか残っていなかった。──わたしがいなくなれば、この人はきっと自由になれる。ずっと、そう思っていた。けれど、わたしがほんの三日いなくなっただけで、無敵と呼ばれたこの男は、あっけなく壊れてしまった。あの人が八年前のいちばん寒い冬に、たった一度だけ、わたしに生かされていたこと。そしてそれを、わたしには一生、言わないつもりだということ。わたしは最後まで、知らなかった。本作は早乙女燐の「わたしを名指しで離さない」シリーズ。一話完結・どこからでも。

