追放鍛冶コウガ

追放鍛冶コウガ

作者:
出版社:
-
金床ひとつと槌が三本、鏨の木箱と鞴の革だけ。人ひとりの十二年ぶんの荷を積んだ荷車で、コウガは雨の峠を越えた。「これで十分だ」という痩せた規格を自分の名で通せと命じられ、断って王都の鍛冶座を追われた鍛冶である。流れ着いた鉱山の麓のコルド村では、坑道の天井を支える支柱が、育ちの早い軽い木で組まれていた。重みがかかれば鳴かずに潰れる柱ばかりが、雨ざらしに積まれている。コウガは木口に指を当てるだけでそれを見抜いた。支柱の検分を仕切る組頭ドンザは、粗悪さを認めない。「規格通りだ。これで十分だ」。コウガは自分の手で支柱を測り直し、規格に届いていないことを並べて見せる。「──これは、通ります。ただ、あんたの言う『十分』では、通らない」くず鉄を拾う少女トキを弟子にとり、村の農具と坑道の柱を一本ずつ打ち直していく。トキが初めて鏨で刻印を入れ、坑夫たちが自分からくず鉄を持ち寄りはじめる。そしてある朝、村の年寄りが自分の指で刃の返りを確かめ、「これは通る」と、自分の口で言った。道具の良し悪しを、他人の判ではなく自分の手で測れるようになった村の朝だった。晩夏。コウガはいつもと同じ火床の前で朝の火を起こす。炉のわきの台に並ぶ槌が、一本増えている。組頭は村を去り、ごまかしの規格の書付は、最後まで回収されなかった。鉱夫の口から、鉱山を差配する代官の名が、一度だけ出た。本作は「追放鍛冶コウガ」シリーズ第1巻(全6巻・完結)。
一覧
  • 王都の鍛冶座を追われた鍛冶ですが、鉱山の村で潰れかけの坑道の支柱を打ち直したら、組頭の「十分だ」を村の年寄りまで自分の指で覆しはじめた

    8月13日発売予定

  • 王都の鍛冶座を追われた鍛冶ですが、代官が緩めた支柱の規格を谷の三村で測り直したら、三つの村が同じ日に同じ柱を立てはじめた

    8月13日発売予定

  • 王都の鍛冶座を追われた鍛冶ですが、武具方が「領の定めで十分だ」と一括発注した兵の槍の折れ口を並べたら、城下の鍛冶が自分の指金で受注しはじめた

    8月13日発売予定

  • 王都の鍛冶座を追われた鍛冶ですが、兵站頭が「員数で十分だ」と迫る三領の武具を一本ずつ寸法で突き返したら、兵站の書役が員数より先に寸法の欄を書きはじめた

    8月13日発売予定

  • 王都の鍛冶座を追われた鍛冶ですが、座主が「刻印こそ十分だ」と締め出した刻印無しの鉄を市で打ち続けたら、町の鍛冶が刻印でなく自分の寸法で市を通しはじめた

    8月13日発売予定

通知管理

通知管理を見る

販売後に設定できるようになります

追放鍛冶コウガのレビュー

販売後に書けるようになります