庄屋の倅の死の濡れ衣を着せられ、「毒師」の一語を背に投げつけられて、リョウは榛尾の町を追われた。持って出られたのは、師から継いだ「薬」の一字だけを彫った判ひとつ。三日歩いて辿り着いたのが、川沿いのソガ宿場だった。この宿場では、肝煎トガシが薬礼を握っている。払える者には薬が渡り、払えぬ者には渡らない。井戸の水はかすかに臭い、産後の女は薬をもらえずに弱っていく。リョウは弟子のサヨ、渡し守のダイキ、元産婆のオトセとともに、匙のざっとではなく天秤で量り分ける薬師の仕事を始める。やがて分かる。肝煎が「毒」として蔵の裏の穴へ捨てさせてきた白い粉は、米粒ほどで子どもの膿んだ足を乾かす薬だった。桶ごと流せば井戸を濁らせ、ひとつまみなら薬になる。変わったのは粉ではない。量と、扱いだけだ。寄合の場で、リョウはその粉を量り分けてこう告げる。「──それは毒です。ちょうど、あなたの決めた量では」死んだ者の名で立てられていた薬礼の帳面の不正が暴かれ、帳面は寄合の預かりになる。そして宿場の女たちは、初めて自分の手で薬の量を量ることを覚える。本作は「量り薬師リョウ」シリーズ第1巻(全7巻・完結)。
