刑務所――そこは日常から遠く隔絶された世界。高く囲われた塀の内側では、罪を背負った者たちが再び太陽の光を浴びる日を夢見て、長い時を過ごしている。刑務所には、独特な空気が流れる。罪を犯したことへの後悔、他者への怒り、嫉み、妬み、恨み……そうした感情が渦巻いているためか、時折、塀の中では不思議なことが起きることがある。護送車に乗り合わせた”古い記憶”を語る乗客(「貸切」)。洗濯工場に現れた大量の黒い髪(「混入」)。たったひとつのウソが招いた驚愕の死(「熱源」)。二度の死亡宣告を受けたが生き返った男(「三度の死亡宣告」)。保護房の監視カメラに映った謎の黒い集合体(「監視室のピクセル」)。元受刑者のホームレスが公園を避ける哀しい理由(「隅に立つ男」)。本書は、元受刑者、刑務官らが重い口を開いて語った「塀の中の実話怪談」を集めたものだ。塀の中では、なにが起きても不思議ではない――。口外無用の30編の刑務所怪談を、どうぞごゆっくりお楽しみください。
