声の真偽や矛盾を聴き分ける耳と手を持つ法廷速記者の俺・楠瀬汀は、法廷の声を一字も落とさず書き留めることだけを信条に生きてきた。ある日、与党の大物代議士・財前豪蔵が汚職隠蔽のため無実の告発者に冤罪を着せる法廷で、俺は改竄される前の反訳データを握ってしまう。口を封じるため証人隠滅の標的にされた俺を守ったのは、不赦と恐れられる中央地検特捜部の検事・鷲津匡だった。十年前、新任検事だった鷲津が権力の圧力に無力を痛感し法を信じられなくなった夜、傍聴席にいた少年の俺は父の速記帳を握りしめ「先生の言葉、一字も落とさず書きました。先生は間違ってない」と告げていた——鷲津はあの日からずっと、俺を捜していたという。声は消えても記録は残る。巨悪を暴き、守られ、二度と離してもらえない。現代格差×重執着溺愛の守護BL、全10章完結。

