錆江町の路地裏で、祖父の代からの便利屋「よろず屋スズカケ」を継いだ匠。深夜専門の何でも屋——鍵開けも、水漏れも、壊れた機械も、なんでも直す。手先の器用さだけが取り柄の、平凡で堅気な毎日。ある晩、解体寸前の古い鉄工所へ、鍵開けの依頼で軽トラを走らせた。だが着いた現場は、何かがおかしかった。仕組まれた事故、消された物証。逃げ場を失った俺の腕を、闇から伸びた手が掴んだ。「動くな。俺の後ろにいろ」。硝煙と鉄の匂いの中、その男は俺を庇って立っていた。男の名は黒瀬玄。裏社会で「鴉」と恐れられる、始末を請け負う仕事人だった。命を拾われた俺の軽トラに、なぜか男は居着いて離れない。冷酷なはずのその男は、俺にだけ、不器用なほど甘い。「七年前、お前は俺を直した。今度は、俺がお前を守る番だ」。やがて依頼を仕組んだ黒幕の影が、俺の便利屋にまで手を伸ばす。堅気に戻れと言いながら逃がしてくれないこの男は——七年前から、俺だけを捜していたらしい。裏の仕事人×堅気の格差×重執着溺愛、現代都市ノワールBL長編。全10章完結。

