母を亡くし、奨学金とバイトで大学を出た住み込みの家庭教師・悠真。教えることだけが取り柄の、平凡で堅気な二十三歳。ある日、破格の報酬で舞い込んだのは、都心の高台に建つ財閥・氷室家の邸で、当主一族の子ども・奏の家庭教師になる仕事だった。面接に現れたのは、経済誌が「氷帝」と渾名する冷徹な次期総帥・氷室玲司。歴代の教師を寄せ付けなかった心を閉ざした九歳の甥を、俺はたった一目で見抜いて、その心をほどいた。「気に入った。今日から、住み込みで」。断る隙もなく、俺は大理石の邸に囲われる。冷酷なはずのその男は、俺にだけ、慇懃なほど甘い。「お前を、二度と見失わない」。やがて、幼い奏の相続と後見を狙う叔父の不正が、俺の周りにまで手を伸ばす。金でも権力でもなく、俺の記憶と洞察だけが、偽りの証を暴く鍵になる。囲うと言いながら、俺の芯だけは金で買おうとしないこの男は——七年前の、あの雨の夜から、俺だけを見ていたらしい。財閥御曹司×堅気の家庭教師の格差×重執着溺愛、現代企業BL長編。シリーズ第1巻・全10章完結。
