花街の名残が残る下町「霞見町」で、祖母から継いだ小さな花屋「莟屋」を一人で切り盛りする悠。水と緑と、花の色だけが友達みたいな、平凡で堅気な毎日。ある夜霧の濃い晩、閉店間際、店の裏の水場に、脇腹を撃たれた血まみれの男が転がり込んできた。堅気の常識なら通報一択だ。でも——花街で怪我人を黙って手当てしてきた祖母に仕込まれた俺の手は、勝手に晒しと氷を掴んでいた。「うちの花をもらった客は、堅気だろうと裏だろうと、死なせない」。男の名は鵺塚玲。裏社会で「白蛇」と恐れられる、老舗博徒・常磐一家の若頭だった。回復した男は、なぜか堅気の俺の作業場に居着いて離れない。冷たいはずのその男は、俺にだけ、不器用なほど甘い。「十年前、お前は俺に一輪をくれた。今度は、俺がお前を守る番だ」。やがて一家の内通と抗争が、花街の俺の店にまで手を伸ばす。堅気に戻れと言いながら逃がしてくれないこの男は——十年前から、俺だけを見ていたらしい。ヤクザ×堅気の格差×重執着溺愛、現代任侠BL長編。全10章完結。
